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トリニティ・クラウン  作者: たじま
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9、アクア・パッツァ

9、アクア・パッツァ




ざわざわとざわめく教室。

皆、緊張が半分、そして期待が半分入り交じった面持ちで雑談を交わしている。

ここはトリニティ・クラウン、ASコースA組。

これから訓練艦乗艦前の、最後のホームルームが始まろうとしていた。



「全員、揃ってるな?」



そうこうしてると教官のウォーカーが足早に入室してきた。

途端にピタリと雑談が収まる。



「先ずは三ヶ月間の基礎訓練、ご苦労だった。

お前達にはこのホームルームの後、港に停泊している訓練艦に搭乗してもらう。

ここに帰って来るのは半年後だ」



そこで言葉を切ったウォーカーが生徒達をゆっくりと見回した。

そしてニヤリと笑う。

皆、入校当初とは比べ物にならないほど自信に溢れた眼をしていた。

それが何より嬉しかったのだ。



「ふん、皆一人前……とまではいかないが、半人前以上にはなっただろう。今後は実戦形式の訓練が主になる。そこでだ……コンラット!」


「はい!」


「お前を正式にA1中隊の隊長に任命する。そして、ロンド!」


「はい!」


「お前がA2中隊隊長だ。二人とも頼むぞ」


「「はっ!」」


「行く先々の基地では軍の先輩達が手ぐすね引いてお前達を待ってる。揉まれて来い。

それを乗り越えればお前達は更に成長するだろう。

そして半年後、一人前になった顔を俺に見せてくれ。

それを楽しみに、俺はここで待ってる。

以上だ! 各自、荷物を持って移動!!」



「「ありがとうございました!!」」







「これが俺達の乗る船か……」


クリスとオルティア、そしてA2中隊の面々が港に停泊した艦を見上げる。


ヴィンランド製の新型強襲揚陸艦、その一番艦。

艦名を『アクア・パッツァ』。

それは追加フロートを必要としない初の水陸両用艦だった。


造りはファラフェル級と同じ四つ足構造で、大きさもそれに迫るほど大きい。

違うのはASデッキで、ファラフェル級のように前方左右の第一、第二デッキにはなく、ラフティー級と同じく中央デッキ後方にあった。

強襲揚陸艦だけに前方のデッキは車両用なのだ。

因みにカタパルトは横並びで四本。

主砲はファラフェル級と同じく第一、第二デッキの上部にあるが、砲塔は三門から二門に減っている。

代わりにミサイルと銃座の数が多い。

対艦より、対人、対車両を重視した結果だった。






「出港三十分前、各部各員は最終チェック後、チームリーダーに報告してください。繰り返します。各部各員は速やかに……」



身分証明書を見せて艦内に足を踏み入れると、すぐにそんな放送が聞こえてきた。

この艦を動かすのはクリス達と同じトリニティ・クラウンの生徒達なのだが、そこに緊張感は感じられない。

それもそのはず。

クリス達ASコース (ジャスミン達、AS整備士コース含む)を除いた他のコースの生徒達は、既に三週間前からこの船に乗艦して訓練を開始していたのだった。



「取りあえず、俺達は部屋に荷物を置いてASデッキに集合だ。全体ブリーフィング後、ハンガーにASを預ける事になってる」

「オッケー!じゃあ、女子達は私と行きましょ。 クリス、また後で!」

「おう!」







その『アクア・パッツァ』のブリッジ。

生徒達の中にあってただ一人、正規の軍人がいた。この船の艦長だ。


恰幅のいい身体に、どこか愛嬌のある顔。

信頼感は勿論だが、そこにいるだけでどことなく安心できる。そんな雰囲気を纏った男。

それはこの艦長がただ者ではない証拠だった。

それもその筈。

この新型艦の艦長に就任したのは、元『パッタイ』の艦長、ブライアン・ベンソンだった。




「艦長、入艦管理部からです。ASコース、並びに整備士コースの生徒全員の乗艦を確認したそうです」

「ならハッチは全て閉鎖だ、桟橋も外せ」

「了解」

「出港十五分前!」

「各デッキの最終チェックはどうなってる?」

「第一デッキ下部、四班からの報告だけまだです」

「おいおい、遅いぞ! 急がせろ!」

「はい!」

「コックスベース管制室より入電。北門及び街道の閉鎖を確認。港のゲートを開放するとのことです」


「よーし、『アクア・パッツァ』エンジン始動だ!」

「了解! 『アクア・パッツァ』エンジン始動!」



操舵手の復唱と同時に艦が小刻みに揺れた。

遅れて船が静かに持ち上がっていく。



「オートバランサー動作正常、システム、オールグリーン」

「第一デッキより報告、最終チェック終了しました」



それを聞いたベンソンがインターホンを静かに持ち上げた。

続けて艦内放送のスイッチを入れる。



「全員手を休めずに聞いてくれ。

本艦は間もなく出港する。

知ってのとおり目的地はエルアンジュ、海の向こうだ。

当然、途中で夜を迎える。

海の上で一夜を明かすことになる。

だからその前に一言言っておくぞ。

これは訓練であって訓練じゃない。

何せ外洋に出れば誰も助けに来てくれないんだからな。

たった一人の些細なミスで艦が航行不能になればこの船はお終いって事だ。

それを肝に命じ、各自職務に励むように。

何事も焦らず、それでいてもたつく事なく、仕事は常に正確にだ。

頼むぞ!

