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シュテン童神  作者: 追川矢拓
第三章
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人魔合身

「行くぜ、ガーくん!!」

「うおおおおおーっ!!」


 ガーくんが魔力全開でゴーレムの特性を活性化させる。

 そして、俺も同じ特性を…ガーくんに与えられた微妙な”加護(・・)”をもって共鳴する。


 二人の心が一つになって…今、小さな奇跡が生まれる。


「「魔力リンク!!」」


 俺とガーくんの魔力波長がピタリと重なった。


 ”魔力リンク”とは…魔力を浸透させた魔岩をボディとして操作するゴーレム種の固有特性である。実は先日のハイオークとの戦いで、ガーくんから俺への”加護”を得ていたのだ。実力的にはまだまだBランクに満たないガーくんなのでちょっと意外だが、おそらく足りない分を俺への好意や忠誠心で補ったのだろう。熱血で勇者王を目指すガーくんならあり得る話だ。

 とはいえ、人間の俺が”加護”程度の魔力リンクが使えたところで何が出来るわけもない。

 ……普通ならな。


 俺とガーくん双方向の魔力リンクが成立した時、小さな奇跡が起きた。

 他者と混じらないはずの魔力が共有され、魔力循環により俺達の魔力量は実質二倍になった。

 そして、それは俺の能力がガーくんにも共有される事でもあった。


「よっしゃ!生命魔法・発動っ!」


 その対象はガーくん…ではなく、その魔岩の身体に寄生するマンイーターであった。自走する食人植物として嫌われている蔦の魔物だが、その強靭な植物繊維こそが有用なのだ。

 ここ毎晩、俺の微妙な生命魔法でもコントロールできるようにルゥ兄ぃに何度も調整して貰っていた。


 俺達の魔力を吸って、蔦と根で構成された植物性筋肉(プラントマッスル)が無限にバンプアップしていく。魔岩の隙間をプラントマッスルがぎっちりと埋めて伸長し、鎧パーツを上から覆っていく。

 ガーくんの首筋から伸びた蔓が俺を持ち上げ、マンイーターの頭(消化嚢部分)がおまる形のコクピットへと変形し、白い花びらがフルカウルのように周りを覆う。

 コクピット部を含めれば、その身長は三メートルを超えるだろう。


 決めのポージングは”モストマスキュラー”だ。

 この変身モードは、『お願いマッスル!』を歌いながらも筋肉に恵まれない俺とガーくんの夢や憧れが詰まった姿なのだ!


『人魔合身!マッスルジャイアント!!』


 二人の魔力による発声で声がちょっと太い。

 加えて上半身を強調するポージングで、緑色の大胸筋をビクンビクンさせる。


「ブモッ!?」「ブひィ!?」「ぶッヒィィ!?」


 オークどもが筋肉巨人(マッスルジャイアント)の威容にビビって後退りしていた。

 身長は似たようなもんだが、ふふん…筋肉が違うのだよ。筋肉が…!


