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シュテン童神  作者: 追川矢拓
第一章
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霊峰歌撃団

連日投稿3日目の投稿一回目です。


 俺がアニメ講談を紙芝居でやってから二年が経った。

 ずっと遊んでいた記憶しかないが、それは俺達の毎日が”楽しい”で満たされていたからだろう。まさしく、こんな日々を永遠にすることが俺の夢なのだ。


「オヤビ~ン!こんなでっかい魚が獲れたッス」

「おおう!悪いのうガーくん。自分は食べられないのに…」

「オヤビンの為なら何のそのッス。それに皆が美味しそうに食べるのを見るのは大好きっスよ」


 良い子になったなあ。二年前はあんなに人見知りだったのに。

 外見も肩や腕、胴体に鎧を付けるようになったので、一見すると遠目には横幅の異様に広いドワーフのように見える。あとは理想のヘルメットさえ見つかれば計画を進められる。


 また川に飛び込もうとするガーくんを見送りしようとした時、二年経っても変わらないロリっ娘ミュルンが駆け込んできた。


「ボスぅ、ハイオーク達がこっち来たよっ!」

「よっしゃあ!作戦実行だ。あ、ミュー(ミュルン)がいると逃げちゃうから隠れといて」

「らじゃーだよ!」

「ほんじゃ、ガーくん(ガーグ)。君の実力を見せてもらおうかな」

「了解ッス!ルシュ兄(ルシュルゥ)がいない時でも、オヤビンを護れる力があることをちゃんと証明してやるッス」


 鉄の盾とメイスを拾い上げて、ガーくんが戦闘に向かう。

 今まで訓練はしてたけど、これがガーくんの初実戦なだけに少し心配だ。戦闘イメージの方は俺の教育の賜物で充分だと思うけど…。


「ルゥ兄ぃはいつでも演奏できるようにしておいて。危なくなったら俺も援護するから」

「うん、シュテンのどんな要望にも応えるよ♡」

 

 やっぱり、ルゥ兄ぃが一番頼もしいね。

 手に持つ楽器も、アニソンの速いテンポに合わせるためにハープもギター型に変形している。ほとんど独自の創意工夫でそこまで至ったのだから、俺のお兄ちゃんはセンスも天才的だ。

 

「ガアアアッ!!」

「うっ…ッス!」


 とうとう先行していた斧ハイオークとの戦闘が始まった。


 敵の戦斧を盾で受けメイスで返すが、あっさり弾き返されてたたらを踏む。

 追撃の振り下ろしを頭上に受けて踏ん張るガーグ。


 やっぱり苦戦しちゃうか。が、それは仕方ない。

 ガーくん(ガーグ)は他の種族でいうところのメイジ系にあたる亜種に近いんだと思う。ただ、魔法を操るにしても何百年と生きた後の話で、今の彼は頭が良く多少頑丈なだけで普通のゴーレムよりも小さくて力も弱い。その代わり、反応速度は鍛えれば伸びる余地があった。

 おそらく、戦闘能力はDといったところだろう。戦闘力Cのハイオークには耐久力だけで食らいつくのみだ。


 後からやってきた二体のハイオークが加わると、ほぼ袋叩き状態になった。

 頭だけは確実に守るように言ってあるが、他の箇所に敵の攻撃をまともに喰らっている。鎧で補強しているとはいえ、魔岩で組成されたゴーレムの身体にも限界はある。


 俺はすぐにルゥ兄ぃに助けを頼みたくなる自分を抑え、歌唱スキルに全身全霊を懸ける決意をした。


『♪ オオオォーオオ、オオオーオオ…ダッダダダダッダーッ! ♪

 ♪ オオオォーオオ、オオオーオオ…ダッダダダダッダーッ……お前とぉ~ ♪』


 この曲はガーくんリクエストのアニメ『武装錬金』のオープニング曲”真っ赤な誓い”だ。アニメの内容も滾るが、とにかく速効で熱血を煽るのに最も適しているアニソンである。

