疎まれた女神の代行人は国を出て自由に生きたい
「ソフィア・フォンベルン!『女神の代行人』へ危害を加えた貴様との婚約を破棄する!」
王国中の貴族が通う学園、その卒業パーティーには卒業生のみならず在校生や保護者、ひいては王族までもが出席する。そこで婚約破棄騒動を引き起こしたのは当時の王太子であり、その横にいたのは「女神の代行人」――世界を創った神々の一柱、女神アルアの現世での写身たる少女だった。
女神が現世で力を振るうには写身が必要だ。代行人が死ねば必ず次の代行人が産まれる。神殿はその代行人を引き取り養育するのだが、メルアルアトリーチェは神殿に甘やかされ蝶よ花よと育てられた娘だ。麗しく、傲慢で、強欲で、醜悪な娘だった。
この世全てが己のものと言わんばかりのメルアルアトリーチェが欲したのはこの国での頂点、王妃の座。王太子の婚約者であったソフィア・フォンベルン公爵令嬢はそのために貶められ、謂れもない罪を着せられた。
ソフィアは冷たい瞳で王太子を見返した。その目にあるのはただ憎悪のみ。将来の王妃となるべく厳しく教育された彼女にとって、その美貌と力で王太子を籠絡したメルアルアトリーチェも、婚約者のある身でありながらメルアルアトリーチェを受け入れた王太子も、それを止めなかった側近たちも、女神の代行人の方が公爵令嬢より価値があると判断した国王も到底許せるものではなかった。
ソフィアはその場は大人しく聞き入れたが、その後王太子とメルアルアトリーチェの評価は下がるばかりだった。ソフィアがこなしていた王太子の仕事を、メルアルアトリーチェに夢中だった王太子は少しもやろうとはしなかった。メルアルアトリーチェは王太子やその側近たちを侍らせ、毎日のようにドレスやアクセサリーを買い漁り、美しく着飾ることだけに執心した。
国王は女神の代行人が王妃になれば国は安泰だと神殿からの寄付を手にしながら笑った。そんな国王を傀儡にする大臣たちも次代の王のうつけぶりに安心すらしていた。腐った国の中枢は、だからこそ簡単に瓦解した。
――そう、フォンベルン公爵家によるクーデターによって。
「というわけで、この国の頭はすげ変わったのさ。フォンベルン家の長男が王に、ソフィア・フォンベルンは女公爵になった。王族はほぼ幽閉され、神殿のお偉方は粛清され、先代の女神の代行人は幽閉先で気を狂わせて死んだ。稀代の悪女として名を残したままな」
「へえ〜。で、幽閉されなかった数少ない王族がきみか」
「そういうこと。第二妃はフォンベルン公爵家の敵対勢力だったからな、次の女神の代行人が何かやらかしたら俺のせいにして首を飛ばせばいいってコトでお目付役を仰せつかったというワケだ」
涼しい顔でそう言って、元王子殿下は紅茶に口をつけた。私も同じようにカップを持ち上げる。まだ小さい手にはなみなみ紅茶が注がれたカップは重かったが、そんなことまで気が回る人間は残念ながらこの神殿にはいない。
「なるほど、女神の代行人が嫌われまくっている理由がよく理解できた。ありがとうベル」
「どういたしまして。最近は飯食えてんのか」
「うん、ベルのおかげ」
なんでこんな話を聞いていたかというと――私が今代の「女神の代行人」だからだ。今世での名前はジオルリスヴァンナという。女神の代行人って名字がないせいか名前がやたら長いんだよ。言いにくい。
そう、今世と言ったのは前世での記憶があるからだ。転生するときにアルアには何となく話を聞いたのだが、先代がめちゃくちゃやらかしたということをざっくりとしか伝えてもらえていなかった――多分アルアが興味なくて正確に把握してなかった――のでベルの話を聞くことができてよかった。
