お祓い騒動
ある世界の緑さんとお祓い屋。と草目さん。
「だから!何も憑いて無いんです!」
咳き込みながら抗議するが、きちんと相手に届いているだろうか?
謎の薬草が燻され部屋は煙が充満していた。視界は奪われ、くわえて硬い枝の葉でバシバシ叩かれた。朝早く連れ込まれてこれはない。
「出ていけ!出ていけ!ハァーッ!!この顔を見たら分かるだろ!」
「いや、お前っ誰だ?!」
緑さんは訳あって──いきなり現れた修験者の格好をした老婆にずっと"お祓い"を受けている。三ノ宮家の先祖代々のツテで寄越したらしいが、イズナたちが慌てふためき右往左往している。一応、人ならざる者には効くようだ。
「確かにおかしくなりましたが、ただ、憑き物とかじゃなくて──」
「ソウデスヨ。ワタシはただお仕事をしただけ。犯罪してない。誤解、誤解」
(お前〜〜~!!)
ヤンキー座りでこちらを覗き込む、例の女はニコニコしている。憑き物騒動の元凶は我関せずと傍受していた。
「イズナたちが苦しそうです。やめてください!」
「うむう。どうしようか、憑き物がなかなか出てこんのう」
「いや、憑き物じゃない…」
抵抗するのも疲れてグッタリと項垂れる。
「かくなる上は浣腸でもするか…」
「嫌だ!妙順!いい加減出てこい!」
「ハハー、浣腸でも受けてスッキリしては?」
「っ〜〜~!!」
殴ってやろうかと思ったがパントマイムをしているとまた怪しまれてしまう。なので握りこぶしを畳に力いっぱい沈ませて、冷静を装った。
「やあやあ、ソウモクでえす。灯火の祓い屋さん、この人には悪いヤツは憑いてないっスよ」
諦めかけていた時、あの不躾な女性が豪快に現れた。どうやら襖を破壊してしまったのか、ブツブツ悩んでいたが…煙に我に返り軽く咳き込んだ。
「お、ソウモク。きとったんか」
(し、知り合いなのか…変なヤツらしかいないのかよ…)
老婆は彼女を見るなり、ふうむと納得したようだ。
「変な風に当たったのかもしれんな」
「まー、この時期は"風"がうろちょろしてますからねー」
(風?)
あの界隈の業界用語だろうか?
「運命の分かれ道トーライ!さあ!緑さん、アナタはワタシの存在を打ち明けますか?」
いきなり案内人が眼前でそんな宣言をしてくる。なるべく感情を押し殺しながらも睨みつけるも、ヤツはニコニコしているだけだった。
「ヒントをください」
小声で言う。
「有料ですが大丈夫?打ち明ける、ヤバい未来。アナタの生活、大きく変わる。打ち明けない、やりすごせる」
(誘導尋問のように感じるんだが…)
「後者」
「OK!!魔法をカケマショウ!」
わざとらしい、マジシャンのような指パッチンで彼女は時を停止させた。
「…逃げたらますます怪しまれるのでは?」
「アナタ、こざかしい」
「黙れ」
「逃げるのでは無く、コレカラアナタハ草目に引っぱたかれます。そこで気絶したふりをする。そうすれば、今までドーリぐうたら生活──あ、いだ!」
ポカリと殴ってやって、やっと気が済んだ。
「だいたいは貴方が私の体を乗っ取ったからでしょう?でなければこんなインチキ体験してませんよ!悪霊!」
「なんだとぅ?悪霊?ワタシ、貴方、助けるために尽力した!F☆☆k You!!」
どつき返されて近くにあった──三ノ宮家がコレクションしている槍を手に取ろうとした瞬間、時間が再生される。
「ダァァァァァァァ!!」
いきなりビンタされ、緑さんは盛大に吹っ飛ぶ。不意打ちの攻撃に何が起きたか分からず当たり前だが気絶した。
目覚めると、お祓いは終了したのか祓い屋は消えていた。座布団の上に寝かされ、ビンタされた場所に濡れたタオルが乗せられている。
気絶する前に最低な会話をしたのだけは覚えているが…。
「ハロー。お客さん」
「出たな、お前」
「Do you get it?お駄賃、必要。アナタ、助けた」
「助けた?どこが?」
「知らぬが仏デース」
またその謳い文句か。なら次は金の話か?いや…。
「ハア…もういい。可能性とやらを払えばいいんでしょう?」
「そうそう!」
女性は嬉しそうに頷いた。とんだ守銭奴である。
「どうぞ」
「毎度あり〜!アリガト!」
チャリーン!と効果音がして、音源がどこか探そうとするも見当たらなかった。やはり人智を超えた存在なのだろうか。
「緑さん。貴方にしばらく憑きマス」
「アァ゛?」
「アナタ、フラフラして心配。だからワタシがサポートします」
(どつき回すぞ)
緑さんが生きてる世界は基本的に悪い魔法使いさんはいません。祈祷師と呼ばれたりしますが、だいたいはみんな悪霊退散!悪霊退散!してくれます。