 二年間、鍛えに鍛えた俺のアニソンは戦闘にも充分なバフ効果を発揮するようになった。

 それは血潮の流れぬゴーレムにも、魔力が滾るという特殊な増幅効果を齎す。


『♪ 立ち止まる 暇なんかないさ ♪

 ♪ 考える 余裕なんかないさ ♪』


「うおおッス!滾ってきたあああーッス!!」


 パワー全開ガーグが、三体の攻撃を鉄盾で振り払った。

 一体だけ体勢を崩したハイオークの肩に、ガーグが投げたメイスがぶち当たる。


「うがっ!?」

「追撃ロケットパーンチ!」

「ごはぁ!?」


 大きな拳を自切して飛んだソレは、見事弱ったハイオークの顔面にぶち込まれた。


『♪ ありったけの想いを胸に 灼熱の戦いの中へ ♪』


 怒った二体の動きを予測していたように、盾を掲げて頭上の攻撃を受け切る。


「ぐおぅ!」

「があぁ!」


 怒るハイオークには見えていないだろう。

 盾の裏で自切したはずの拳が、孤を描いて横から襲い掛かってくるのを。


ガゴン!


「んぎゃあ!?」


 側頭部にいいのを貰った剣ハイオークが崩れ落ちる。


『♪ あまりにも大きな力の壁 世界の闇 ♪

 ♪ 絶対負けるもんか 限界超えて~♪ 』


 残った槍ハイオークが、間合いの分からぬ武器に眼を凝らすのも仕方ない。そのカラクリは自切した拳に、伸縮性の蔦(ルゥ兄ぃ作製)を根付かせたモーニングフィストである。


 だが…それだけの隙があれば、ガーグが懐に飛び込むのは充分だった。


「シールドチャージッス!」

「んぐおう!」


 踏ん張って受けて立つ槍ハイオーク。


 しかし、子供並みの重心の低さと体重&ゴーレムのパワーは、シールドチャージとあまりにも相性が良かった。


 鉄盾で相手を掬い上げるように吹っ飛ばし、追い縋るようにモーニングフィストを振り下ろす。


ドゴンッ!


「げはあッ!?!」


 地面とのサンドイッチで血反吐を吐いた槍ハイオークは、がっくんと全身を弛緩させて気絶した。


『♪ どんな敵でも味方でもかまわない ♪

 ♪ この手をはなすもんか 真っ赤な誓い ♪』


 格上相手に奇跡の逆転勝ちをおさめたガーグだが、まだ残身を解かない。

 いや、分かってるさ。俺のアニメモドキ講談に熱中してるウチの子たちは、当然のようにあの病に罹ってしまっている。曲が終わるまで、背中で語らせてやるのが人情ってもんだ。


『♪ いつまでも いつまでも 追い続けるんだ~ ♪

 ♪ どこまでも どこまでも 明日への勇気を~ ♪

 ♪ どこまでも どこまでも 燃えたぎるハートをお前と~~ ♪』


 最後まで歌い切り、熱血の余韻にしばし浸る。

 ふ~…予想以上に熱くなってしまったな。いつ歌っても速効性と中毒性のある歌だぜい。


 ちなみに俺の歌によって魔力が滾るのは判明しているが、その効果は実に様々でよく解っていない。その時々によって俺の昂揚感やノリや選曲なんかでも効果が変わるし、受ける方の気分や曲への思い入れなんかでも全く変わってくる。魔力が増幅したり攻撃力や防御力が上がったりするのは単なる副次効果であり、やっぱり共通する一番の効果は戦意の昂揚とかガンギマっちゃう感じの煽り系である。

 基本的に”テンマ”は主に煽り系の歌ばっかり歌っていたし…。


「きゃーっ!ガーたん、カッコ良かったよーっ!!」


 我慢できず飛び出してきたミュルンに続き、俺たち支援組も奇跡の逆転勝利を褒め称えようと駆け寄り始めて…

 振り返ったガーくんが首を傾げた。


「えっ、オヤビン第二パートは?」

「二番も歌わせる気だったんかいっ!!」


 あの病に罹ると、油断すると自己中になりがちなのが欠点だ。


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