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シュテン童神  作者: 追川矢拓
第五章
56/61

マッスルジャイアント VS 牛オッサン

(シュテン視点)



 獣皇武闘会、本戦当日。


「え~、昨日の予選バトルロイヤルではのっけから想定外の事態があり、その後の予選が地味に進行してしまいましたが、本戦では気を取り直して盛り上げていきたいと思います!」


 コロシアムの大舞台に立った猫耳お姉さんが、元気に司会進行をしていく。

 あのマイク型魔道具はいいな。優勝したらおねだりしてもいいかな?今なら、俺の柔らかスベスベぽんぽんも触らせてやるぞ。


「それではこれより獣皇武闘会本戦第一試合を始めましょう。まず、最初に紹介しますは、予選初っ端にて全ての話題を掻っ攫った快男児、シュテンくんで~す!」


 紹介に合わせて俺が大舞台に上がると、コロシアムが歓声に包まれた。


「ひっこめ、詐欺小僧ーっ!」

「またブリンブリン歌ってくれーっ!」

「太々しいぞ!オシオキされろーっ!」

「あの生意気そうなとこが可愛いのよ!!」


 ふむ…ブーイングと応援が半々ってところか。

 まあ、予選の試合内容じゃ不満が出るのも仕方ない。しかし、俺はバトルロイヤルにおける最善手を選んだだけなのだ。文句ならバトルロイヤルなんて雑な方式にした運営に言ってくれよな。


「言うまでもなく彼は大会史上最年少五歳の出場ですが、獣皇様と皇女様の推薦状によってテイマーであることが保証されております。ハンターギルド経由でエゲツない噂も飛び交っていますが、くれぐれも対戦者は拳骨程度で治めてくれることを願っております」


 気に入ったぞ、猫耳姉ちゃん。後で膝の上に乗ってやる事も吝かではないぜ。


 しかし、観客は猫耳姉ちゃんの優しさよりも、テイマーというところが引っ掛かったようだった。


「テイマー?確かに珍しいが…従魔なんていないぞ」

「昨日はスライムが肩に乗ってたな」

「そもそもテイマーの取得条件からして、自分より強い従魔は得られないんじゃ?」


 好き勝手に言ってるが、疑問に答えてやるのはもうちょっと後にする。


 俺が腕を組んで観客を無視しているのを見て、司会の姉ちゃんは紹介を続ける。


「それに対するは…もう皆さん御存じだと思います。そう、今大会で十回目の出場であるシュトルム=ドーザーさんです!いつも運が悪くて、毎回初戦で優勝候補と当たって事実上の決勝戦を繰り広げていたんですが…今回は勝ち方が難しいというか別の意味で運が悪そうです」


 猫耳姉ちゃんの司会トークに笑う歓声とともに大舞台に上がってきたのは、ずんぐりした鉄の塊みたいなオッサンだった。ざっとガーくんを三倍にしたような体格と装備だ。

 頭の角は兜の一部だと思ったが、よく見るとどうやら牛獣人のようだった。


「ふんっ!まさか、こんな坊主と戦うはめになるとはな。おい、さっさと降参しろ!でないと尻が腫れるまでひっ叩いてやるぞ」

「むかかっちーん!失敬な、俺はルゥ兄ぃにお尻を叩かれた事ないのが自慢なんだぞ!生まれてからずっと良い子で生きてきたからなっ!」

「「………」」


 おいオッサン、なんでスンと無表情になってんだよ。猫耳姉ちゃんまでっ!

 言いたい事があるならちゃんと言えよっ!


 睨む俺から目を逸らした姉ちゃんが、さっさと開始の合図をした。


「それでは本戦第一試合・始めっ!!」

「うおおおーっ!」


 俺をビビらせるつもりなのか、牛のオッサンが大声をあげて突進して来た。

 ふふん、こういうのを”飛んで火に入る夏の虫”っていうんだっけ?