アルアもさすがに連続して性格破綻者を代行人にしようとは思わなかったらしく、私という前世の記憶アリ人間を代行人としておくことにしたのだ。といっても先代の性格が破綻したのって環境の問題がデカいような気がするし、今の私の環境とは正反対なんだろうけど。
先代が悪女としての名をとどろかせ、しかも幽閉されただけで死んだせいで今代の私が置かれている環境は劣悪だ。というか、ネグレクトと洗脳をされている。ベルはお目付け役だが、実際に私の世話をするわけではなく半年に一度会うだけだった。実際に私を教育していたのはフォンアウラ伯爵とその手下どもだったが、まあひどいありさまだった。多分女神の代行人としての力を使ってなかったらとっくに餓死でもしていたと思う。前世の記憶もあってよかった~。
ベルはさすがに私のその様子に気が付いて、環境改善を掛け合ってくれたのだ。女神サマが降臨して、代行人の栄養失調の肉体でロクに動けなくて使い物にならなかったなんて話笑えないからね。ま、ここ数百年はアルアが降臨するような事態は起きてないのだが。
それからベルは頻繁に会ってくれるようになった。もともと「王族とかめんどくせえだけだよあんなん」とか言うような変わり者で、今は絵を描いて過ごしているらしい。女神の代行人のお目付役なんて暇なのだ。趣味があってなによりである。まだ高校生くらいの年齢なのに枯れてないか?と心配になるが。
「ぶたれることもなくなって楽だ。あいつらに殴られた程度で痛くもかゆくもないけど」
「ガキを殴るなんてろくでもねえ奴ばっかだな。つっても代わりがいねえしな」
「んー、でも魔法で家事炊事はできるようになったよ。使用人がいなくても生活には困らない」
女神の代行人とは、ハイスペックチート存在である。アルアは不慮の事故で死なず女神の力に耐えられる程度のスペックを備えさせているだけと言っていたが、それだって人智を超えた力に違いはない。とはいえその力も真面目に使おうとしなければ大して使い物にならない。先代が幽閉されて出ることすらできなかったのはそのせいだろう。私なら魔封じされても人間が作った程度のものなら壊せるし、閉じ込められても転移でもすれば一発なので。
「じゃあ追い出すか?フォンアウラ伯爵もジオルリスヴァンナ様の面倒を見るのは左遷だとか言って嫌がっていたしな、俺が後を引き受けりゃ喜んで出ていくだろ。今までいたのだって俺が未成年だからってのもあるだろうし」
そう、ベルはこれまでまだ子供だったのだ。今年成人したと言っていたから今十六歳か?私は六歳だから、十歳足らずで王族からほっぽり出されて田舎暮らしを強いられていたということになる。よくグレなかったな、このひと。
「ぜひそうして。きみはどうする?」
「俺の居場所はジオルリスヴァンナ様の元だけだ。家も引き払うか、あの辺で描きたいものは描きつくした」
「ここで描きたいものがあるの?」
「ジオルリスヴァンナ様の絵を描く」
「ふーん。いいよ、じゃあ二人で暮らそう」
今の私は女神の代行人という名にふさわしい超絶美少女なので、私の絵が描きたいという気持ちもわかる。この外見はアルアの趣味らしい。先代も顔はよかったらしいし、アルア、もしかして面食いか?アルア自身がどんな姿かは見たことない。
「でもフォンアウラ伯爵を追い出すとお金もなくなるのはどうしよっか」
まあ食べるものなら最悪この周りの森で狩りをしてもいいけど、服も画材も買えないのは困るだろう。狩ったものを売ったりできるかな?転移で街に行ったことはあるけど、相場とかはさっぱりだ。
「……ダンジョンでももぐって稼ぐか?」
「え、戦えるの?ベル」
「ンなわけないだろ、元王子様だぞ俺は。絵筆より重いもんは持ったことねえ」
「えらそうに言うなあ」
