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イズナ使いの虚誕 ~2人の緑さん関連の漫書〜  作者: 犬冠 雲映子
ろ(開闢軸の緑さんとある世界の緑さん 混合)
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夢見て

ある世界の緑さん。

「何も知らなかった頃に戻れたらいいのに」

 恨みがましく吐き捨てた言葉に、越久夜町を統べる女帝は冷徹な顔のままこちらを見下している。

 緑さんは失血死してしまうほどの血を吐いて、尚且つ人外の握力で絞められた首の苦しさに顔をしかめた。

 古びた床に血の海がある。人の血にしては多少色がおかしかったが、鉄臭さは変わらない。

「私でしてもあなたを殺せなかった。わかるでしょう?貴方が次期、この町を支配する役割を荷なう運命にあるのを」

 刃物で心臓を突き刺しても何をしても、この体は生きている。

 痛みはあるものの、ゾンビのように動き、意識がある。

 まるで地獄だ。地獄の責め苦。

 針山や地獄の釜へ落とされ続けているかの如く。

 ──逃れたい。こんな世界から。

 ──この狂った世界から逃れられるのなら。

「辰美さんに感謝しなさい。貴方をこの世につなぎ止めているのはあの子よ」

「…は?」

「あの子は人らしい子供だけれども、やはり執念深さと規格外の力は私たち地の神をも凌駕する化け物ね」

 ──お前は見ているだけ。私の世界を見ているだけの、

 ──今すぐにでも成り代わってやる。

 憎悪の念がこちらにヒシヒシと伝わってくる。

 言っている内容が理解できない。あの変哲もない未熟な人が、なぜ。

 くすり、と別の者がせせら笑う音がした。

(──そういえば、辰美さんとは誰だ?)

 緑さんはハッと自らの自我に疑問を持つ。あの自分はどうやら辰美さんなる人物を知っているみたいだ。

 しかし今、この景色を俯瞰している自身は一度も見た事がない。

「それはそうだよぉ。アナタ、世界が壊れた景色を見てないでしょ?核戦争が起きた世界、隕石が落ちた世界、または疫病で人類が滅びた世界。アハハ」

 どこからか他人事な、軽々しく笑う女性の声がして嫌な気持ちになる。脳みその中で勝手に横入りされたかのような。

「私の分身と隠れんぼするなら、のってあげる」

「小林 緑」

「アナタは私の領域から隠れられると思う?」

「私という存在から逃れられるの?」


「うー」

 不意に目を覚まし、口にイズナの毛が入り不快な状態になっているのに顔をしかめた。

「夢か」

 気がつくと馴染みの寺の枯山水庭園が見えた。小さい頃から交流がある家族の敷地・善郷寺である。そして深酒をした後の頭痛、吐き気、だるさ。

「起きましたか?」

「…妙順」

「い、いきなり呼び捨て?ひどいですねえ」

 三ノ宮 妙順。この寺の跡取り息子が呆れた様子で暴れわまるイズナを捕まえていた。

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