スーパー最強ヒーロー
ある世界の緑さん 平凡な緑さんと変身。
「ちょ、マテヨ。ちょっと、お待ちくダサいな!」
「は?」
凄まじい力で腕を鷲掴みされ、緑さんはずっこけそうになる。
「ワタシたちは敵の巣窟に突っ込みましょう」
三人が魔法使いの集会所へ走っていったのを、目でおっていくしかない。
「はぁ?いきなり?何を…」
「アナタにはスペシャルプレゼント!じゃ〜ん!スーパーマジックアイテム!お面デス!」
下手くそな狐面。画用紙にクレヨンで描いたのか…、絶妙なチープさを醸し出していた。
「ふざけているんですか?」
ピントはずれなプレゼントにさすがに語気が強まる。
「いいえ〜?ワタシは本気!これを被ればあらァ不思議!正体不明のヒーローに大変身っ!」
「…貴方をさらに嫌いになりました。消えろ。失せろ。クソが」
「ハハッ!嫌われて♡モ良いでーす!!ささ、被って♡」
怪しさ満点の紙切れを渡され、本当に市販品の画用紙だと半ば安心する。被って満足するのなら、早く終わらせて三人に追いつこう。
「一度だけですよ。はぁ、最…悪…」
被るというとよりは顔に押し当てる、に近しいが──紙がベキベキと硬い音をたて、変形しだした。
「な、何を──がっ、い、いだ──」
ふざけた作画の狐面が徐々に憤怒を模したリアルな造形に変わる。祭りのお囃子で使用される面の如く、眉や髭が生える。
「は、はず…せ──あ、あがが」
しかし異なる点があるのならば憤怒相であるのに口角が上がり、不気味な笑いをたたえているところであろう。
「──は、はは。本当に最低ですよ、本当に、あ…、あれ?ああ、わたし…なんだったっけか」
顔から外そうともがいていた緑さんは姿を消した案内人に毒づいた。──そうなるはずであった。
「賊どもをぶっ飛ばしに行きますか♪」
ベロリと獣の舌が裂けた口からでて、美味そうなものを連想したかのように"舌なめずり"した。
「ひいいっ!化け物だあ!!」
「食われる!」
「ぎががああああ!!」どの肉食獣より鋭い歯牙に身体を切り裂かれ、体内を流れていた熱い血が吹き出す。
"狐頭の化け物"に狸たちは無惨に捕食されていた。捕食というよりはジェノサイドか。
「まずい不味いまずi!!mっとうまいモノはないのかああ!?!?」
無惨に内臓や毛皮を食いちぎられ、事切れ、ピクリとも動かなくなり転がった同胞を前に、狸たちはすくみあがる。
「こ、こんなの聞いてない。俺は、三ノ宮一族に従ってるだけで──」
「アイツどんたけ食えば気がすむんだよっ」
「次はお前らぁだああ!!」
大口を開けた化け物が飛びかかってくる。悲鳴をあげ、逃げ惑う毛玉たちに一人の人間が紛れ込んだ。
「貴様!イズナの娘でないな?何者だ?」
「ああん?ィ、イズナ、の、ム、娘ええ?じゃあ、お前なんだよ、クソガキがょ。ちゃんと棒生えてんのかあ?」
「な、何を申す!」
日本刀で切りつけようとするも、硬化した獣びた手のひらで鷲掴みされ──へし折られた。
「乳くせえなお前よお。そんなんで、家長目指してるとか笑える〜〜。先祖のクソみてーな奴にしか頼れないとかあ〜〜腑抜け野郎がよー!!!」
「な、…な、緑さん!そ、それは言い過ぎなんじゃないですか?!!」
支配されていたはずの妙順が表に出てきた。
「おえっくっさ!!くっせえ魂しやがって!食えやしねえよ!ペッ!」
狐頭の化け物は鼻を押さえると、顔面に唾を吐いてきた。据わった目つきの、轟々と輝く双眸。それは違う所を見ていた。
「あっ♪みっけた♡」
体から弾き出された先祖の魂。逃げようとふらつき、無念にもパクリと喰われてしまう。
「あ、あ…ご先祖さまが…緑さん、あ、貴方は何をしたか分かっ…え?え」
頭が冴えてきて目と鼻の先にいる魔物が…小林 緑だと認識できなくなった。なぜ先程まで彼女だと思い込んでいたのだろう。
狐の頭をした人間らしき生物は喉を鳴らし、不自然な笑みをたたえたままこちらを見た。
「ひっ!!」
足元には仲間として触れ合ってきた狸たちの死骸が山盛りになっている。血の海が広がり、嫌な臭いが立ち込めていた。
「ギ、ギギギ──」
牙だらけの口が開き、奇妙な音を発する。奈落の底がわだかまっている。あれに喰われれば、もう、二度と──
恐怖のままにその場を逃げ出した。寺からは山へしか道がない。もはや月すらない闇を裸足で駆けるしかなかった。
1番、書きたかったんだ…。




