第2章 もしかして、真実は
頭を強打されたというのはおかしい。
だって・・・
あっくんを殺したのは、私だから。
私は、昨日の夜、あっくんのご飯の中に毒物を入れた。
身体がリラックスして抵抗力が低下するとき、つまり寝たときに、体中を回ってゆっくり死んでいくという毒だ。頭を打つのはおかしい。ましてベッドの上で。打つところがない。
もしかして、真実は私があっくんを殺したこと以外にもあるのかもしれない。
「何か紙が机の下に落ちてた。なんかのヒントになるかも」
というトラ兄の声にかぶせて、奪うようにトラ兄の手からその紙を回収する。
「借金の借用書みたい。貸し出す側があっくんとは書いてあるけど、借りた側の名前が書いてないね。」
そういってごまかす。この借用書は、私があっくんから借りていた物だ。皆に見せるわけにはいかない。
けど、明らかに不自然だった。
「・・・とりあえず警察が来るまで、食堂に居よう。」
トラ兄は皆を落ち着かせようとしてくれている。
こういうときに、こうして皆を落ち着かせてくれるトラ兄は流石だ。まあ、私としては皆が慌てて推理が進まない方がいいんだけど。
・・・トラ兄は、あの借用書を見たのかな・・・
それだけが心残りだ。
(最悪トラ兄も・・・)
いや、私はあっくんを殺していることもいけないことなんだ。これ以上罪を増やしてはいけない。けど・・・
「館内を探索した方がいいんじゃない?もしかしたら凶器が見つかるかもしれないし。」
トラ兄を殺そうとしてるんじゃない。ただ、いざその必要が生まれたときは、すぐ殺せるように・・・
「俺は反対だね。俺らの中にあつを殺した犯人がいないとも限らない。」
「そう言っているやつが殺人鬼じゃないと思われるとでも思ったか?」
翔くんの否定をトラ兄が止める。普段から人狼ゲームで鍛えられてるんだろう、そういうとこは。
「・・・わかった。けど、誰かと一緒に行動するぐらいなら一人の方が安全だ。俺は一人で行くから。」
「俺も一人で行く。その方が効率的だし。」
そういってそそくさとすてくんは食堂の奥へ行ってしまった。
翔くんもトラ兄も、それに続いて館の奥へ行ってしまった。
・・・私も探索しよう。あっくんを殺した誰かが別にいるかもしれない。
トラ兄は・・・あの様子だと借金の借用書の私の名前に気づかなかったっぽい?