以上、各員の健闘を祈る!」




インターホンを置いたベンソンが、次いでブリッジを静かに見回した。

まだ若い、戦争を知らない生徒達。

嘗ての『パッタイ』のようにはいかないだろうが、それでも次の世代を担うであろう優秀な生徒達。

この生徒達を立派なランドシップ乗りに育てあげるのがベンソンの使命だった。

何しろ、今後はアクア・パッツァ級が軍の主力となるのだから。



「出港五分前!」



そんなベンソンの思いを断ち切るようにブリッジに声が響き渡った。

ベンソンがスッと窓の外を見据える。



「コックスベースに連絡、『アクア・パッツァ』は予定通りエルアンジュに向けて出港する」

「了解」

「船を出すぞ、微速前進!」

「微速前進!」



操舵者の復唱とともに『アクア・パッツァ』が滑るように動き出した。

港の岸壁を離れ、やがて基地の外壁に設置されたゲートをゆっくりと抜けていく。



「ひと、さん、まる、いち、ゲート抜けました。『アクア・パッツァ』出港」

「各システム、異常なし」

「よし、行くぞ! 面舵二十! 回頭後、舵を戻して最大船速だ。ヴィンランドの城壁に沿って東を目指す」

「了解!」



ぐんぐん加速しながら城壁に沿って進んでいく『アクア・パッツァ』。

新型なのもあるが、ファラフェル級より軽いだけに脚も速い。

おまけに左右のデッキはほぼ空で、既に慣らし運転は済んでいる。

そうして暫く進むと前方に海が見えてきた。それが徐々に近づいてくる。



「海面まであと五百……三百……百……進水!!」



直後、『アクア・パッツァ』が砂浜を横切って海面に突っ込んだ。

そのまま海の上を滑るように進んでいく。



「洋上に出ました。姿勢安定中、浸水箇所なし」

「面舵、艦首をエルアンジュに向けろ。目的地設定、エルアンジュ西岸、イースト・ゲート」

「目的地設定、イースト・ゲート、よし」

「オートクルーズに切り替えます」



そう言って船の操縦を切り替えたところで操舵者が「ふぅ……」と小さく息を吐いた。

これで当面は機械に任せておけばいい。

何せここは海の上、陸地と違って障害物はないのだ。



「よし! 皆、訓練の成果が出ているな」



ベンソンの誉め言葉にクルー一同から思わず笑みが溢れた。

少なからず緊張していたのだが、それが解れていくのを感じる。



「しかし、海の上は楽でいいですね」

「障害物なんか無いからなぁ」

「オートに任せておけば勝手に目的地に着くんだもんね」



若いだけに、一度緊張が緩むと途端に軽口が口を突いてでた。

それを嗜めるようにベンソンが口を差し挟む。



「例えオートでも警戒を怠るなよ。油断は禁物だぞ」

「でも艦長、油断って言っても海の上に敵なんかいませんよ?」


「そう思うか?」

「え……?」


「お前達は本当に、そう思ってるのか?」



真剣な表情で念を押してくるベンソンに、ブリッジの生徒達が揃って首を傾げた。

鯨の事でも言ってるのかな?

そんな顔だ。

それを見てベンソンは小さくため息をついた。

この若く、緊張感のない生徒達に、真実を告げる時がきたと悟ったのだ。



「では皆に聞こう。『アクア・パッツァ』はなぜ水陸両用で設計されたと思う? なぜファラフェルのように戦艦ではなく、強襲揚陸艦なんだ?」

「それは……」



生徒達が答えられずに口籠る。

そんなの考えた事もなかったのだ。



「それは今から5年前だ。塩州の遥か南の島で、朽ち果てた一隻の艦船が発見された」


「「え……?」」


「乗組員は全員死んで白骨化していたが、それは全長二百メートルに及ぶ、戦闘艦と呼んで差し支えない装備だったそうだ。そしてそこから導き出される答えはひとつ……この海のどこかに、船を持った勢力がいると言う事だ」


