仙名 麗羅へ凸る
開闢軸の緑さんとチー・ヌー。
チー・ヌーの口調を急に思い出しました(笑)
前半の口調は多分、芝居か素です。
「──あはは。馬鹿だなあ…」
誰かが笑う声がして緑さんは目を覚ました。天井には赤い糸がビッシリと括り付けられ、一瞬、悪い冗談かとも思った。
「これを見てみなよ──」
「辰美ちゃんはさ。一つ赤い糸が切れただけで大騒ぎ!」
あの異国の子供だ。
「辰美さんが?赤い糸?何ですか?それ」
「うんめーの赤い糸ダヨォ」
ニヤニヤとチェシャ猫の如く、不可思議な子供は天井に佇んでいた。名前はややこしかった気がする。
ずっと独りで会話していたのだろうか。
「辰美さんにも好きな人がいるのですね…」
心做しかホッとしている自分がいる。彼女も普通の乙女なのだと。
運命の赤い糸といえば、やはり恋愛に結びつけられる話題だろう。
「ライラはバカだねって笑ってるけど、辰美ちゃんは焦ってこんわい顔して探しにいったよ」
「はあ…」
「ねえ?ねえ?気づかないの?何で赤い糸がアンタの家にあると思う??」
「…」
答える気はなかった。
「いい加減、ライラに直談判しに行きなよ」
「どうやって地球の神さまに直談判しに行くんですか?人である私ができる訳ないでしょう」
地球を司る神というよりは管理人か。まあ、どちらも似たり寄ったりだろう。
辰美から聞いた仙名 麗羅はそのような存在であると。
「僕ちんが連れて行ってたあげるよ!」
「なぜ?名前を思い出せないんですが、貴方は確か辰美さんの味方でしょう」
美しい髪をサラリと揺らし、子供はニヤリといたずらっ子な笑みを浮かべた。
「暇で暇でしょうがないからさ!ね!ね?」
(やはり人外の考える事はわからん)
「人外魔境でそれをいうぅ?」
黄色と赤紫色の瞳を細め、妖しい化け物は天井からステンと着地を決めた。ようく目を凝らすとギリシア調ではなくアラビアな装飾を身にまとっている。
美麗な彫刻を連想させるその容姿は人でないのを良く表していた。
あの瞳の色の組み合わせは最上級の警告色だ。だからか、無意識に覚えていたのか──嫌悪感がわいたのか。
「それに辰美ちゃんはどうでもいいんだよ。この時空以外に何が起ころうと…」
「はあ?」
「諦めと怠惰に生きてる。それを僕は一番知っているの」
──本人は分からなくても。
少年は畳をあるき、スパンと襖を開けた。すると廊下ではなくあの巨大なしめ縄が連なる…不思議な空間が広がっているではないか。
「…んん?緑さんじゃん?」
二十代後半のくせっ毛を金髪に染めた女性。仙名 麗羅が暇そうに光を流す糸の集合体であるしめ縄を眺めているのを見つけ、ふいに視線がぶつかった。
「何で繋がったんだぁ?」
「それはわたくし、アトラック・シンシア・チー・ヌーサマのおかげですわよ」
胸を張って少年は言う。
「はあ…めんど。くっさい干渉者は帰ってくれる?」
「わたくしは小林 緑さんを助けに来ましたの」
明らかに嫌がると麗羅は再びこちらを見る。こちらも呆気にとられて、布団から起き上がれない。
「辰美さんが暴走しています。止めて下さらない?」
「辰美が?う〜ん。極力、"アレ"に影響は与えないようにはしてるけど?」
蛍のように薄ぼんやりと燐光が伝う、しめ縄を指さした。
「仙名 麗羅さん。貴方は辰美さんの行動を把握しているんですか?」
やっとのそのそと起き上がり、謎の異空間へ歩み寄った。床はなく冷たさもない。まるでVR空間のようである。
「してるよお。一応、分身?残機?だからね。たまにオイタしたら首絞めてるしい」
「はあ…。申し訳ないのですが、辰美さんからの執着を止めていただけませんか?私は平凡に生きたいのです」
「平凡…?」
すると麗羅は堰を切ったように笑いだした。
「アンタが平凡?稲荷神の入れ物になったのに?!神霊になりかけてるのに?あははは!それのどこが平凡だって?!」
壮大な話にならないよう気をつけたいです。




