■15:アリシアとマックス
「私は一体何をしていたのでしょう…」ダブダブなマックスの服を被って悲しそうなアリシア。その隣で心配そうにみつめるマックス。
僕たちはギルドに冒険者登録を済ませた後、マックスの計らいで、事務所の奥、マックスの執務室に案内されて、テーブルを挟んでマックスとアリシアに向かい合って座っていた。
ヨーコさんは黙って空間に向かって手を動かしている。僕が改めてアリシアさんの衣装デザインを依頼したからだ。
「改めて話を聞こうじゃないか…お前達が新人の冒険者である事は分かったが、アリシアの呪いが解けたのは初めてなんだ…何を知っている?」マックスが最初に口を開いて至極真っ当なことを聞いてくる。
「僕たちは一応勇者って事になっている。本来の目的は魔王を倒して世界を救う…はずだけど、正確には正しい世界に戻す旅をしているって事になる」
マックスと言うキャラも僕たちにとっては他人では無いくらいに思い入れがある。だが、それ故にどこまで話して良いのか難しいと考える。
「ってことは、お前たちは女神様の信託を得たって事か?」「そう思って貰って構わない」
返答の仕方が難しいと思いながら話すとマックスは距離を詰めて来る。
「まどろっこしい話は無しにしようか…その話が本当ならこの街に勇者が現れたのは二度目だ。そして一度目の勇者は最悪の存在だった。アリシアをあんな風に変えたのも奴だったしな…ところがあんた達は、逆に彼女を解放してくれた。つまり、前回が偽物で今回は本物って事で良いのか?」
「その最初の勇者は『レイド』と名乗り、三年前に現れた」
「そうだ。よく知っているな…その後はここも色々変わっちまった…毎日地獄だったぜ」
マックスはチラリと横に居るアリシアを見る。
そこには慈しみと悲しみと少しの怒りを感じる。
「出来た!」ヨーコさんがデータを上げてくれた。僕は問題無いと確認し、ケンタが「了解した、実行」と言うと、アリシアの服が本来の彼女の衣装に変わる。
驚くアリシアとマックス。「この能力は?!…それにこの衣装…懐かしいわ」服を隅々迄確認して嬉しそうにするアリシアに思わず僕たちも笑みが溢れる。
「初期の衣装に戻したわ…少し忘れちゃってたからアレンジしているけど」ヨーコさんも照れながら笑う。
「驚いたぜ!ここ数年見ていないアリシアの普段の制服だ…あんた達ココに来るのは初めて…だよな?」
「そうなんだけど、君たちの事はよく知っているよ。よく知っているけど初めましてなんだ。よろしく頼むね」
「ああ、何だかよく分からないが、納得した」
マックスと僕たちは固い握手をした。
「何から話そうか…」ここからはクエストモードに移行するのが筋だが、レイドの事は少しでも新しい情報が欲しい。
「先ずはレイドの事が聞きたい」
「うむ。最悪災厄か…アリシア、仕事に戻った方が良いかな?」「いいえ、私もココで話に参加させてください!」
マックスが何を話したいのかと、アリシアの健気な勇気に感動する。
しかしながらその後聞かされた話は、そんな二人だからこそ僕たちを奴の通名『最悪災厄』と言わしめるに充分な内容だった。