ダンジョンに行くというのは魅力的だが、私は六歳だ。ダンジョンに入れるのだろうか?冒険者という職種があるのは知っているが、詳しいことは知らないし、子どもだと何を稼いでも買い叩かれそう――いや。
「私が戦って、ベルが換金するってこと?」
「そうだ。魔物くらい倒せるだろ、ジオルリスヴァンナ様なら」
「ヨユー。いいよ、じゃあ早速フォンアウラ伯爵を追い出そう」
「かしこまりました、ジオルリスヴァンナ様」
私の手を取って、ベルは手の甲に口づけた。こういうしぐさは王子様っぽい。口も悪いし貧弱だし、絵を描く以外役に立たないけどベルは私を女神の代行人として敬う唯一の人間だ。だからベルのことだけは信用している。
「というわけで、ベルと一緒に暮らすことになった。よろしくアルア」
「ベルファルスか。いいのではないか?お前は己に好意的なものと暮らしたいのだろう。なればベルファルス以外はいないな」
暗にほかの人全員に嫌われてるって言われるの傷つくな!まあいっか、私も全員嫌いだし。
今いるのは祈りの間だ。祈りの間というのは便宜上の名前で、私が祈ると意識が飛ぶ精神空間的なところだ。女神サマことアルア――ビジュアルは光の球だけど――と話したりできる。生まれてからずっと暇さえあれば祈りまくってアルアの知識を吸収したりアルアの記憶をのぞき見たりしていたので、私は過去の女神の代行人の中でもかなり力が強くなっているらしい。あとアルアとも仲良くなった。こんなに呼び出されることになるとは……と最初は悪態をついていたが、話を聞くに女神サマだって暇してるっぽいし。神は神との付き合いがあるのだとか言ってたけど。
「とはいえ、ずっとこの神殿にいるのもそのうち飽きそうだなあ」
「他の場所に行けば良いではないか」
「うーん、ベルの話聞くと女神の代行人って超評判悪いよね?あんまり居場所ないと思って」
「国から出ればよい。世界は広いのだから女神の代行人の悪評がない場所くらいいくらでもあるだろう」
「……出ていいの!?この国」
てっきり縛り付けられているものだとばかり思っていた。アルアはゆっくりと点滅して――これは呆れたときの、肩をすくめるようなサインだ――言葉をつづけた。
「ここに代行人を置いていたのは地位があったからだ。女神の代行人として動きやすい場所のほうがよかろう。その前提が崩れたのだから別の国に行ってもわたくしは構わんぞ」
「えー、いいんだ。お金貯めてダンジョンに慣れたら出ていこうかな」
ベルの意見も聞く必要があるが、絵を描くならいろんな場所を回るのは彼にとってもいいことだろう。せっかく異世界転生したのだし、私だって世界を見て回りたい。冒険者か、いまさらわくわくしてきた。チートだから命の心配もお金の心配もない、イージーモードで大変助かる。
「ベルに相談してみる。ありがとうアルア」
「うむ。わたくしもこの頃はこの国に引きこもりすぎたからな、好きなだけ見てくるがよい」
「そうする!」
女神サマのお墨付きがあれば安心だ。私は祈りのポーズを解いて祈りの間から退出する。意識が戻って、暗い祭壇が視界に映った。
ここは女神アルア信仰の本拠地なのに、祭壇の手入れはほとんどされていない。信者は先代のせいで激減して、神殿の力も相当に削がれた。そのことについてアルアは「人の子がわたくしを必要としていないのなら構わん。信仰せよと頼んだわけでもないのでな」と言っていたけど、荘厳な神殿は観光資源になりそうなもんなのにな。廃墟となっていくのは忍びないので、清掃の魔法をかけておく。