「それって……本当なんですか?」

生徒の一人が尋ねる。


「嘘を言ってどうする。だから『アクア・パッツァ』は水陸両用なんだよ」

それをベンソンが即座に肯定した。



「そしてその敵かも知れん奴等の技術力は未知数だ。ひょっとしたらヴィンランドの科学力を越えてるかも知れん。だから油断するなと言ったんだ」


「ヴィンランドより……上?」


「可能性の話だ。そして相手は海の上だけとは限らんぞ? だからレーダーからは決して目を離すな。海面には常に目を光らせろ。少しでも異常を感じたら即座に回避行動を取れ。海面からミサイルが飛び出して来るかも知れんぞ? 即座に迎撃できるよう、心構えをしっかりしておけ。それがランドシップ乗りの心掛けだ。分かったな?」


「「は、はい!」」


「よし、良い返事だ。 とは言っても……俺もこの航海で敵と遭遇するとは思ってないけどな」


「で、ですよね?」


脅しから一転、本音で語るベンソンを見て、全員が苦笑いを浮かべるのだった。







一方、その頃。


「全員、ハンガーにASは預けましたね?」


A組の面々を見回しながらシャーリーが尋ねた。

周りでは生徒達がそわそわした表情でシャーリーを見ている。

それもその筈。

整備士コースの生徒を含めた全体ブリーフィングの後、ASコースの生徒達は全員、五時までの自由時間を与えられたのだった。

周りでは既に解散したB組やC組の生徒達がガヤガヤと私語を交わしながらハンガーを後にしている。



「艦内を自由に見学してていいなんて、粋な計らいだよな」

シャーリーから数歩下がったところでアレックスが嬉しそうに呟いた。


「後部デッキに展望台があるんだって。行ってみましょ」

そして、それはオルティアも同様だった。


いや、二人だけではない。

実はシャーリーを含め、この場の殆どがランドシップ初体験だったのだ。

だから自由時間と聞いて観光気分になっているのだ。

だがそんな中にあってただ一人、クリスだけが浮かぬ顔をしていた。




「どうしたんだクリス、お前嬉しくないのか?」

そんなクリスを見てアレックスが不思議そうに尋ねた。


「あ、分かった。クリス、ランドシップ初めてじゃないんでしょ?」

「まぁ、『アイリッシュ』には何度か乗ったけど……」

「それで擦れちまってんのか?」

「いや……」



尚も腑に落ちない顔で何やら思案に耽るクリス。

それを見てアレックスとオルティアが顔を見合わせた。

クリスがどうも、何か別の心配をしていると気づいのだ。



「では、解散にしましょうか。各自、他のコースの生徒達の邪魔をしないよう……」

「待ってくれ!!」



シャーリーの言葉を遮って突然クリスが叫んだ。

シャーリーはじめ他の生徒達が驚いた顔でクリスに視線を向ける。



「どうしたんです、クリスさん」

「解散はまだだ」

「え……?」


「クリス、何か気になるのか?」

「気になると言うか……みんなはおかしいと思わないか?」

「おかしい?」

「なにが?」


「俺達、ASコースの生徒だけが自由時間ってのがさ。だってここは訓練艦で、他の生徒達は全員働いてるんだ。整備士コースの生徒達だって、さっき課題を与えられてた。なのに、何で俺達だけが特別扱いなんだ?」



「それは……」

「言われてみれば変ですね……」



クリスに言われて初めて違和感に気づいたのだろう。

全員が全員、思いに耽りだした。


五時まで自由時間という事は、五時以降は何かあるのだろう。

一番考えられるのは待機命令だ。

周りに敵なんかいないとはいえ、訓練艦である以上、万一の実戦を想定して数組の中隊が待機させられるのはありそうな事だ。

だが、それなら何で今はそれをしない?

