表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/45

六逆純子が見せた場所 一

待ち合わせの場所で純子を待つ。蒼華高校からすぐ近くの駅だ。

結局断りきれずにここまで来たけど、彼女は一体何を思って私を誘ったのか。そもそも見せたいものって何だろう。

特に何をするでもなく待っていたら、ふと気になることを思いだした。私はカバンからスマホを取り出して検索してみる。


緑冬(りょくとう)市 蒼華(あおはな)高校 殺人事件


普通に考えて、あんな小さい焼却炉で、人の体を燃やすことなんて出来ない。表面が真っ黒に焦げるだけで、死体はそのまま残ってしまう。だとすれば、事件が大々的に表沙汰になっていてもおかしくない。犯人が捕まっていなかったとしても、死体遺棄や行方不明事件として記録に残されているはずだ。あくまで、純子の言葉が真実ならだけど。

トップに表示されたのは緑冬市のホームページだった。画面をスライドさせて、目当ての情報が無いかを探す。特に当たり障りのないものしか無い。

その一番下に気になる記事が載っていた。もう十年以上も前の記事だ。ニュースサイトというより、個人が趣味でやっているオカルト系のブログだった。

そのタイトルにはこう書かれていた。


【蒼華高校の闇!女子高生焼却殺人事件について!】


ブログ主の個人の感想や推測は読み飛ばし、事件そのものについて書かれた所だけを読んでいく。その内容は、純子の話していたものとほとんどは同じだった。違うのは遺体が発見されていることと、犯人が捕まっていることくらいだ。

私はスマホに視線を置いたまま深いため息をついた。

だからって純子が嘘をついていないとは限らない。本当なのかどうかも分からない情報だし、仮に本当だったとしても、たまたま純子がこのブログを読んでいただけの可能性もある。

でもこんな悪質な嘘をつくだろか。純子にそんなことをされる覚えはない。そもそも私と彼女の間には何の接点も無い。昨日まともに言葉を交わした程度だ。

あれこれ考えながらぶつぶつと一人呟いていると、後ろから私を呼び止める声がした。

「お待たせ千秋」

振り向けば純子がいた。私は慌ててスマホを胸に抱え、動揺を隠しながら言葉を返す。

「じゅっ純子ちゃん。もう来てたの?」

急に話しかけられて驚いた訳じゃ無い。ましてや事件について調べていたのが後ろめたかった訳でも。いや、その二つも理由にあるけど。

私は純子の私服に少しだけどきりとしていた。

胸元に小さなフリルのついた、パールホワイトのシャツ。

手首にはリボンカフスが結ばれ、袖はゆったりとしている。

黒のフレアスカートには薄く格子状の模様が広がり、首元には瑠璃色のアクセサリーが淡く光る。それを結ぶ黒い首紐が、控えめな華やかさを醸し出している。


(あっ…カワイイ!)


そんな語彙力の無い単純な感想が、私の思考を駆け巡る。

本気ファッションだ。自分の魅力を完全に理解している服装だ。

驚きとも、ときめきともつかない感情が湧き起こり、私は後頭部を打たれたようによろめいた。

「大丈夫?千秋?」

純子が私の背中を支える。

「いや…ただの立ち眩み。それにしても純子。私服以外とカワイイね」

純子は珍しく表情を変化させ、きりりとした顔でそれに答える。

「うん。千秋との初デートだから、ちょっと本気だした」

何処に本気を出してるの?。というか初デートってどういうこと?。

私が言葉を理解する間もなく、純子私の手を引いて歩き出す。

「早く行こう。今日逃したら…もう見れないかも知れない」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