祭壇から部屋に戻ろうとすると、フォンアウラ伯爵にばったり会ってしまった。フォンアウラ伯爵は外見はダンディイケオジなのだが、中身がド最低だ。子どもの私にお前に存在価値はない、役立たずの小娘とか何とか罵って未就学児では到底理解もできないような課題を課して解けなければご飯抜きで懲罰房に閉じ込めてくるのである。わからないと高をくくって勉強道具を与えてくるあたりは愚かだし、懲罰房から転移してその間は外で遊び放題だったからずっと監視してくるよりはよかったかもしれないけど。
「女神アルアが貴様のような役立たずの貧弱な小娘に啓示をくださるわけもないのにポーズで祈ったりするでない、虫唾が走るわ」
そして今もこうして出会い頭に罵倒してくる。無視しようかと思ったけど、追い出す前に波風立てるのも下策だ。何も言わずに立ち止まる。
「女神の代行者など所詮はまやかしにすぎぬ。食わせてやっているだけ感謝をするんだな」
いや、食わせてももらってなかったですけどー。見上げるだけで何も答えずにいると、いらだたしげに舌打ちされて「誰か!この娘を放り出せ!」とか言ってきた。すると顔を出したのはベルだった。
「フォンアウラ伯爵、いかがした?」
「……ベルファルス殿か。フン」
鼻を鳴らしたフォンアウラ伯爵はベルのこともよく思っていないらしい。いやー、こんな気に食わんもんだらけの職場でよくやってますね。さっさとおうちに帰してあげよう。私は優しいので。
「何、この小娘が性懲りも無く私の前に現れるのでな」
いやゴキブリみたいに言うんじゃないよ。つーかここは私の家でアンタがゴキブリみたいなもんだよ。ベルもそう思ったのか、私を庇うように立ってえらそうにやれやれと首を横に振った。
「女神の代行人たるジオルリスヴァンナ様がこの神殿におわすのは当たり前のこと。そなたがここから出てゆけばよいだろう。なに、私ももう成人だ。ジオルリスヴァンナ様のお目付役ならば私一人で十分だと思わぬか?」
「……貴殿一人で?はは、そうだな。一人で十分と言うのなら私の出る幕はありますまい。私が派遣したものは全て引き上げさせてもらおう」
フォンアウラ伯爵は愉快そうに、使用人一人残しはしないと宣言するけど願ったり叶ったりである。ここまで短絡思考だと監視を残すとかいう発想もなさそうだなあ。馬鹿でよかった。
「では、私は帰らせてもらう。せいぜい女神の代行人と仲良く過ごすのだな!」
フォンアウラ伯爵は高らかに靴音を立てて出ていった。私はついベルと顔を見合わせる。
「チョロすぎねえ?」
「本当に伯爵やってけるのかな、アレで」
「まーフォンベルンも配下がアレじゃ大したことねえわな。それとももう女神の代行人のことなんて忘れちまったのかね」
そうしてもらえれば私も助かる。
フォンアウラ伯爵配下の使用人たちは本当にあっという間に出ていき、私とベルの快適な暮らしが始まった。ベルは一応いくらかお金を持っていたので最初はそれをやりくりしつつ、ダンジョンに入る装備を整えた。
冒険者として魔物を倒し、その素材を売却するには冒険者ギルドに入る必要があるらしい。そうすることでぼったくられずに済むのだとか。ギルドカードは身分証にもなるらしいので、ベルはただの「ベル」として登録を済ませた。しかし私もついていくと知ったギルドの受付に渋い顔をされる。
「坊主、本当にお嬢ちゃんを連れてくつもりか?危険だからやめときな」
「今日は簡単な依頼しか受けないつもりだ。それにこの子は魔法を使える」
「しかしなあ……。気をつけるんだぞ」
「ああ。感謝する」
受付に伝えて、ベルが最初に受けた依頼は薬草の採集だった。ダンジョンには入らないが、ダンジョン近くの森に行く必要がある。ダンジョンの近くにも稀に魔物が出るらしい。
「今日はダンジョンに入らないの?」
「入る。あのおっさんがうるさいから適当に言っただけだ。魔物の素材は別日にダンジョンに入ったフリをして卸せばいいだろ。ジオルリスヴァンナ様はアイテムボックス持ってるしな」
「そうだね」
