4話
翌日の放課後、私は早速おぼっちゃまの通う高校へと足を運んだ。
新年になったばかりだけど、夕方は日が傾くのがまだ早く、夕方4時頃だと言うのに、日はもう傾き始めていた。
制服の上に紺色のコートを重ね着して首元には焦げ茶色のマフラー。
母親、かずちゃんの手編みだ。
そして両手には黒い手袋。
これは父親、勝君から貰ったものだ。
上半身は完全防寒。
下半身はスカートで太ももまで伸びたストッキングを履いているが氷点下に片足を突っ込む程度だけど、それなりに冷えるため、寒風がまとわりついて自然とガタガタと震えてしまう。
校門の脇に隠れるようにターゲットを待つ。
下校をするこの学校の生徒たちが私の姿を認めると、物珍しそうに視線を向ける。
早く来ないかしら。
待つこと10分ほどでやつが来た。
「あ、この間の!」
彼は私を見つけると、嬉しそうにパーッと顔を明るくさせた。
「ちょっとお願いがあるの」
「はい!なんでもしますよ!」
誤解を招く言い方はやめなさい。
ひとまず、いつもの公園へ。
「私にお金をくれるんじゃなくて、寄付してくれることってできる?」
「それは全然構いませんが、なぜですか?」
「難病にかかってる子の治療費が必要だからよ」
「それはこの間の不良たちのためですか?」
「知ってたの!?」
「あなたたちが助けに来る前に、妹のためだってお金をせびって来ていたので」
「だったら話は早いわ。お願い」
パンッと両手を顔の前であわせる。
「嫌です」
空気が凍った。
彼の顔を見ると、虫を潰して命を奪ったかのような冷たい表情だった。
「なんでよ?」
「あなたたちのためなら喜んで寄付します。でも奴らは僕から無理やりお金を巻き上げようとしたんですよ。そんなヤツらのための力にはなれません」
冷たく言い放つ。
「あいつらのやり方は確かに間違ってたけど、それは全部家族のためで……」
「家族のためなら何をしてもいいんですか?」
「それは……」
言葉に詰まる。
返す言葉が見つからない。
「恩は恩で返せ、仇は仇で返せ。祖父からの教えです」
では。
そう言い、踵を返して去っていってしまう。
その背中を追いかけたい。
でも今の私にはそれが出来なかった。