malama
「ね、好きだよ、付き合ってほしいな!」
服部もえは目の前に座る男に今週七度目の愛の告白をした。男はもう聞き飽きたとでもいうように大きなため息をついてもえをじっとりとした目で見た。
「何度言われても応える気ないからな~」
「ひどい!こんなにもいっくんのことを想っているのは私だけなのに!どうしたら私の事好きになってくれるの?」
「はいはい、好きだよ。かわいい妹分だね」
「適当!そういうのが欲しいんじゃないんだってばぁ」
もえは頬を膨らませ拗ねたようにテーブルに突っ伏した。いっくんこと天城依玖はそんなもえの様子に苦笑いをしてもえの頭をつんつんとつついた。つむじを狙ってつつかれたもえはううう、とうめき声をあげてゆっくりと頭を持ち上げて依玖を睨みつけた。
「はは、怖い顔。」
「こんな顔にさせてるのはどこの誰ですかね~」
「うーん、誰だろうな?僕のかわいい妹にこんな顔させるなんて、罪深いやつだな。顔が見てみたいよ」
もえは再び『妹』のワードにダメージを受けゴツンと大きな音を立ててテーブルにおでこを落とした。痛い。頭の上からはははと笑い声が聞こえ、依玖が椅子から立ち上がる音を耳にしたもえはそろそろ時間か、と悟り大人しく顔を上げて帰る準備をすることにした。
依玖が出してくれたおいしい紅茶を一気に飲み干し、キッチンで二人分のティーカップの洗い物を済ませると自分の部屋からギターを取りに行っていた依玖が流し台をちらっと見てありがとう、と伝えた。
「ううん、今日も押しかけてごめんね。また来てもいい?」
もえの伺うような声に依玖は呆れたような笑顔をみせていつでもおいで、ともえの頭をぽんぽんした。なんだかんだ言って依玖は妹分のもえが可愛くて仕方がないのでもえの頼みは無下には出来ないのだった。
もえは依玖の言葉で一気に機嫌が直り、さっきまで拗ねていたとは思えないような笑顔でmalamaと書かれたトートバッグを肩に引っ掛けて玄関からバイバイお仕事頑張ってね、と言って出ていった。