アイテムボックスは時を止めることができるので、素材が傷むこともない。私たちは頷きあい、早速ダンジョンに向かった。
ダンジョンは見たこともない魔物が沢山で面白かったし、私と私のバフをつけたベルはその辺の魔物では傷つきすらしない。ベルは貧弱なので私の魔法でサクサク倒しつつ、弱そうな魔物の素材だけちょっとずつ卸すことに決めた。ベルは実力が皆無なので強い魔物を倒しすぎるとズルしてるのがバレてしまう。代わりに森で珍しい薬草を見つけたと言って小金を稼ぐことにした。
神殿の一番近くの冒険者ギルドがある街は、それでも王都に比べたらこぢんまりとしているらしい。私たち二人は気づけばギルドの名物コンビと化していた。ベルは元王子様らしくイケメンだし、私も美少女だし。でも私は髪の毛をバッサリ切ったので、身分のあるお嬢様だとは思われてないだろう。この国では女性が髪を短くするのは平民でも少ないのだ。
「ジオちゃんもそろそろギルドカードを作ったらどうだい?」
顔馴染みになった受付のおじさんがそう言ったのはギルドに通うようになって二年が経った頃だった。八歳になった私はすくすくと育ち、見た目はもう少し上にも見える。二桁にもなれば奉公に出たり仕事を探したりする平民も多いので、ギルドカードを取るのもこれくらいからなのだろう。
その言葉を待ってましたとばかりに私はギルドカードを作った。ギルドカードは身分証にもなる、と言うことはこれがあれば国を出て別の国に行きやすくなる。女神の代行人としてではなく、ただのジオとして。
「ベル、あと半年したらこの国を出て行こうか」
「そろそろか。わかった、描きたいものは描いておく」
ベルは相変わらず絵を描いてばかりだ。でもその絵を欲しがる人もいるので、値段をつけて売ったりもしている。ベルは一度描いた絵には頓着しない。売るのは私の絵以外にしてもらってるけど。
お金も貯まったし、フォンアウラ伯爵が出て行ってからは中央から何か言われたことはないから私の監視も無くなっているだろう。このまま女神の代行人なんてこの国では忘れ去られればいいと思うが、残念ながら女神の代行人を悪役にした歌劇はもはや定番化している。この街の劇場でも定期的に上演しているくらいだ。
「どこに行こうかな、ベル。きみは何が描きたい?」
「そうだな、見たことがないものがいい」
「じゃあ自由都市はどうだろう。あそこなら見たことがないものがたくさんあるよ」
「いいね。ダンジョンも山ほどあるしな」
自由都市は国家でなく冒険者ギルドが主体となった冒険者のための街だ。街といっても王都よりもはるかに大きいらしい。ファンタジーっぽくて私もワクワクするし、摩訶不思議なダンジョンが数多くあると言うのだからベルが気にいる景色もあるだろう。
私たちはしっかり準備をして、きっかり半年後に自由都市に旅立った。街の人は別れを惜しんでくれて、女神の代行人と言わなければちゃんと付き合ってくれる人もいるもんだとしみじみした。
「ジオちゃん……女神の代行人さまが本当に行ってしまうなんてなあ」
「ジオちゃんのおかげでダンジョンから希少な素材が手に入っていたんだけどね」
「薬草もジオちゃんが摘んでくれたものが一番品質が良かったもんだ」
「でも女神の代行人さまにはこの国は肩身が狭いだろうよ。ベル坊と一緒に幸せになってくれりゃいいんだがねえ」
――実は街の人たちに正体がバレていたとは、当時の私は思いもしなかったのだった。
それから冒険者として名を轟かせたり、他の神の代行人と出会ったり、王国に連れ戻されそうになったのをぶちのめしたり、いろいろあったけれど。私の隣にはずっとベルがいて、ベルの描く絵の中には私の姿があった。
私の居場所もずっと、ベルの隣だったのだから。