仲直り
本日投稿四回目。
「ひっく、ぐすっ…ひん…」
ケモ耳を押さえて泣きべそを掻くミュルン。
その両ケモ耳には、俺の歯形がくっきり刻まれている。
俺はそんな彼女の前で勝利の余韻に浸りつつ、ルゥ兄ぃにパンツを穿かせて貰っていた。
今回の勝利によって、俺はミュルンに上位マウントを得た。”テンマ”の家が幼少から犬を飼っていた御蔭で、俺は犬系統にはすこぶる相性が良いのだ。もちろん、強者である彼女ならあっさり下剋上可能だろうが、三歳児相手にマジになる時点でプライドを天秤にかける事になる。
さて、このミュルンの容姿だが…下界に降りたらさぞ注目をあびると思われる。
見た目は九歳くらいの美幼女。アホ毛が主張する紅い髪の中に白い狼耳が生えて、へにょんとしている尻尾も真っ白だ。へそ出しホットパンツで露出は多いが、色気より陽キャっぽい可愛さに溢れている。無論、ルゥ兄ぃの方が可愛いのは言うまでもないが。
それにしても可愛さこそが唯一の武器である俺にとって、ご近所にライバル多過ぎひん?
勝っているのは脆弱さと幼さとぽっちゃりムチムチ肌くらいなものだ。同じ土俵で戦う気にもならない。これではいかに”不老”を得ようとも、数年成長した時点で俺の居場所が無くなってしまう。
やはり、凡人の俺には依存できる幼馴染が必要だ。それにまあ、泣いてる女の子を見てると罪悪感が半端ないし…。
「うぅ~、ちょい…やりすぎた。ごえんね、みゅるん。なかなおり…しょ?」
「っぐ……ぅえ?」
俺はその場にころんと横になって、お腹をぺろんと捲り上げる。
これは負け犬なら完全屈服の合図だが一時的でもマウント上位者である俺が行うことで、もう怒ってないよ♡こっちもごめんね♡って意味になる。
「…ぁ……まんまる…」
ぐずっていた狼幼女が、俺のぽっこりお腹に眼を瞠る。
「ふふん、可愛いでしょう?僕の愛情がいっぱい詰まってますから♡」
ルゥ兄ぃが自分が褒められたように胸を張る。
あの…ルゥ兄ぃの美意識ってちょっとズレてない?
まあ、危険の多いこの世界では、子供が身に付けた脂肪は親の愛情と子煩悩の証明であり、決して危険な目に遭わせないという覚悟と裕福さを表しているらしい。”テンマ”の記憶でも『子犬はふわふわもこもこが正義。もっと太らせたい!』と、犬派飼い主の絶対的真理みたいになっていた。
俺のぽっちゃりも、ルゥ兄ぃママンの膨大な愛情の成果である。無限に食べさせようとするのはちょっと勘弁して欲しいが…。
しかし、そんなルゥ兄ぃの美意識はミュルンにも通じるようだった。
好奇に震えるミュルンの手が、俺のまんまるポンポンをさわさわムニムニと撫で回す。
「……うわわ、こ…これが幸せのカタチ!?ルシュ君が溺愛するのもよくわかる…」
「ありがとうございます。良き理解者には、更に幸せの御裾分けをしてあげましょう♡」
ルゥ兄ぃが俺の頬っぺをツンツンすると、反対側をミュルンがつつき始める。
「ふぉ……擦り傷がもう治りかけてる…」
「僕の加護が全力全開で効いてますから。シュテンは赤ちゃんの頃からヤンチャで、いつも生傷が絶えなくて…」
そして、ルゥ兄ぃが子育ての苦労なんかを語り始め、赤子の抱き方指導とかするうちに俺は強制的にママゴトの赤ちゃん役を拝命するにいたっていた。
「わあ、指に吸い付いてる。可愛い…」
「シュテンは貪欲だから何本でもしゃぶっちゃいますよ」
「ええっ…あっ、ほんとだ…」
へん、俺はそんな卑しんぼじゃ……ちゅぱちゅぱ♡
内心で抗議の声を上げたのだが、その時点で俺の意識はほとんど夢現の状態であった。
そういや、今日はコゴローとの喧嘩やミュルンの捕縛で疲れが溜まってたんだな。三歳児の活動限界はとうに越えていたようだ。
なんだかんだ仲直りも済んだし、ルゥ兄ぃとミュルンの関係も修復したようで安心だ。俺の野望のためにも、この調子で幼馴染を増やしていければ……
あ~…もぅげんかい…かも…
お…やすみ…なさ…ぁ…




