第1章 もっと焦ろうよ。
おかしい点はなかったはず。少なくとも、私が把握してる限りでは。
ただ、あっくんに収集されて、この館に皆が集まった。高校の同好会以来、ちょうど五年ぶりの再会。
そして、皆で晩ご飯を食べて、皆部屋に案内されて寝た。
そして、今寝室、ベッドの上で、あっくんが血まみれになって倒れている。
「どうなってんだよ・・・ここのセキュリティは万全じゃなかったのか!?」
トラ兄は何か少し苛立っていた。
トラ兄は私の舎兄だ。といっても、歳は私の方が上だが、とある友達に周りから見てそう見えると言われ、気がついたらそれが定着していた。同好会を解散してからもたまにあってご飯を食べたりしている仲だ。
「とりあえず警察を呼ぶべきだな。できる限り早めに。」
すてくんはとても冷静だ。まるでこの事件が起こることが分かっていたかのように。
「なんで・・・俺たちがこんな目に・・・」
翔ちゃんはやっぱり落ち着けないみたい。
「私が警察に電話するよ。」
と言って、とりあえず110番にかける。こういうときに電波が繋がらないというのが一番怖いけど、どうやら繋がってくれたようだ。警察に状況と場所を伝える。
警察と話していた間に、トラ兄は部屋を探索していたらしい。
「何か見つけた。栄養サプリ・・・ビタミン剤だな。あつが飲んでいるものか?」
あっくんがビタミン剤を飲んでいるという話は知らなかったけど、多分、あっくんの物だろう。
「ぱっと見た感じ、あつは頭を強打されたみたいだな。そこから多く血が出てる。」
こんな時にもすてくんは冷静だ。普通もっと焦ったり怯えたりする物だと思う。というか、もっと焦ろうよ。あっくんが死んじゃってるんだよ?私はちょっとすてくんの人間性を疑った。
・・・けれど、やっぱりおかしい。