それに思い当たったのだ。



「答えはこうだ。きっとこの後、スクランブルがある」



そう言ってクリスがニヤリと笑った。







「あれ……?」

「とうした?」

「れ、レーダーに突然反応が……」

「レーダーに反応……? 距離は?」

「二時の方角、約24000です」

「識別信号は?」

「出てません」

「出ていない?」

「はい」



それを聞いてベンソンが考え込んでしまった。

ヴィンランドはもちろん、クラックガーデンや塩州の船も識別信号は出す決まりになっていた。

それが出ていないという事は……。



「艦長、通信回線を開きますか?」

「いや、待て……それより観測気球を上げろ! 急げ!!」

「は、はい」



ベンソンの指示でブリッジから気球が放たれた。

ワイヤーを伸ばしながら急上昇していく。

暫くするとブリッジ上部のモニターに観測気球からのライブ映像が映し出された。しかし、



「いない?」



生徒達が揃って首を傾げる。

地平線の彼方まで艦船らしき物なんて何も映っていなかったのだ。


「で、でもレーダーには確かに反応が……」

そう言ってレーダー解析官が言いよどむ。



「まさか……光学迷彩?」

「え……?」

「それって……」


ベンソンの呟きに生徒達が驚く。

そんな擬装を施した船等聞いた事がなかったのだ。

これではまるで……。



「あッ!? アンノウン、加速しました! 進路を変えてこっちに向かって来ます!!」


「「ーーーッ!?」」


「総員、戦闘配置ッ!! 対艦戦用意だ!! 警報を鳴らせッ!!」


「は、はい!?」







″ビーーーッ!ビーーーッ!ビーーーッ!″



「うおっ!? 本当に来やがった!!」



突然鳴り響いた警報音に、アレックスが手に持ったコーヒーを慌てて抑えた。

クリスは既に席を立ち、オルティアもそれに寄り添うようにしてじっと艦内放送に耳を傾けている。

シャーリーも同様だ。

その周りには他の生徒達の姿もある。

クリスの指示でA組は解散することなく、全員がハンガーに隣接する休憩室にて待機していたのだ。



『二時の方角よりアンノウン接近、総員、第一種戦闘配置!! 繰り返します! これは訓練ではありません! 総員、第一種戦闘配置!!』



「行くぞッ!!」

「「おう!!」」







「応答は?」

「ありません! 警告を無視して尚も接近中、距離、22000!」

「現時刻をもってアンノウンを敵性勢力と判断する! 主砲一番、二番、砲撃準備! 後部ミサイル発射管、アシナガバチ、 左右ミサイル発射管、ミツバチ装填! 全迎撃システムも起動させろ!! 急げ!!」

