電撃防衛戦
ダダッ!シュバッ!ダダダダーッ!
樹海の木々の隙間を、純白の神獣が凄いスピードで駆け抜ける。
いや、頭の天辺から伸びたアホ毛だけは紅いか…。
いま俺・ルゥ兄ぃ・ガーくんはフェンリルに変身したミュルンに跨って、開拓村へと突き進んでいた。
三メートル近い巨体には子供の俺達くらいどうってことも…
「うええぇん!ガーたんが超重いよぉ~!」
「うぅ…ミュー姉、申し訳ないッス…」
やっぱり、ミニサイズとはいえガーくんを乗せるのはキツかったか…。
だが、武人が弱音を吐くことは許されないのだ!
「甘えんな、ミュー!止まったらアホ毛を引っこ抜くかんな!ハイヤーッ!!」
「ぅひいぃ~!?ボ…ボスの鬼ぃっ!人でなし~っ!!」
文句とは逆にグンッ!とスピードが増した。
武人ってのはストイックに自己鍛錬を怠らぬ者であり、負荷を掛けられて喜ぶマゾなのだ(決めつけ)。コイツが俺をボスと仰いでいるのも、無茶振りに応える方が遣り甲斐があるんだろう。お姫様をやってたらしいし、「うわ、群れのボスなんて面倒臭いっての」とか思ってんじゃね?
それからすぐに開拓村が見えてきた。
しかし、既に丸太の柵の周りにはゴブリンたちが取り縋っており、上から爺さん達が石を投げたり槍を振り回していた。
更には、森の向こうからオーク等の姿も見え始めている。
「やばっ!?ミュルン、僕を村の前に降ろして!」
「合点!」
そのままゴブリンどもを蹴散らしたミュルンから飛び降りて、ルゥ兄ぃが地面に手を付いた。
「伸びろーーっ!!」
ルゥ兄ぃの叫びと共に地面から生えたのは、無数のタケノコだった。
タケノコはルゥ兄ぃの魔力を吸ってぐんぐん大きくなっていく。同時に手前の方に小さな木の芽が枝葉を伸ばしているが、こちらの成長はタケノコ(孟宗竹)の十分の一と言った所だ。
これは樹木が充分な強度を得る(大樹になる)までに時間がかかるからであり、生命魔術があまり戦闘向きでない理由である。まあ、菌類や草花・蔦の類ならほぼ一瞬なので、数多の万能性に比べたら大したデメリットでもないのだが…。
オークの群れが孟宗竹の幾本かを斧でへし折ったが、それ以上に生えてくる本数が多いのでオークの群れは左右に分かれて通り過ぎて行った。
アイツ等も後続に踏み潰されて餌にされるのが怖いので、さっさと前に進むしかないのだ。
「よし!僕は突破力のある大型が来る前に壁を造り上げるから、シュテン達は僕が間に合わない左右後方をお願いっ!」
「アイアイサー、ルゥ兄ぃ!!」
「りょーかいしたよ、ルシュ君!」
俺を肩に乗せたガーくんが開拓村の右後方へ、ミュルンが左後方へと走っていく。
ただ、俺とガーくんの戦闘力じゃ、ミュルンの戦闘力には全然届かない。バランスの悪さは工夫でなんとかするしかない。
しかし、俺達が村の右後方に行った時、先程通り過ぎたオークの一部が丸太の柵に体当たりをしていた。
「あっちへ行け!こんの豚野郎ッ!!」
「おらっ!死ねい!」
「うおっ!柵がっ!?」
ここでも爺さん達が命懸けで抵抗していたが、なんか柵ごと押し倒されそうで……あっ!?
バキャアッ!!
「「「うわあああーーっ!?」」」
地面に突き立てた丸太が折れ、柵の一部が崩壊した。
破損部分からオークが次々に雪崩れ込んでいく。
「とりあえず、突っ込めガーくん!!」
「うおおーッ!ガンギマリっス!!」
その勢いのままメイスで後頭部を殴るつもりだったが…俺達の叫びや鎧がうるさかった所為であっさり気付かれちった。てへ♡
まあ…その御蔭で爺さん達が逃げ切れたので、結果オーライと言えなくもないな。うん。
オーク達は半狂乱というわけでもなく、凶暴で明確な戦意をこちらに向けてきた。
やっぱり、冷静に後続の魔物達をここでやり過ごすつもりだったんだろう。そりゃ、生きるためには必死で頭も使うよな。
オークの数は四匹。
そして、オーク一匹と同等の強さであるDランクのガーくん&おまけの俺。
歌唱スキルによる俺のバフを掛ければ結構いい勝負が出来るんだが、後続の魔物を誘き寄せる恐れがあるので今回それは却下だ。
「ちょっとばかり絶体絶命な展開だけど…ガーくん、今こそアレをやるぞ!」
「ッ!?さ…さすがオヤビン、そこに痺れる憧れるッス!ぶっつけ本番は勇者の専売特許、うおおお…燃えてきたあああぁーッス!」
ふふっ、危機を前にして燃え上がるとは…本当にガーくんには勇者の素質がありそうだ。
ちなみにガーくんの憧れる勇者はこの世界の伝説にある勇者ではなく、獅子を胸に抱いた勇者王のことである。あしからず!
「行くぜ、ガーくん!!」
「うおおおおおーっ!!」
ガーくんが魔力全開でゴーレムの特性を活性化させる。
そして、俺も同じ特性を…ガーくんに与えられた微妙な”加護”をもって共鳴する。
二人の心が一つになって…今、小さな奇跡が生まれる。
「「魔力リンク!!」」