 俺は両手を拡げて、目一杯格好つけて叫んだ。


「いでよ、我が僕っ!勇者王ガーグ召喚ッ!!」

「おおぉーッス!!」


 突然、大理石の舞台から腕が飛び出し、牛オッサンの足を掴んでコケさせた。


「ぐおわッ!?」


 石を砕いて現れたのは云わずと知れたガーくんだ。この演出のためだけに、土魔法で早朝から石舞台に隠れてくれていたのだ。

 ただ、その姿はちょっと変化している。ちょっと黒い塗装で判り難いが、その身に纏うはあの宝物庫でゲットしたミスリル製の勇者鎧である。皇都に着いてすぐガオルンのおっちゃんの伝手で加工をお願いしていたが、何とか武闘会に間に合ったのだ。


 新生ガーくんは背格好こそ変わらないが、ミスリルの魔力増幅効果でパワーと強度は段違いに膨れ上がっているのだ。さすがメイジ系ゴーレムである。


 ガーくんは牛おっさんの右足を掴んだまま抱え込み、そのままエビ反りに固めて締め上げた。


「うらあ!エビ反り固めっスよっ!!」

「あがああぁっ!?」


 背骨にかかる激痛に牛おっさんが悲鳴をあげる。


「おいおい、石の舞台から第三者が出て来たぞ!?」

「召喚って言ってたが、あれもテイマーの能力か?」

「んなわけねえだろっ!初めから埋まって隠れてたんだ!そもそもアレが従魔だって証拠もねえよ」

「ギクッ!?」

「おい…今、鬼畜童児がギクッ!?て言ったぞ」

「う、うるせーっ!ガーくんは俺の舎弟だからテイムしてるのと同じなんだよっ!!」

「おーい、司会!素直に不正を暴露しやがったぞーっ!」

「あ、しまった!?」


 猫耳お姉さんは、頭の猫耳を両手で塞いでくれていた。

 ふうっ…危なかったぜ。ガオルンのおっちゃんの推薦状には、裏面に多少の融通を利かすように追加してもらったのだ。やっぱ持つべきは、忠実な部下とコネだよね。


 観客によって俺が窮地に陥っていた間も、戦闘は続いていた。

 片足でエビ反り固めを喰らっていた牛オッサンだが、パワーアップしたガーくんに拮抗して耐え続けていた。いや、両腕で身体を持ち上げ、右足の力だけで徐々に体勢を戻して…


「ぐるおああああっ!!」

「ふぎゃッ!?!」


 圧倒的なパワーに負けて、ガーくんは顔面から地面に叩きつけられた。


「ガーくんっ!大丈夫か!?」

「だ、大丈夫っスよ…」


 鎧の中は魔岩の身体で痛みは無いだろうが、損傷による魔力バランスの崩れでフラフラしていた。


 牛オッサンは右足を引き摺りながら立ち上がり、憤怒の表情でガーくんを睨んでいた。


「………やってくれおったな。俺をここまで怒らせるとは…その命で贖わせてやるわっ!!」


 高密度の魔力が頭に集中し、兜から突き出した角がバチバチと電撃と暴風を纏った。

 

「おおっとぉ!ドーザー選手の必殺技ストーム・ホーンだ!シュテン君は危ないので、直ちに進路上から退避して下さいね!」


「おい、司会の姉ちゃん!依怙贔屓すんなぁ!」


 俺は言われた通り、慌ててガーくんの後ろから横に退避する。


「ぐはははっ!喰らえいっ、ストーム・ホーンッ!!」


ドガァアアアン!!


「うぎゃんッ!?」


 稲妻と嵐を纏った突進攻撃に、ガーくんの身体は大舞台を撥ね削りながら舞台下まで吹っ飛ばされた。

 …が、嵐を鎮めた牛オッサンが、少し腑に落ちない顔をしていた。


「……俺の角で貫けないとは、やけに頑丈な鎧だな。だが、肉体の方は粉砕骨折で使い物にならないはずだ。坊主…お尻ペンペンの覚悟は出来たか?」

「で、出来るわけないだろ!第一、ガーくんはまだ負けてないぞ!」

「ハッ、何を馬鹿な…」


 牛オッサンが嘲笑しようとニヤリを口角を上げた時…


「そうっスよ。オ、オイラはまだ……負けてないッス!!」

「な、なんだとッ!?」


 牛オッサンが振り返ると、そこには舞台に顎と腕を引っ掛けて立っているガーくんの姿があった。


「これでもオイラは未来の勇者王ッスよ。この程度で死ぬわけにはいかないッスから」

「おのれぇ…」


 獣皇武闘会の本戦では場外負けは無くなり、場外テンカウント制になっているのだ。


 ガタガタの身体でやっと大舞台に這い上がったガーくんに、またも牛オッサンの角がバチバチ唸り始める。


プぺピーッ!