「「は、はい!」」


「あッ!? 敵艦より発艦する航空兵力あり、15機!!」


「AS隊、緊急発進だ!!」


「りょ、了解! ブリッジより艦内のAS組各隊へ! 敵艦より航空兵力が多数接近中、AS隊は緊急発進! 繰り返します、艦内のASは速やかに発進願います!!」


『こちらA2中隊、いつでも行ける』

『A1中隊、同じく発進準備完了しました。指示を願います』


「え?」



管制官が驚いた顔で固まった。

何せ警報を鳴らしてからまだ一分も経っていないのだ。

そんな管制官を現実に引き戻すようにベンソンの大声が木霊した。



「ボケッとするな! 準備が終わったなら発進させろ! 急げ!!」

「はは、はい!?」







『で、電磁カタパルト射出準備完了! A2、並びにA1中隊各機は敵航空戦力の迎撃に向かわれたし』



「A201だ、了解した。これより出撃する」



既にカタパルトに跨がっていたクリスが答えると、同じく横で待機していたオルティアがこくんと頷いてきた。

その向こうにはシャーリーとアレックスの姿もある。

それに軽く頷き返すと、クリスは足を開いて発進の体勢を取った。

下から競りだしたハンドルを握ってハッチの外をキッと見据える。



「 クリステル・ロンドだ、月白、発進する」


『進路クリアー! 月白発進、どうぞ!!』



直後、カタパルト脇のシグナルが赤から青に変わった。

クリスを載せたカタパルトが一気に加速し、月白を大空へと押し出す。

ワンテンポ遅れてシャーリーの機体も発艦していく。



「オルティア・リース、FⅢーOカスタム、行くわよ!」


『FⅢーOカスタム、発進、どうぞ!』




次々と発艦していくA組のAS隊。

それを見て、


「くっそ! ロンドの奴、もう出やがったのか!? おい、急げ!!」


遅れてハンガーに駆け込んだガルティエが悔しそうに叫んだ。







「A2、A1各中隊、敵との接触予定地点まで約五分!」

「艦長、C1、B2中隊が発艦許可を求めてます」

「許可する! 先発するAS隊を抜けて来る奴がいるかも知れん。防衛ラインを築かせろ! 残りは艦内待機だ!」

「はい!」

「敵艦、13000まで接……敵艦、ミサイル発射!! 四発……いえ、十六……更に分裂!? 飽和攻撃です!!!」

「左右ミサイル発射管、ミツバチ発射だ!」

「あッ!? み、ミツバチ装填!」

「まだ終わってないのか!!」

「す、すみません」

「着弾まで二十秒!」

「ちっ!? 全銃座、迎撃開始!!」

「げ、迎撃って……ミサイルが視認できない!」

「レーダーには映るんだ、早く撃て!!」

「ま、待ってください……今……」



「ちゃ、着弾まで十秒ッ!!」



「撃てよ! 早く!!」

「お、おい……」

「うそだろ……?」


「あと五秒ッ!!」


「いやぁーーーーーーッ!?」

「ーーーッ!?」


パニックになった通信士が泣き叫んだ瞬間、操舵士が、レーダー解析官が、AS管制官が、火器管制官までもが反射的に頭を抱えた。

直後、



″ピーーーーーーーーーーーーッ!!″



まるでゲームオーバーを知らせるかのようなブザーがブリッジに鳴り響いた。



「…………え?」

「……あれ?」

「なんで?」


皆、頭を上げて訳が分からないといった表情を浮かべている。

それを見て、ベンソンが「ふぅ……」と小さくため息をついた。

次いで苦笑いを浮かべる。

その時、



「おいおい、お前等……本当に訓練積んでんのか?」



呆れた声がブリッジに響き渡った。

ブリッジの扉がピッ!と開き、正規の軍服を着た男が一人入室してきたのだ。

そして困惑する生徒達を横目に司令官専用の席にドカッ!と腰かける。



「あ、あの……」


「ああ、紹介しよう。今回は新型艦と新兵器の運用テストも兼ねている関係で、特別に司令官が乗艦される。アルザック・バカラ准将だ」


「じゅ、准将!?」

准将と聞いたブリッジの生徒達が慌てて直立し、一斉に敬礼した。だが、



「アホか!! まだ戦闘配置中だろうが! 敬礼なんかしてんじゃねぇ!! とっとと座れ!!」

「「はは、はい!?」」



バカラの怒声を受けて慌てて着座する生徒達。

それ等を一瞥してからバカラが隣に座るベンソンにくいっと視線を向けた。



「これで優等生ってか? 実戦なら一発も撃てずにお陀仏だぞ。 お前の評価、ちょっと甘いんじゃねぇのか?」

「はは……面目ありません、司令」



呆れるバカラにベンソンが苦笑いを浮かべる。

久しぶりのやり取りに、つい頬が緩んでしまったのだ。その時、



『こちらA201、接触予定地点に到着したが敵影が見当たらない。指示を』


という通信がブリッジに入った。

その声を聞いて、バカラが「ふん」と小さく笑う。



「ったく、白々しいんだよ。……おい、通信回線をこっちに寄越せ!」

「は、はい!?」


慌てて回線を切り替える通信士を横目にバカラがシートに取り付けられた受話器を手に取った。



「おい、クリス!」


『あれ……? ひょっとして、バカラ司令ですか?』


「そのバカラ司令様だよ。ったく、な~にが敵が見えませんだ。出撃前から訓練だって分かってたろうが。下手な芝居してねぇで、とっとと帰ってこい」



『……了解。 A2、A1中隊、帰投します』



クリスの返信を聞いたバカラはふんと鼻息を漏らすと、受話器を戻し、肘掛けに凭れかかって足を組み、ジロリと窓の外を見た。

クリスがいるであろう海の彼方を……。



「あの野郎、笑ってやがったな……」

「懐かしかったのでは?」

「な訳あるか、俺が仕組んだと知って納得したんだよ」

「 まぁ、完全に読まれてましたしね」

「ふん、可愛げねぇ」

「頼りになるではなく?」

「まだ生徒だろうが、あれじゃ苛め甲斐がねぇよ」

「はは……」


ついベンソンが笑う。

口では可愛げないとか言いながら、バカラの口元が緩んでいたのだ。


実はバカラとクリスは(ベンソンも含めてだが)面識があった。

過去に二回、キングバルト軍との合同演習にバカラがヴィンランド軍を率いて参加した際、元アムの上官という事でロンド家に宿泊した事があったのだ。

その時、クリスは妙にバカラに懐いていた。

それを思い出してバカラもつい口元が緩んでしまったのだろう。




「おい、艦内放送だ! サプライズ訓練は終了。お前等は向こうに着いたらこってり絞ってやるから覚悟しとけ」


「「は、はい!?」」


「それと、出撃すら出来なかった間抜けはどこの中隊だ?」

「えーと……B1、それとC2中隊です」

「そいつ等は第一デッキの甲板に出て腕立、腹筋、スクワット、それとシャトルランをそれぞれ五百回だ。遅れて出撃した奴等はランニングマシン十キロで勘弁してやる。 五時までに終わらせねぇと夕飯は抜きだって言っとけ!」

