二話
初めて、口に出したのは何時だっただろう。
忌み子の私とは違うレイが『寂しい』と呟いた時、寂しさの辛さを知らない私は、不思議そうに首を傾げていたという。
誰かが言った言葉。死にたくなかった、殺されたくなかった、愛されたかった。その言葉の意味は理解出来ても、どういったものなのか私には分からない。
殺されてしまったけど、父母の愛は知らないけれど、憎むべき家はあるけれど、、、でも、何時だって私の傍にはハルとレイがいた。
育ててくれた。
私は、首も座らぬ頃に彼岸に送られたらしい。
どうして忌み子と呼ばれたのか分からないけれど、、、でも、二人は忌み子な私に名前を付けてくれた。
「おい、ナノ!聞いてるのか!?」
「、、、へ?」
目の前にはハルがいる。あーもう!と言いながら頭を搔く。
「だーかーら!どうすんのか?」
「、、、何を?」
ハルの動きが止まった。これはヤバイ。
「人の話は聞けって教わらなかったのか!?」
雷が落ちた。
そんなハルをレイはまぁまぁと落ち着かせる。ナイス、レイ。
「此岸、、、つまり僕達が生きていた世界に行こうと思うんだよ」
朝餉の途中、ちょっとそこの醤油を取ってと言わんばかりの軽さで、爆弾発言された。
勿論、驚いてお味噌汁の器が手から滑り落ちて、それが盛大に袴濡らしていることにも気付かない程、私は頭が真っ白になった。冷めていて良かったと安堵したのは後ほど。
「な、何で?」
「ナノハに知らない世界を見てほしいし、僕が教えられるのには限度があるからね」
手が震える。
「レイ、やっぱりやめといた方が、、、」
「勿論、嫌なら無理にとは言わない。けど、少しでも迷ったなら行ってみた方が良いんじゃないかな」
私は、、、でも、またあの時みたいに、、、。でも、知らない土地の知らない空を見てみたい。
「、、、行く」
「無理しなくても良いんだぞ」慌ててハルが止めようとする。心配してくれているのだろう。
「行きたい!」
そう宣言すると、レイは安心したように笑った。
「良かった」