「ちょ~っと待ったぁ!タイム、タイムだぜい!」

「…は!?な、なんだってんだ?」


 突然、割って入った俺に、牛オッサンが拍子抜けてズッこけた。


「牛のオッサン。このままじゃ勝てないから、ちょっとパワーアップする時間をくれ!」

「はぁ?なんで俺がそんな融通をしなきゃならないん…」

「ぁ…怖いんだ?」

「んなわけあるかぁ!よぉし、ならばさっさとパワーアップとやらをしてみるがいい!」


 くくく…計算通り。俺が幼児だからって油断したな。

 後でこの判断をたっぷり後悔させてやろう。



 俺はガーくんに肩車してもらい、合身準備を整える。


「行くぞ、ガーくん!!」

「勇気凛々っスよ!!」


 ガーくんがゴーレムの特性(魔力リンク)を活性化させる。

 そして、俺もガーくんに与えられた微弱な”加護(・・)”をもって共鳴する。

 二人の心が一つになった時、小さな奇跡が生まれる。


「「魔力リンク!!」」


 俺とガーくん双方向の魔力リンクが成立した時、他者と混じらないはずの魔力は共有され俺達の魔力量は実質二倍になった。

 そして、それは俺の能力がガーくんにも共有される事でもあった。


「生命魔法・発動っ!」


 魔岩の身体に寄生するマンイーターが俺の生命魔法を吸って、蔦と根で構成された筋肉(プラントマッスル)がぎゅんぎゅんバンプアップしていく。

 ガーくんの首筋から伸びた蔓が俺を持ち上げ、マンイーターの頭(消化嚢部分)がおまる形のコクピットへと変形し、白い花びらがフルカウルのように周りを覆う。

 巨大化ガーくんの後頭部上方に俺のコックピットが固定された。


『二つの心が一つの勇気にっ!人魔合身、マッスルジャイアント!!』


 合成魔力の発声はちょっと低めで、決めのポージングは当然”モストマスキュラー”だ。上半身を強調するポージングで、緑色の大胸筋をビクンビクンさせる。


 牛のオッサンは唖然と大口を空けており、司会の姉ちゃんは俺達の筋肉美に見惚れていた。

 観客の反応は…


「なんだありゃーっ!?幼児と鎧野郎が合体して巨人になっただとッ!?」

「よく判らんけど、すっげーっ!!」

「ズルいですのーっ!合体できるなんて羨ましいですのぉーっ!!」

「テイマーってあんな事も出来るのか!?」

「だからテイマーにそんな能力ねえよ!あれは変人幼児のユニークスキルに違いないぜ」


 誰が変人幼児だっ!

 なんか聞き覚えのある声も聞こえたが、疑問に答えないと延々と文句を言われそうだな。


『ユニークスキルなんて安易なもんじゃないぞ。元々ガーくんはゴーレムの亜種であり、魔力リンクで俺と心を一つにする事で人魔合身を可能としたんだ。云うなれば友情が生んだ奇跡のトランスフォームなんだぜい!』

「「「「「…!?!?」」」」」


 大部分の観客は首を傾げていたが、脳筋連中は友情の一言で納得したようだ。

 目の前のオッサンもその一人だった。


「がっはっは!やはりお主は普通の子供ではなかったな。Aランク傭兵シュトルム=ドーザー、これより貴様を対等の戦士として本気で相手をさせて頂こう!」


 そう言ったオッサンは両手を掲げた状態で、こちらに差し出してきた。

 その意図に気付いたのはガーくんだ。


『……力比べっスか?上等っス!オイラも自分の限界が知りたかったッスよ』


 こちらも両手を掲げ、オッサンとガシリと指を組み合わせる。


「ふんっ!」

『うおおっ!』


ミシミシィッ!ビキッ!ビシィッ!