「りょ、了解!」

「司令」

「あん?」

「クリス達、A組はどうしますので?」

「 んなの……文句のつけようがねぇだろ。五時まで自由時間にでもさせとけ」



そう言ってぶっきらぼうに答えるバカラの顔はどこか嬉しそうに見えた。







ヴィンランドの南に位置する街、塩州から遥か500キロ東の沖合いに浮かぶ島、エルアンジュ。

西の西寧府と北淋、そして北のリンデンパークと同じく、外敵の備えとしての意味合いから開発が始まったのが約十年前。

初めは島の南に街を築いて軍を駐屯させていたのだが、五年前から島の西側を新たに整備し、一部海岸を埋め立てて新市街地とし、そこに本格的な基地を建設した。

それがイースト・ゲート・ベース。

その位置的な関係から、ここにはヴィンランド軍と塩州軍が共同で駐屯していた。



そのイースト・ゲート。

天候にも恵まれ、風もない穏やかな波の中、ヴィンランドを出航した『アクア・パッツァ』は夜通し航海し、無事イースト・ゲートへと到着していた。





「減速を開始しろ、岸壁にぶつけるなよ」

「了解、減速開始します」

「ガイドビーコン確認、 七番埠頭に入りました。着岸まで300メートル」

「逆制動」

「逆制動、よし」

「着岸まで100メートル」

「まもなく停船します。…………停船!」

「よーし、機関停止だ。船を繋留しろ。 それが済んだら第一デッキを開けて物資の搬出だ」

「了解」



「艦内各員へ通達、イースト・ゲートに到着しました。繁留次第、第一デッキを開放しますので、担当者はコンテナの搬出準備願います」



「しっかし、まぁ……港は空いてんのにずいぶん端っこに止めさせやがったな」

「まぁ、あっちにしたら何の役にも立たない厄介者なんでしょう」

「ふん」

「それより司令、挨拶はどうされます? 今の基地司令はベルトリーニ大佐ですが?」

「あん?こんな端っこに止めさせられた上にこっちから出向けってか?必要ならあっちが来んだろ」

「司令が乗っておられる事は知らせてありますので?」

「いや」

「なら来ないのでは?」

「ふん、どうせ荷物を下ろしたらそのまま出航すんだ。いらねぇよ。おめぇが適当にやっとけ」

「はは……了解しました」







イースト・ゲート内にある応接室。

ソファーに腰かけていたベンソンが立ち上がってスッと敬礼した。

扉を開けて基地司令官のベルトリーニが入室してきたのだ。



「待たせたな、中佐」


ベンソンを一瞥してソファーに腰かけるベルトリーニ。

それと向かい合うようにしてベンソンも再び腰を下ろした。



「早速ですが、これがAS隊の名簿になります」

「うむ」

「いちおう確認ですが、AS隊は十日間、『アクア・パッツァ』と一緒に洋上訓練を行います。基地で預かっていただくのは、その後という事で」

「分かっている。総隊長にもそう告知してある。訓練プログラムも既に考えているはずだ」

「恐縮です」

「それより……」

「はい。これが今回テストする兵器の詳細データです」



そう言ってベンソンが一冊のファイルを差し出した。

それを受け取ったベルトリーニがペラリとページを捲る。

そこにはニ発のミサイルを搭載した車両が掲載されていた。


「……超音速巡航ミサイルか」

「コードネームは『ストライク・ビー』。一車両にニ発。発射後は海面スレスレを飛行しますので発見はもちろん、迎撃もほぼ不可能。六百年前の大戦でも有効だった兵器です」

「今回の最終テストが終われば実戦配備か。これで海側の守りは鉄壁になる訳だな」

「テスト自体はこちらの技術者が行いますが、受け渡し後の運用を考えて……」

「分かってる。専任者は決めてある。声は掛けてあるので、このまま連れていきたまえ」

「承知しました。それと補給物資の件ですが」

「あぁ、三番倉庫に運び込んでおけ」

「申し訳ありませんが、それはそちらでお願いします」

「なに?」

「本艦は輸送艦ではありません。乗っているのは生徒な上にフォークリフトも四台しかありませんので」

「岸に上げて放置か?あまりに無責任ではないかな?」

「ヴィンランドから受けた命令はイースト・ゲートまでの運搬です。もう少し倉庫に近い埠頭でしたら便宜も図ったのですが、あそこでは……」

「ふん、嫌味か?」

「そう取って貰っても構いません。では、時間もありますので、私はこれで……」

「ああ、待て」

「何か?」

「一応、警告しておく。ヴィンランドの人間は夜の旧市街には近づくな」

「何かありますので?」

「あっちは猿族のテリトリーだ」

「テリトリー?」

「和平条約だ何だと言っても、猿共は未だに好戦的だ」

「……分かりました、生徒達には伝えておきます。それより大佐……」

「何だ?」

「猿族ではなく、塩州の市民です。ではこれで」



パタン



「……ふん」


ベンソンの指摘を鼻で笑いながら机に置かれたAS隊の名簿を手に取るベルトリーニ。

そして不機嫌そうな顔でパラパラとページを捲りだした。



「平和ボケしおって。あんな奴等がチヤホヤするから、ひょっ子共が調子に乗るんだ。ここではただの新兵だということを思い知らせて……」