「ふはははっ!ガーくん、これが敵を見下ろす気分なんだな。超気持ちイイじぇい!!」

「オヤビン、それは三流悪役のセリフっスよ。でも、この感動は本物ッス!オイラ達、とうとう夢の巨大ロボへの道を歩み始めたんスね!」

「あ…ぅ…うん、そう…だね?」


 チッ…この程度じゃ満足しないと?合体ロボは浪漫だけど、確実に資金難で挫折しそうなんだよなぁ。ドワーフの知り合いもいないし…。

 俺の焦りも知らず、ガーくんは脳天気だよね。でも、こんなに忠実な部下は大事にしないとな。


 そのまま逃げるかと思われたオーク達だが、その中の一匹が地面を指差してぎゃあぎゃあ騒いだ。

 そこにはポージングのためにガーくんの手離したメイスが…


『あ…』


「ぶひ、ぶっひぃぃん!(バカを殺せぇ!)」

「ぶんもーっ!」

「ぶっひーん!」

「ぶ…『うっせい、十六文キーック!』ゲヒャアッ!?」


 脚が長いっていいよね♡

 一見、地味なヤクザキックだが、忖度さえあれば必殺技にだって昇華するのだ。武器など無くとも、筋肉さえあればあらゆる技が致命に至る。

 魔力リンクによって心を通わせた俺達は、当然のように気力や覇気も二倍になっているのだ。


『ウエスタン・ラリアット!』

「ブヒャン!?」

『パワースラム!』

「ブホウッ!?」

『おらーっ!ジャイアント・スイングゥーーッ!』

「ブヒャヒイィーッ!?」


 ハイオークに比べたら脂肪が多く鈍重な奴等だが、悲鳴の響きと受け(やられ役)の上手さはオークの方に軍配が上がるな。


 そう…筋肉があれば何でも出来るっ!

 漢らしい肉体言語で、憧れの無双だって出来ちゃうのだっ!






          ◇






 ルゥ兄ぃの張った孟宗竹の結界は既に村の後方にも周り始めていた。本命である樹木の結界はまだ村の半分にも来ていない。完全に覆ってしまえば出るのにも困難だろうけど、まあ十数分で生やした結界なら数日もすれば魔力が抜けて灰になるんじゃね?

 さすがにこれ以上、気を遣ってやるほどの義理も無いしな。


 現在、俺とガーくんの変身した”マッスルジャイアント”は、気絶させたオーク四匹を引き摺って村の後方に来ていた。

 オーク達にはいっぱい模擬戦(スパーリング)に付き合ってもらったから、危険な外に放り出して他の魔物の餌にするのは寝覚めが悪い。それなりにトラウマも植え付けたし、竹藪の中にでも捨て置けば勝手に逃げていくだろう。


 そして、同じ事を考えたのか、反対側からもミュルンが気絶したオークを数匹引き摺って来た。


「あっ、ボス~!そっちも終わったみたいだね。実践テストどうだった~?」


 獣ではなく、人の姿に戻って手を振っている。

 村人に噂を立てられるのを警戒したようだ。よっぽどストーカーが嫌なんだな。


「おう、ばっちしだったぞ!」

「ミュル姉、筋肉って最っ高ッス!」

「そ、そう?良かったね…」

「うむ。我等のこのパゥワァーなら、正面からお前をボコることだって…」

「へえ……」 


 …ッ!?背筋に冷水を流し込まれた感覚が走った。


「…や、やはりパワーだけじゃ実力不足だよな?も…もっと技を磨かねば…」

「そ…そうっすよ!もっと鍛えて、自信を付けて、必殺技を会得してから…挑戦する…かもッス?」


 一瞬、ミュルンが獲物を見つけたような眼をしたのにビビッて、俺とガーくんは全力で前言撤回した。戦闘狂の玩具にされたら、孤児院のお姉ちゃん達みたいに人格改造されてしまう。そもそも俺達が技でミュルンに届くことはないしな。俺達がコイツに勝つには、もっと圧倒的な力…それこそ獣神フェンリルに匹敵するくらいのチートパワーが必要だ。


 樹木の結界も後方にまで芽が伸び、もう十分もあれば完成しそうだ。

 口は災いの元…とお口にチャックして、オーク達をまだ幼い竹林に放り投げる。


 この後はまたミュルンに乗って北の砦に向かわねばならない。

 戻った時には、この村を素通りした魔物達が城壁を攻撃しているはずだ。出来れば魔物達も死なせたくなかったけど、こっからは弱肉強食の法則に従うしかないな。

 俺達は防衛に専念するつもりだけど…。


 でも、もしチャンスがあれば……オッサン等には悪いが、戦場を引っ搔き回すのも吝かではない。

 人魔合身の別モードもテストしてみたいし…。


 ふっふっふ…幼児って我侭で理不尽な存在なんだぜい!


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