■14:冒険者ギルドの受付嬢
冒険者ギルドは中央広場を対象に西に進むとある。
ゲーム進行上、こうしたクエスト拠点を設定する事で、ユーザーが「次どこに行けばいいのか?」と悩まない様に設定するのだけど、いざ自分でその足を使って進行させなければならない事態になると、その設計は間違って無かったと思う。
このシステムを考案した人は天才だなぁと思いつつ、ギルドの門戸を潜る。
「冒険者ギルドへようこそ」受付嬢がカウンターに居て挨拶してくれる。栗色の少し癖っ毛な髪、そばかすがチャームポイントの屈託の無い笑顔。
しかし宿屋である程度耐性出来ていたが、限界突破のエロバニースーツコスプレだ。…聞くまでも無いが「その格好ってハロウィンとかイベント仕様じゃ無いですよね?」と、一応確認する。
「え?いえ…コレが標準のユニフォームですよ?」溢れそうな乳を一生懸命に直しながら話してくれる彼女には同情しか無い。
「クエストを受けますか?それともサービス受けますか?」
「えっと…サービスって何ですか?」嫌な予感しかしないが一応聞く。
「行きがけ一発ならサービスでお口か手か胸で…」「もう説明結構です、アリシアさん」
「ステータス」ウインドウを開くと、ノードから余計な選択肢を削除して、必要に応じて彼女が自己判断して対応すると言う命令を追加する。
「ケンタ、良いよな?」「勿論だよ。実行!」
「ヤダもう!しょ、少々お待ち下さい!」受付嬢のアリシアさんは奥に引っ込んでしまった。どうやら正常な判断が出来て恥ずかしくなった様だ。
「ちょ、ちょっと!私のこと無視したでしょ!」ヨーコさんが少し怒りながら「衣装も変えてあげないと、可哀想じゃ無い!」
「ごめん、ヨーコさん…アリシアさんには僕たち思い入れが強いから…」「一刻も早く解放してあげたかったんだ」僕とケンタが言うと「知ってる…でも、尚更私を除け者にしないでよ」「ごめん」
受付嬢のアリシアというキャラは、少し思い入れがあるのだ。
と言うのも、元々インディーズゲームで「受付嬢をメインしたファンタジーシミュレーションを作ろう」と別タイトルで制作した事がある。
ゲームは「受付嬢視点で冒険者ギルドに来る冒険者に対して、実力や経験を判断してクエストを割り振ってギルドを運営する…」と言うリソースを余り掛けずにキャラの挿絵は立ち絵だけでほぼ成立するタイトルをリリースして、それがぼちぼち成功していたのだ。
と言う訳で、その主役として抜擢…と言うかヨーコさんにデザインして貰ったのがアリシアというキャラであり、その思い入れは一言では語れない。
「お前たち、アリシアに何をしたんだ?」ごついガタイのの大男がカウンターの奥から顔を出す。色黒で身体中に怪我の痕が残るその逞しい体、パイナップルヘアが特徴のその男は「俺はギルドマスターのマックスだ」と名乗った。
勿論良く知っている。ココのシステムは全部インディーズの時から作ったモノをそのまま流用しているからだ。
女性キャラでないマックスはチート改変の影響も受けずそのまま残っていた様だ。
「初めまして、サトルと言います。冒険者として登録したい。手続きをお願いしたいのですが」
僕は少し嬉しくなって少し涙ぐんでいたかも知れない。
「新しい冒険者か…珍しいな。しかも三人同時とはな…嬉しいぜ。仕事は沢山あるぜ。手続きはアリシアに任せているんだ…少し待ってな」
僕が少し上擦った声だったのも気にせず受け合ってくれて、マックスっぽいなとまた感銘を受けた。