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イズナ使いの虚誕 ~2人の緑さん関連の漫書〜  作者: 犬冠 雲映子
小林 緑さん。ワタシは貴方の味方です!以後お見知りおきを!
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悲しい過去

ある世界の緑さんと憑きもの筋の悲しい話。

霧錆(かさび) 芽々子(めーこ)さん。今までご迷惑をおかけしました」

 我ながらに感情のない声色だと自覚する。本来の『自分』はこんなものだと。

「緑さん。本当に、良かった」

「えっ…」

 涙ぐまれ、ドキリとする。そこまで親身にされた経験がない。

「あ、そうですね…。喋れるようになって…」

「そんな顔をしないで」

「えっ」

 どんな表情をしていたのだろう?鏡がないために確認ができないが…。

「私は越久夜町へ帰ります。芽々子さんにお世話になった分をゆっくりになりますが返していこうと…」

「いいって。あれはわたしの自己満足なの」

「けど」

「貴方を娘のようにしないように、いえ、娘に見立てて世話をしていた。リハビリが終わっても、声が出ないままでずっと誰かも分からない貴方を娘として、一緒に暮らしていけたら。なんて。神さまに願っていたのよ。すごい酷い人でしょ」

 分かっていた事だ。それは。

「…町に帰るのが、私の試練なんです。貴方に助けてもらったように、越久夜町に住むのを許されたからには。私は帰らなければならない」

 夜逃げ同然に逃げてしまえば。そんな上手い話、世の中には存在していない。逃げきったとしてもどこまでも付きまとう。

 自分が築き上げてきたものを手放すのは、きちんと支度をしてからだ。それをしていけば良い。

「試練だなんて。ストイックな人なのね。たまにそっちに行っていい?」

「…ま、あ、汚い部屋ですが…」

「羨ましいデスヨ。アナタ、ワタシにはできなかった」

 横でニヤニヤと案内人が物見遊山をしている。

(羨ましい…?)

 白々しい笑顔の真意が読めない。皮肉なのか?

「わたしも過去にとらわれて、先に進めないから。この場所にずっといるつもり。死ぬまで、娘と過ごした家にいる」

 喜怒哀楽をこねくり回して一緒くたにしたような、形容しがたい気色にゾワリとした。

(私はこの人を一生、理解できない。私には)

「娘の遺影を見る?貴方には見せたいのよ」

 そう言われ、2階へ連れていかれる。2階へ。緑さんは脂汗が吹き出す。

 自分は、2階で自殺未遂をした。階段が断頭台への道のように思えてそれ以来はあまり行かなくなった。

「娘はバレー部で、部活第一の真面目な子でね。勉強はダメだったけど、必死に学校生活を送っていたわ」

 子供部屋は今にも娘が帰ってきそうな状態で、時が止まっている。

「でもわたしの家には憑き物がいた。猿神よ。昔はその猿神の力を借りて、中世に隠密行動をしたりしていたんだと、母から聞いていた。わたしはきちんと封じて、一般人らしく日々を過ごしていたつもり」

「猿神ですか…レアな憑き物ですね」

「貴方は?」

「イズナです。祖父…引き取られた家族から継承しました。イズナは見えていましたから…」

「そっか…。娘にも猿神が視えるようになって、精神的に不安定になる日が増えたの。怖い何かがいるって」

 きちんとした手法で憑き物落としでもしなければ、家系の者に憑き物はしつこく憑いてくる。由来を知らぬ者からしたら悪霊か悪い存在が勝手に近寄ってくるとびっくりするだろう。

「それにわたしの家は昔からそう言う噂が付きまとっていたから、やっかみもあって、娘はイジメにあうようになった…」

 それで、自殺を完遂した。

「町の魔法使いも絡んでいると思う。でないと、わたしの一族が憑き物筋であり隠密行動を専門にした魔法使いだと存じないはず」

 涙ぐみながら、彼女はドアを閉めた。

「…開けた町にも、そんな因縁がはびこっているのですね」

 緑さんは血反吐が出そうで、顔をしかめる。越久夜町の魔法使いらも閉鎖的で、こちらを──小林一族を見下している。

(…でもなぜだ?三ノ宮だけ小林家に)

「ハハ!人間とは同種で殺し合うオロカシイ生き物ナンですねえ」

(は?)

 己の口から、場違いな言葉が放られて血の気が引く。

(案内人?!)

「緑さん…?」

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