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イズナ使いの虚誕 ~2人の緑さん関連の漫書〜  作者: 犬冠 雲映子
小林 緑さん。ワタシは貴方の味方です!以後お見知りおきを!
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案内人は瓜二つ

ある世界の緑さんと案内人さんの再開。

 温かい手料理をこうして、誰かと食べるのはいつぶりだろう?

 ズキリと胸が痛み、祖父と二人で朝食を食べ他愛もない会話をしていた記憶が蘇った。あの頃は祖父と共に台所に立ち、料理をしていた。

 まだ笑ったり、拗ねてみせたり、自分自身にも感情があった。

 祖父が冗談にくだらないと笑って、焼きジャケをつついているのを鮮明に思い起こせる。

 リハビリで動くようになってきた右手で、スープを飲んでいた。ミネストローネ。

「貴方ってこんなに美しい髪をしていたのね。二十代ってところかしら?最初はとても老けて見えたから」

 栄養バランスが良くなり、髪も艶が出てきていた。

「私は歳をとっているからパサパサよ」

 クスクスと笑い、彼女も朝食をとる。痛みが伴う。

(止めろ。私の、記憶を甦らせるな)

 和気あいあいと祖父と話していた。その日常生活はもう戻ってこない。

(ソレもツクラレタ記憶かもしれないのに?)

 内側に潜むチェシャ猫が咲う。あれから顔も見せないくせに、イマジナリーフレンドのように文句だけは言う。

「う…」

「辛い思い出をよみがえらせちゃったかしら。ごめんなさいね」

 首を横に振り、我ながらに偽善者だと嫌気がさした。言葉を発せたら不満を零してしまうだろうに。

 芽々子は憐れみ、白湯をカップに注いだ。

「貴方がリハビリに必死になっているのを見て、生きる力がある人だと尊敬しているの。わたしは…娘にその力さえ奪ってしまったから」

(…やはり、自死か)

 垣間見える陰からして、娘は自死したのだろう。

「生きていく上で…知らなくていい事まで、あの子に言ってしまった。それをすごく後悔している」

 案内人の言葉がよみがえる。知らぬが仏。

「わたしの家にいる時は、辛い過去とかは忘れちゃいましょう!」

 それでいいのか?

 それで──緑さんはどうしていいか、戸惑う。越久夜町を忘れて生きていくのは都合が良すぎないか?

(梦妙さん…)

 謝った方が最善策だろう。しかし勇気が足りない。勇気か。笑える。

(はあ、まともな生活は頭が働いてめんどくさいな…)




「起きてくださあい」

 耳にタコな声がして──無意識的に、咄嗟に、"頼りにしている木刀"を構えた。そうしてハッと己の体が自由になっているのを自覚する。あれだけ自壊した肢体が修復している?

 それに我が家に立てかけてある木刀が、どうして手に収まっているのか。

「それは夢だからでーす。おはこんばんちわー」

 目の前に薄ら笑をしている自分自身がいて、さらに顎先へ刃先を突きつけた。

「またお前か。しつこいな」

「おや?どうやら防護スーツが無効になっているようです。ま、深層心理同士を接続したのですから、さもありなんでしょうか」

 半月の瞳が紫と黄色に光っていて、クラリとする。それに相手はなぜだかオペラにでてくるような中世ヨーロッパ的なスーツだ。

「すいませえん。防護スーツを介していないと、魂に干渉してしまうようです」

「…あの辰美とかいう女といる私では無いのか」

「そうです!私は案内人!」

 彼女は大袈裟にジェントルマンの挨拶をして、薄気味悪い笑みでこちらを見た。牙が見え、厄介な人ならざる者だと冷や汗が垂れる。

「あの姿は防護服なんですか。じゃあ、貴方も私なんですか」

「あはは!大雑把に言えばですが…一緒くたにはされたくないですねえ」

 緑さんは口ごもる。何人、自分がいるのだろうか?

「可能性がある限り、貴方は無限大ですよ!まー…皆そうですけどー」

「それは聞いた事がある。…という事は、他の私を殺していくって訳だと」

「うーん。いいえ、交わらないよう遠くにやるだけです。oops──Shhh!知らぬが仏です。この話はやめましょう」

 案内人は口に指をあて、ドカリと座り込んだ。椅子らしき物は見えないが瓜二つの存在の雑な仕草だと嫌悪感がわく。

「お化けの話をすると、お化けがよってきますよ?それと同じです」

「はぁ…」

「それに貴方に謝罪しなければならない事がありまして」

 ふんぞり返りながら、彼女は切り出してきた。

「貴方の身体を借りて、山火事を起こしてしました。それと三ノ宮 梦妙?さんが今、大変な目にあいながらも貴方を探しています──あだっ!」

 木刀で頭を思い切り叩き、胸ぐらを掴む。

「あの建物にいたのはお前のせいか!」

「ええ、あ、いたた!小林 緑さん。知らない方がいいですけど、梦妙?さんは救われたんですよ〜」

 感謝してくださいね、と付け加えられ、怒りのあまりに頬をつねった。

「梦妙さんがどうして救われたか話してください」

「嫌です。これだけ言いますけど、命日にはならなくて良かったじゃないですか」

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