クリスマスとイズナ
とある世界の二人。
「緑さん!フライドチキン買ってきたよ〜!」
『小林骨董店』に辰美がルンルンでやってきた。手にはコンビニで売っていたフライドチキンと様々なお菓子、コーラがあった。
「…緑さん?生きてる?」
居間に行くと、コタツで寝ている小林 緑がいた。珍しく爆睡できているらしく来客にも気づかない。
「死んでるかと思ったわー」
適当に食べ物をテーブルに置いて、台所にあるミカンやらを探す。ゴミ屋敷とは言え辰美が確保したスペースには物は置かない──いや、ほったらかしにしているようだ。
ミカンとバナナと天然水と、と冷えきった台所でありったけの食べ物を抱え込む。これからクリスマスなのだから、たくさん食べて楽しみたい。
「…辰美さん。いつから居たんですか」
目を覚ました緑さんはフライドチキンを見ながら呆れている。
「私はクリスマス会を開催するなんて言ってないですよ」
それに今日はクリスマスイブでもない。まだ数日先である。
「良いじゃない!アタシ、フライドチキン食べたかったんで」
「だいたいクリスマスは食べ物を食べるだけの日ではないんですよ」
はー、とため息混じりに彼女は居間に集まりだしたイヅナたちをねめつける。匂いに誘われてフワフワとたくさんのイヅナがやってきた。
「わ、いつも思うけどどこから湧いてきたのってくらい居るよね。イズナちゃんたち」
「家のどこにでもいますから。これ以上、彼らに変な味を覚えさせないでください」
イズナは雑食性なのか、何でも食べる。お気に入りなのは辰美が持ってくるファストフードや焼肉弁当、ジュースだ。
味をしめた彼らは続々とやってきては、クルクルとビニール袋の周りを漂う。
「変な味?普通の食べ物だと思うケド?」
「イズナは一応肉を食べますが、それはジャンクフードではなく、人の肉です。本来の生態から外れてしまったら、イズナたちが可哀想じゃないですか」
「う〜ん?」
ガサガサと紙袋を開けるや、辰美の手元にイズナたちが殺到した。
「ああー、私たちが食べる前に全部無くなっちゃうよ!」
「だから言ったでしょう」
「でもさ。ひとりぼっちでクリスマス過ごすより何倍もいいや」
辰美が少し悲しそうに言うものだから、言い返せなくなる。唯一無二の友達と離別した彼女なりのわがままなのだろう。
「イズナは人にカウントされるんですか」
「されるよ」
「はあ…」
あっという間に骨だけになったフライドチキンを眺め、綺麗に食べるものだと関心した。
「じゃあ、夜中までパーティしよ!」




