定期検診
小林 緑は小綺麗な部屋で待ちぼうけを食らっていた。天道家が所有しているどこかの別邸だ。
「ごめんなさい。遅くなってしまったわね」
しゃなりと現れたバスローブ姿の貴婦人は佐賀島 辰美を連れている。
「…辰美さん、その格好は」
エキゾチックな衣服をきた辰美はチッと舌打ちして敵視してきた。彼女らしくない。
「月世弥。コスプレ衣装が台無しよ」
「ああ…月世弥さん、でしたか」
紆余曲折あって辰美と『お友達』になった古代の巫女。月世弥。
「あのアマ、クソババアがオイルマッサージしたらとんずらしやがった」
「オイルマッサージ?なぜ」
「私の趣味よ」
清々しいほどの笑顔を見て、感情が気薄な緑も顔が引きつった。
「月世弥と私は"前世"では恋人関係にあったのだから、お遊戯するのは当然の事でしょう。さ、緑さんもお茶しましょう」
「月世弥。失礼よ。嫌なら、私が隣に」
茶汲みをしていた有屋 鳥子が堪らず水をさした。
「ありや。貴方はこっちに座りなさい」
「は、はあ…」
これはハーレムというものだろうか。まあ、天道 春木は最高神なのだからハーレムを築いても不思議では無い。古からいる長命な神だ。
認識が古い時代で止まっていても仕方がない。
「緑さん、体調はどう?」
「普通です」
「そう。少し良いかしら」
手をさしのべられ、戸惑いつつも触れる。
「…、頭の部分が壊れているわね。治してもいい?」
「治す?どのように?」
「貴方の頭に手を突っ込んでネジを、こう」
「嫌です。人体改造じゃないですか」
「まあ、人間なんてそんな物よ。辰美さんだってたまにとんでもない事になって修理にくるんだから」
「は、はぁ」
佐賀島 辰美は色々な事態に巻き込まれたが、まだ巻き込まれて駆けずり回っているのか。
「さっきだって、ぐちゃぐちゃになって…」
「ガラスが刺さりまくって、別物になっていたわね」
ゲッソリとした有屋からとんでもない事になっていたのだと、察する。
「緑さんも精神が壊れたらまた、やってあげるから」
「はい」
考えるのも嫌になり適当に頷いて、久しぶりにきちんとした食事をし、四人で話をした。
高そうなベッドに横たわり、ふと会話を反芻する。
「…」
(また、って私は一回壊れて…)
茶汲みが茶組になっていたので修正しました。




