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シュテン童神  作者: 追川矢拓
第一章
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両親いないけど幸せです

久々の投稿です。

第一章までは連続投稿になります。

本日投稿一回目。



「はい、あーん♡」

「あ~……ん!おいち♡」


 ルゥ()ぃの差し出した匙をかぷりと咥えて、最愛の兄に最高の笑顔で応える。


「ふふっ♡ シュテンはいつも可愛いねぇ~、大好き♡」


 母性溢れる微笑みとともに俺に頬擦りしてくれる絶世の美少年(ハイエルフ)も、外見年齢は十歳そこそこにしか見えない。笹葉のような両耳が嬉しくてピコピコしているところが、実年齢の割に俺よりも可愛いんじゃなかろうか。

 いつも思うが…ただの捨て子である俺(三歳)が、こんなに素敵なお兄ちゃんを独り占めしててもいいんかな?この三年近くの間、過剰なほど無償の愛を注がれながら、この懐の中でぬくぬく過ごしてきたんだが…我ながら将来駄目人間になりそうな気がしてならない。


「…ぁ」


 そして、そんな平穏の極地だからこそ…この瞬間、俺はとある境地に到達してしまった。


「……ルゥ兄ぃ、おりぇ…さとっちゃったかも…」

「ぅん?それは上々…君の人生は君だけのものだから。他人の残滓なんかに惑わされないよう、しっかり自分を生きてね♡」


 最愛の兄(ルシュルゥ)が口癖のように言ってくれる教えに、俺は神妙に頷いた。


 俺にとっては人生を左右する悟りなのだが、ルゥ兄ぃには俺が俺であることが一番大事らしい。その基本さえ忘れないなら、どんな我儘にも付き合ってくれる。本当に俺には勿体ないくらいのお兄ちゃんである。大好きぃ!


 さて、御年三歳のこの俺がなんでこんなに内面が早熟かと思ったろ?

 それは俺が珍しくも厄介なスキルに悩まされているのに原因がある。ダンジョン由来の秘宝・鑑定祭壇による分析では、ユニークスキル”異世界記憶”という結果が出ている。内容はただの異世界人の記憶だ。

 そう…向こうの世界の人間なら、前世とか転生とか言って極限まで調子に乗っちゃう定番のアレだ。


 だが、しっか~し!俺は断じて転生者ではないッ!!

 学術的にも魂の色が識別できる種族が、転生説をきっぱり否定しているんだぞ!


 この世界特有のスキルは、修練によって天空のどこかにある”叡智の宝宮”(たぶんアカシックレコードのようなもの)へのアクセスによって行使される。どこかシステマティックで人間だけに限定、それも主に戦闘系に限られている。伝説では、今は無き神々が何者かと戦うためにやっつけで緊急構築したシステムだとか、世界を去る前に脆弱な人間に残した置き土産とか…。神を信じなくなった現代の風潮では、先史文明の超遺産的なヤツなのでは?って説もあるらしい。どっちでもいいが俺の場合、生まれ落ちた瞬間に偶然波長でも合ってしまったのか、希少でユニークな外れスキルを得てしまったというわけだ。

 この”異世界記憶”だが…過去には俺ツエーとかハーレム等を連呼する自称・転生者が起こした事件が、現在でも惨事の例として語り伝えられている。うーむ、正確には転生者と思い込んだおバカちゃんなんだけどな。まあ、無垢な赤ちゃんが膨大な知識にアクセスしたら、あっさり人格を上書きされても仕方ない。大概は知恵熱の連続で死ぬか廃人になると思われるが…。


 とまあ、そんな経緯で実の親に森へ捨てられたっぽい俺だけど、しかしその御蔭で今は最高のお兄ちゃん(実質ママン)に育てられている。まあ、それでも悩みが尽きないのは、ルゥ兄ぃの前ではなるべく無垢で純粋な子供でいたかったなー…と。

 現在の俺の”童心”は自然発生なのか他人の理性なのか、未だに自分でも判らないことがある。




 さてさて、そんなわけで悟りの話に戻るが、その内容とは…


 大人になる未来なんて要らん。この幸せこそが我が正義!

 この溺愛の沼に浸り続けるため、幼児のまま不老を獲得したい!


 あ~うん、言いたいことは分かる。人生を知らない三歳児のくせに…ってなるよね。

 でも、既に凡庸とはいえ成人男性の人生を疑似体験している俺に、大人になることへの憧れなんて全く無いのである。大人になって大好きなルゥ兄ぃと別れるくらいなら、格好悪くともお兄ちゃんの脛を永遠に齧り続ける方がいい。

 駄々甘ハイエルフのルゥ兄ぃなら諸手を挙げて歓迎してくれる…と思うのだが、逆に俺の将来を考えて怒りそうな気もする。確信が持てないので、その時まで内緒にしておこうと思う。


 幸か不幸かこの世界には魔法もスキルも秘宝もある。ついでに隣人に有力なコネまであったりする。

その気になれば三歳児だってやれることは多いのである。

 わーはっはっは!俺って天才っ!

 穏和なオタク男性”テンマ”の記憶を反面教師にしている所為か、三歳児シュテン君はちょっとばかしバイタリティ溢れるガキンチョに育ってるんだぜい! 




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