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二階
『小林骨董店』に、佐賀島 辰美が来ていた。年末の大掃除を手伝いに来たのだ。
店先を掃除し、休憩にミカンをもらう。小林 緑はただ黙々とミカンの皮をむいて、食べているだけだった。
「ミカン、値上がりしてて高いでしょ。誰かにもらったの?」
「買いました」
「珍しいね」
「まあ、たまには年末の雰囲気を演出したいので」
「クリスマスツリーじゃないんだ」
クリスマスツリーは今や百均でも売っている。小さい置物や、謎の紙製品まである。
「あ、二階も掃除する?」
「いえ、二階は封印したんです」
「封印?何か化け物でも居るの?」
「自殺未遂した私が居るんですよ、まだ」
「あ、そうなんだ…」
なんとも言えぬ表情を浮かべ、辰美は天井を見上げた。