 牛オッサンとマッスルジャイアント…超常ファイター同士の力比べで石の舞台にヒビが入った。


 やっぱこのオッサン只者じゃないわ。身長三メートルのマッスルジャイアントに匹敵する体格とこのパワー…牛獣人はミノタウロスを祖にすると云われるが、オッサンは先祖返りの類かもしれんな。


「ふぐおおおおーっ!!」

『うりゃあああーっ!!』


 お互いの足が石舞台にめり込み、ヒビ割れが更に拡がる。


 だが、全力全開・本気の勝負だからこそ判ってしまった。

 自慢のパワーで互角なら、格闘戦へと移った時点で俺達の負けが確定する。


「……ごめん、ガーくん」

「えっ!?」


 俺はコックピットを覆うマンイーターの花を開いた。

 その中にはパチンコを構えた俺の姿が…


「喰らえっ!先手必勝っ・胡椒爆弾ッ!」


ボンッ!


「ぐわっ!?…えくしっ!?はくしゅ!?えぶしっ!?ぐしゃん!?」


 たちまち止まらなくなるクシャミに、超常ファイター同士のがっぷり四つは解除された。


「オ…オヤビーン!?!」

「スマン、ガーくん。俺の辞書に正々堂々という言葉は無いのだ」


 ガーくんの非難の声に、俺は非情な答えを返すしかなかった。

 これも非力な幼児が生き残るための生存戦略なのだよ。


 そして、すかさず俺はガーくんから主導権を奪い取り、牛オッサンの足を掬い上げる。

 そのまま得意技ジャイアントスイングへと移行していく。


「ガーくん、文句なら後で聞いてやる!だが、今はこの唯一の勝機をモノにする方が先だ。アレをやるから協力してくれッ!」

「………ええい、分かったッスよ!」


 技を掛けたまま、渋々ガーくんが土魔法を発動する。

 肘関節のプラントマッスル(蔦)が徐々に伸びていき、増大した遠心力に比例するように割れた石材がマッスルジャイアントに付着していく。


『うおおおっ、オリジナル合身スキル!インフィニティ・スイングーッ!!』

「ぐうおああああああああああああっ!?!」


 肘から先の長さは五メートル以上に達し、その強烈な遠心力を俺のコックピット周りを覆った石材がカウンターウェイトになってバランスを保つ。

 オッサンよ。遠心力で頭に血が昇ると、案外何もできないだろ?


『そうら、ぶっ飛べええぇーっ!!』


 ハンマー投げのように放り投げたオッサンは大舞台を遥かに越え、観客席下の壁に激突した。

 チッ…もうちょっと高くすれば…。


「な、なあ…今、アイツ邪悪な顔で舌打ちしたような…」

「まさか、さっきツッコミ入れてた俺達を狙ってッ!?」


 勘の良い観客が何人か蒼褪めたが、大人なんだからビクビクしてんじゃねえよ。まあ、その推理は正解なんだけど…。


 牛オッサンは目が回ったのか衝撃で気絶したのか、起き上がってくる様子はなかった。


 司会の猫耳お姉ちゃんは律儀にオッサンのテンカウントを数えてから、俺の勝利を宣言する。


「カウントテンにより、シュトルム=ドーザー選手の場外負けとなります。獣皇武闘会本戦第一試合は幼いテイマー、シュテンくんの勝利となりましたーっ!」


ブウウウゥゥゥ~~ッ!ブウウゥゥゥゥ~~ッ!!