そこまで呟いた時、ベルトリーニの手がピタリと止まった。

驚いた顔で眼を見開き、次いで親の敵を見るような眼でページを睨みつける。掲載された内容に目を通しているのだ。

そしておもむろに手を伸ばすと、テーブルに置かれたインターホンの通話ボタンを押した。



「私だ。モーガンを呼べ」

「はっ!」



名簿をテーブルに放り、ソファーに凭れかかって虚空を睨むベルトリーニ。

そのベルトリーニの顔が、今度は獰猛な顔に変わった。



「ツインズマールのロンドか……面白くなりそうだ」








「なぁんだ……じゃあ、上陸はできないのね」



デッキから次々と運び出されるコンテナを眺めながらオルティアが呟いた。

つまんないの。

そんな顔だ。



「荷物を下ろすのに寄っただけみたいですからね」

「洋上訓練が終わるまでだから、あと十日の辛抱だな」

「十日かぁ……まぁ、船は船で楽しいからいっか」

「だな」

「ですね」

「……ところで、アレックス」

「なんだ?」

「エルアンジュってさ、リゾートなんだろ? ツインズマールで綺麗な海の写真を見た事あるんだけど……」

「まぁ、一部の市民や軍のお偉いさんが別荘持ってるって噂は聞いたことあるな……」

「って事はさ、シャーリーやオルティアは持ってるのか?」

「いいえ」

「持ってない。だって……」

「おいそれとは来れないですものね」



二人が苦笑いを浮かべる。

ここの物流は塩州が主で、ヴィンランドからの定期便はない。

いちおう北にある半島の先端にヴィンランド主導で街を建設中だが、定期便が運行するのは数年先の話しだろう。



「そっか……」

「なんで? それがどうかしたの、クリス」

「別に……聞いてみただけだよ」



そう言って海へと視線を移すクリス。

その拗ねたような横顔を見てオルティアはピンッ!ときた。


「ふふ…… クリス、山育ちだから海が珍しいのね」

「まぁ……ちょっと楽しみにはしてたけど……」


「ちょっと~?(にまにま)」

「……ちょっとだ(ふい)」



そう言ってオルティアの視線から逃れるように視線を反らす。

それを見てシャーリーがクスッと笑った。



「洋上訓練の後、二日間の休暇があるそうですから、その時みんなでどっかに行きましょう」



それを聞いた瞬間、嬉しさを堪えきれなくなったのだろう。クリスの頬がふっと緩んだのを三人は見逃さないのだった。








ゴボゴボゴボ………。



僅かに差し込む光が薄暗い海底を優しく照らしだしていた。

海の色はどこまでも碧く、透明で、海面を見上げればキラキラと太陽が輝いて幻想的な雰囲気を醸しだしている。

とは言え、周りを見渡しても色鮮やかな珊瑚や熱帯魚は見当たらない。

見えるのはゴツゴツとした岩肌と砂、そして海藻だけ。


そんな海の中にASスーツを纏い、水中メガネと酸素ボンベを背負ったクリスの姿があった。

そのすぐ横にはオルティアが、そして少し離れたところにはA2中隊で小隊を組むカイ・リッツ、ソフィー・ポーレットの姿もある。


彼等は別に観光がてらスキューバダイビングを楽しんでいる訳ではない。

これは歴とした訓練だった。

その証拠にクリスとオルティア、リッツとポーレットがペアになって、それぞれ小型潜水挺に掴まり移動中だった。


クリスがちらりと腕の時計を見る。

『アクア・パッツァ』を出発して間もなく一時間が経過しようとしていた。



〈そろそろか……?〉



そんな時、スッと身を寄せたオルティアがクリスの肩をちょんと叩いて左手を指差した。

海ガメが優雅に游いでいたのだ。

その向こうには魚達が群れを成している。

オルティアが満面の笑顔で振り向いた。

それを見てクリスがふっと笑う。

オルティアが完全に観光気分だったのだ。

まぁ、クリスも半分(以上?)は浮かれ気分だが……。



そうこうして暫く進むと、前方に小型船が見えてきた。

目印なのだろう、赤いシグナルが海中でチカチカと点滅している。

後方を進むリッツとポーレットに合図を送ると二人が小さく頷いた。

目的地に到着した四人は船尾に向かってゆっくりと上昇していくのだった。




「ぷはぁ!! 到着~!!」

オルティアが海面に顔を出すなり叫んだ。


「お疲れさん!」

そんなオルティアに船舶コースの生徒がスッと手を伸ばす。

タラップに足を掛けながらオルティアがその手を掴むと、生徒がぐっと引き上げてくれた。

続いてポーレットが船上に上がる。

その横でクリスとリッツは小型潜水艇の回収を手伝うのだった。





「プールでやったダイビングはこの為だったのね」


髪止めのゴムを指先に引っ掛けながら髪の毛の水気を絞るオルティア。

その横にクリスが腰掛けると、オルティアが「はい!」とタオルを手渡してくれた。



「ゴムボートで移動。その後は今の小型艇使って海中から侵入し上陸、隠密行動するもよし、AS纏って暴れるもよしって事か。『アクア・パッツァ』配備のAS隊ならではの訓練だな」


