越久夜町の小林骨董店にて
ある世界の緑さん 平凡な緑さんの自宅。
小林骨董店はあの日のまま、埃を被っていた。緑さんは項にかけられたマジナイを解いてもらい、久しぶりにイズナたちへ挨拶をする。
「お姉ちゃん。このイタチは何?」
「イズナです。無害ですよ」
「友達になれる?」
「嫌がる素振りがないので、なれるかもしれません」
風蛇が興味津々でイズナたちを見上げては追いかけている。かの精霊たちは威嚇もせず、ただ浮遊しているだけだ。
「彼らはお構いなしか」
主人が帰ってきたというのに喜びもしない。
「ソレもそのはーず、ワタシが餌やりヲしてましたので!」
現れた案内人に嫌気がさす。コイツは信用できない。緑さんの中で警戒レベルが上がっていた。
「あ、拗ねてマスネ?」
「あんな事をされたら警戒するに決まっているでしょう」
「あー、なるほど。人間は奇々怪々デぇス」
冷蔵庫の中身を確認しながら、新しい麦茶を作る。
「お姉ちゃんかっこよかったよ!」
「私は人ですよ」
「だけど、ヒーローって正体を隠してピンチを救うんでしょ?お姉ちゃん、町の悪者を倒したんだよ?」
風蛇がヒーローとはを語る。確かに一般的にヒーローと呼ばれる者は正体不明で、人々がピンチに陥ると現れる。しかし。
「それはフィクションの話です」
「大丈夫、バレなきゃ良いんだよっ」
「そうそう!周りにバレなきゃall オッケー!」
困ったものだと、二人を一瞥してレジ横の椅子に座った。
「…はぁ、何が現状維持だ。維持どころかめちゃくちゃじゃないか…」
愚痴を吐きながら、人っ子一人いない外を眺める。高価な鏡には自らが頬杖をついて写っていた。
「…」
しかし顔にはあの画用紙の面がへばりついたままだ。
「…はー」
頬をカリカリと削ってみても爪には画用紙の感触がない。洗面所や他の建物ではごく普通に自分自身を写していたが…。
あの鏡は何か怪しいものが宿っているのだろうか?




