ワープしたら町がおかしくなってた
ある世界の緑さん 平凡な緑さんとおかしくなった三ノ宮 妙順が再開。
「こちらです。さあ、越久夜町へ」
案内人がガッシリと手を掴み、人外の腕力で引っぱる。重力のない異界ではどちらが空なのか分からない。
案内人らしく、少女は半月の嘲る目つきで案内をかってでた。
「落下しないようワタシに掴まって!越久夜町の上空へ出マスかラね!」
万華鏡のような変わりゆく景色に引き寄せられ、緑さんは明らかにこの世界とは異なる夜風を感じた。
「うっ!」
体にズッシリと重さがのしかかり、案内人の肩にしがみつく。どのくらいの高度にいるのか不明だが、下は夜闇に沈んで民家が判別できない。
「案内人。地面には降りれるのか?」
「ムリですねえ。バレてしまいマすから!」
「バレる?」
「ええ。賊ドモニ」
(賊?窃盗団か?)
案内人は人ならざる者らしい奇っ怪な異能で、宙を移動する。強風に吹かれながらもゆっくりと降下していった。
「人の気配がしない。喰われた?」
「なんとまあおマヌケで気さくでfunnyな戯言ヲ!そうでしョーねえ。喰われわしませんガ、彼らに監禁されているノデしょう」
防犯灯も、民家の明かりすらない異様な雰囲気の中、何かが道を横切る。野生動物だ。
「おっと!見つかっタようです」
「は?」
「なら本陣へ向かいましョう!」
「おい!」
車ほどの速度で案内人は三ノ宮一族が継いできた寺へ向かう。(まさか、もう妙順は)
魔物に食われてしまったのか?
「やれ。小林家のイズナの娘が来たぞ」
「それに奇妙な魔物もいる」
「なぜ、結界に滑り込めた?魔物のせいか?」
ボソボソとたくさんの声がして、緑さんは彼らが人ならざる者だと直感する。結界や魔物、それらは魔法使いも存じている用語だが、漂わせている気配が違う。
「なぜ越久夜町へ戻ってきた。イズナの娘」
聞きなれた声色に警戒態勢になる。有り得ない。この声は…
「三ノ宮 妙順。なぜ」
「さては三ノ宮一族を滅ぼしにきたか?え?」
日本刀を手にした見慣れた人物が暗がりに突っ立っていた。袈裟も髪型も乱れ、形相も悪鬼のようだ。
彼は何かに乗り移られている。そうでもなければあの変わりようは何だ?
「ハハ!どこまでもクダラナイ!賊の末裔だ!興醒めしましたよ!」
豪快な笑いに三ノ宮 妙順は眉をひそめ、日本刀を突きつけてきた。
「お前はこの前、ワシらの塔を燃やそうとした魔物」
「は?なんだって?お前、イメチェンした?ワシt」
「燃えればヨカッタノニなぁ!残念でーす!」
山火事が起きたと梦妙は口にしていた。あの山火事は…。(塔とは?三ノ宮一族が所有している塔なんてのがあるのか?)
「彼を支配しているのは三ノ宮一族の祖先。シカも最初の、悪い行いヲした修験の輩。彼は今、怯えてイルのです。霊験のある狸たちが逆らうのかと」
「塔、とは?」
「Yes!ナイス質問。その塔に、霊験のある狸の親分が封じられてイマス。それを笠に狸たちを従えテキタのです」
いきなりそのような事実を伝えられ、返答ができない。
「た、タヌキの親分を救うにはどうすれば?」
すると案内人はニヤけた顔をキョトンとさせ、大笑いした。
「アナタ、お人好しのフリをしたいのデスカ?!ハハハ!予想外でした!アナタからそんな言葉が出るナンテ!!」
「笑いたきゃ笑えばいい。咄嗟に出たんだから仕方ないだろ」
「まー、良いでしょー。ワタシも野郎ども相手にはひと暴れしたいノデ。それに口実がデキマシタ。感謝〜」
「はあ…」
「お前ら〜〜~っ!コソコソと!」
日本刀を振りかざし、迫ってきた妙順が一瞬にしてかき消える。緑さんがいたのはベッドの端だった。
「…。驚いた…」
「?…緑ちゃん。車の用意ができたわ」
「はい」
ドアを開けて、霧錆 芽々子がやってくる。まるで夢を見ていたかのような違和感があった。
「わたしたちがいるんだもの。丸腰ではないわ」