 これまでの歓声より息の合う大きなブーイングだった。


「俺は初めの奇襲と、力比べからの騙し打ちを忘れてねえぞっ!」

「そもそもソイツが従魔じゃないなら、二対一になるだろうがっ!!」

「反則負けにしろっ!」

「”鬼畜童児”のエピソードは全て正しかったのねっ!」


「ぐぬぬぬ…アイツ等、ここぞとばかりに俺の悪口を…幼児に対する寛容は無いのか?」

「オヤビンが好き放題するからッスよ」


 ガーくんがちょっと冷たい。

 勇者王になりたいガーくんは、負けてもいいから正々堂々戦いたい派なのだ。ノンノン、人生経験の浅いガーくんはまだまだ勝負の非情さを知らないね。世の中、勝った方が正義なのだよ。


 俺はガーくんとの合身を解き、激しいブーイングの中に小さな身を晒す。

 うるさい奴等は力ずくで黙らせればいいのだ。そう、こんな風に…


 右手を挙げて指パッチン、そして高らかに叫ぶ。


「ウイニ~ング・ラ~イブッ!!」


 ざわっ!とコロシアムの雰囲気が変わった。

 俺への非難一色だったのが…二分の一が期待に、四分の一が困惑に変わる。


 ガーくんが大舞台を飛び降りて観客席へ向かって走り、観客席にいた仲間達が闘技場へと飛び降りる。

 ルゥ兄ぃが楽器を生成するとミュルンがバンドセットの前に座り、ガーくんがタンバリンを掲げる。


「曲名『キュンリアス』。俺の熱唱でお前等を黙らせてやるぜっ!!」


 軽快なバンドリズムと共に、神秘的な夜のイメージが拡がっていく。



『♪ 宵闇のビーウィズュー 夢の続きはマジック

 ♪ ノーリーズンな運命は 情熱をなぞっていく

 ♪ 何処かで見たな 記憶は手を繫いで

 ♪ 螺旋を駆ける 爪隠したアンビション

 ♪ なんてグラビティ 希望はやがて

 ♪ 静寂の夜を染めて

 ♪ 惹き合う 惹かれ合う 一縷の光がダイレクション


 ♪ 興味津々 好奇心に もっと邁進

 ♪ 自分自身 凌駕し 止まらないよキュンリアス

 ♪ 経験上の正解より 今が愛おしい

 ♪ リアライズ!この手で掴もう

 ♪ 傷ついてもいい 疼く心極めて ♪』



 この曲はアニメ”転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます”の第一期オープニング『キュンリアス』である。幼い少年が情熱と好奇心のままに(倫理観さえ無視して)己の道を突き進んでいく歌だ。まさに今の俺に相応しい曲である。

 まあ…俺は転生者じゃないけどね!



『♪ 倫理観さえも カオスになるパッションで

 ♪ 貫けばいい 心にブルーミング 花咲かす

 ♪ 微笑みの裏の裏 複雑なイマジネーション

 ♪ 守りたいの衝動でさえも 潜在的意識のなか

 ♪ 悪戯に絡み合って 抜け出せないラビリンス

 ♪ それでも 未来は 一途な想いと手を取る


 ♪ 森羅万象好奇心で煌めいて

 ♪ 心の侭に 走ってるんだキュンリアス

 ♪ 想像上の願望だって叶えていこう

 ♪ サプライズ!本気にしてる

 ♪ 無謀な声も 味方になるそんな予感


 ♪ 滾る!キュンキュンキュンキュンキュンキュキュン キュンリアス

 ♪ 君のことを知りたいよ もっともっと 深く ねえ


 ♪ 興味津々好奇心に…

 ♪ 興味津々 好奇心に もっと邁進

 ♪ 自分自身 凌駕し 止まらないよキュンリアス

 ♪ 経験上の正解より今が愛おしい

 ♪ リアライズ!この手で掴もう

 ♪ 果てなき衝動 傷ついてもいい

 ♪ 終わらせない この鼓動続いていく


 ♪ ノーリーズンな運命に 確かな光のシルエット ♪』



「ふぅ…」


 しーんとコロシアムに静寂が流れる。

 俺の歌に感化されて口ずさんで喜んでいるのは、幼い子供くらいである。


 ふん。大人どもは俺の歌と歌唱スキルに感動していても、素直に称賛したくないから黙り込んでやがる。そういう我慢は心身に良くないぞ。

 ま、俺には都合が良いけどな。

 うやむやに勝利を確定させたし、こうして非難も黙らせたので。


 俺は昨日とは違って、堂々と胸を張って大舞台を降りて行った。


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