次いで差し出されたドリンクのストローを咥えながらクリスが今の訓練を振り返ると、


「こんな訓練だったら何回でもいいのにね~」


と、ポーレットが笑いながら答えた。

視線の先には抜けるような青空と白い雲、そしてキラキラと輝く碧い水面がどこまでも広がっている。



「カリキュラム上ではもう一回あるけど……」

「でも、次は夜間らしいわよ?」

「夜かぁ……やっぱり海中は真っ暗で怖いのかな?」

「そりゃあ、夜なんだもん。真っ暗だし怖いんじゃない? ……って、なに?」



オルティアが不思議そうに首を傾げた。

ポーレットが突然、ニマニマと笑ったのだ。



「ふふん……リッツ、次は私達が先行しましょうか」

「だな。暗闇を良いことにナンかイチャイチャしたいだろうし」



「するか!!」

「しないわよ!!」



クリスとオルティアが真っ赤になって否定した。

どうやらクラス公認の二人はそんな目で見られていたらしい。



「おーい! 楽しくお喋りもいいけど、『アクア・パッツァ』に帰るまでが計測タイムだぞ~!」

「おっと、ヤバいヤバい!」



船舶コースの生徒に指摘されてクリスが慌てて立ち上がる。

すっかり和んでしまっていた。



「それじゃあ、みんな……行きましょ!」




笑顔のオルティアがスッと腕を上げると、そこに光り輝く魔方陣が広がった。

それが上から下へと高速で移動すると、後にはASを纏ったオルティアが。

続いてクリスが、そしてリッツとポーレットも次々とASを纏っていく。



「それじゃ!」

クリスが片手を上げて挨拶すると、


「気をつけてな」

と、船舶コースの生徒達も笑顔で返してくれた。


クリスの月白が静かに上昇していく。

それにオルティア達も続く。

小型船の生徒達が見守る中、クリスを先頭にA2第一小隊は『アクア・パッツァ』へと飛び立って行くのだった。







そんなクリス達の向かう先、『アクア・パッツァ』はというと、太陽光パネルを空いっぱいに広げ、波間に静かに漂っていた。

別にクリス達を呆然と待ってる訳ではない。

その証拠に左舷後部デッキでは、ASスーツを纏った他のクラスの生徒達が取っ手の付いたマグネットを舷側に張り付け、デッキ上部までクライミングする訓練を行っていた。

例の小型潜水艇で敵船舶に接近し、秘密裏に制圧する為のものだった。




その『アクア・パッツァ』の艦内に突然警報音が鳴り響いた。


『これより『ストライク・ビー』の発射実験を行います。第二デッキ、ハッチ開放します。デッキクルーは注意してください』


と注意喚起の放送が流れ、次いで第二デッキのハッチがゆっくりと上方に開いていく。



「ターゲットの位置は?」

デッキが開ききるとベンソンが静かに尋ねた。


「一時の方角、凡そ80キロの距離を東に向けて航行中」

「整備班より連絡、『ストライク・ビー』、所定の位置に移動しました。車両の固定を確認、ターゲットの情報入力を開始します」

「ターゲット艦のスタッフは? 避難は終わってるな?」

「はい。現在、オートにて航行中。サポート艦はその後方10キロです」

「『ストライク・ビー』、ターゲットの情報入力終了。いつでも行けます」



その報告にベンソンが静かに頷いた。

そして横に座るバカラを振り向く。



「いいだろう。許可すんから、ぶっ放せ」

「はっ!『 クリケット(サポート艦)』に通達、これよりテストを開始する」

「了解! 『アクア・パッツァ』より『クリケット』へ、これよりテストを開始します」


『こちら『クリケット』、了解』


「整備班に連絡、『ストライク・ビー』の発射を許可する」

『了解、『ストライク・ビー』、発射!』


直後、右舷第二デッキから白い尾を引いて一発のミサイルが放たれた。

それは海面スレスレの高度を維持しながら見る見る加速し、あっという間に水平線の向こうに消えていく。


バカラやベンソンを始め、ブリッジの全員が固唾を飲んで上部のモニターを見上げた。

サポート船が打ち上げた観測気球からのライブ映像を……フロートを装着した一隻の護衛艦を静かに注視する。

その護衛艦が……突然、炎を吐いて爆発した。

飛来した『ストライク・ビー』が舷側を突き破り、艦内で爆発して反対側の装甲を吹き飛ばしたのだ。


「め、命中! ターゲット艦、真っ二つになって沈没していきます」

「すごい……」

「あんなの……迎撃しようがない」


「司令……」

「おーし、いいだろう。テストは終わりだ。整備の連中には『ストライク・ビー』をしっかり磨いとけって伝えとけ」

「はい!」


「さ、て、と……後は『アクア・パッツァ』の性能テストやって、AS隊のノルマこなしゃあ、お終いか」

「出来れば砲撃訓練だけでなく、対艦戦も経験させておきたいところですが……」

「海でドンパチってか? 間違って沈めちまって「すんません」じゃすまねぇんだ。そこは我慢するしかねぇな。そんじゃ、ま……今日は部屋にいる。後は頼んだぞ」


「はっ!」


ひらひらと手を振りながらブリッジを後にするバカラにベンソン始めクルー一同が敬礼でもって答える。

イースト・ゲートを出航して五日。

海上訓練も残り半分の日程を残すのみとなっていた。









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