第33話「高村のバンドとは?!」
部屋に俺の弾くギターが、大音量で鳴る。
「どうよ? このフレーズ! これが、俺たちのオリジナルソングなのよ」
俺は自慢げにそう声を荒げて、高村に話す。
「……いや、おまえなあ」
「それで、ここにジャラーン! 俺とシゲのギターが噛み合うんだ!」
なにか言いたそうにする高村に構わず、俺は喋り続けた。
すると、高村は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「なんで、おまえは俺の家に来てギターを弾いてんだ! しかも爆音で弾きやがって、近所迷惑になるだろう!」
「硬いこと言うなよー、同じロックバンドマンじゃないか!」
怒りを露わにしている高村に、俺はあっけらかんとして話す。
いきつけの楽器屋も休みだし、シゲたちとは予定が合わない。そんな時に現れた高村の家に上り込めたのはラッキーだった。
こいつにはいつか必ず俺たちのバンドを、再評価してもらわないといけない。
こうして、本人の前でギターを披露するには好都合だった。
今まさに、再評価されるチャンスだ。
「そんな説教よりもさ、俺のギターはどうだ?」
高村の話を聞かずに、俺はさっそく感想を求めた。
「あー、まあ悪くないじゃないか?」
「この野郎! きちんと聴いてたのか? もっといい言い方があるだろうが!」
想像していたのと違って、あまりにも適当な感想。
俺は納得がいかずに、ギターをバットのように構える。
「こらこら! ギターをそんな持ち方をするなよ、話は最後まで聞け」
そう言って高村は俺をなだめた後、話を続ける。
「ギターだけ聴いて、それだけですごい曲かはわからんだろ? 今はおまえだけが弾いているんだしよ」
「……まあ、そうだな」
「けど、たしかにフレーズはいいと思うがな。 そう言う意味では悪くはない」
高村はそう話すと、部屋にあったギターを持つ。
「しかし、俺ならそのフレーズはこうやって弾くかな。おまえはピックのアップダウンがめちゃくちゃだ」
ギターを持つや、俺が弾いたギターのフレーズを高村は弾き出した。
「え? 聴いただけで弾けんのかよ」
「……当たり前だろ。俺はおまえより長くギターをやってるし、バンド歴も長いしな」
そう言って、易々と俺が弾いて聴かせた曲のフレーズを完璧に再現する。
ただ同じように弾くのではなく、ところどころアレンジまだ加えていた。
「くそ! 納得がいかねーぜ、俺が弾くよりいいフレーズにしやがって」
「ほら、ぐだぐた言ってないでおまえも別のパートを弾け」
高村に言われ、俺はギターを構え直してシゲのパートを弾く。
ーージャラランー、ジャンジャン!
二つのギターから、それぞれの音色が部屋に鳴り響く。
セッションというやつで、次第に弾くのが楽しくなっていった。
心地よい気分で、俺のギターはより弾む。
やはり誰かと一緒に弾くのは、こんなにもいいものだと思いながら、俺たちはしばらくギターを弾いた。
「ああああ! 今すぐにでも、ライブがやりてえぇぇ!」
弾き終えた後、ライブをやりたい気持ちを吐露した。
もっと曲をたくさん弾いたり、オリジナルソングを増やして披露する。
考えはいろいろな方向へと広がるも、それがすぐにできないことが悔しい。
「焦るな焦るな、そんなバンドのライブなんて簡単にできないものさ」
「……そういえばさ、高村さんのバンドってどんなライブをやんの?」
高村がバンドを組んでいることは、前から知っている。
しかし、どんな曲をやるのか。どういったステージのパフォーマンスをやるのかまではわからなかった。
「俺たちのバンドか……うーむ」
高村はなにか考え込むように、腕を組みながら首を傾げる。
しばらく悩んだ後、一言。
「すげえライブ……だな」
「いや、意味わかんねーよ! 具体的に説明しろよ」
曖昧な一言に、俺はそうツッコむ。
「説明するのは難しい。だが、とにかくすごいのだ!」
そう話すと、高村はギターをスタンドに戻して立ち上がる。
「そろそろ俺は仕事に戻る! おまえもさっさと部屋から出るんだ、仕事の邪魔だ」
「おっ、おい! まだ答えを聞いてねえだろ」
そんな俺を高村は強引に部屋から追い出さそうとする。
「仙道、俺たちのバンドがどんなライブをやるか気になってんのか?」
部屋の前まで出されると、いきなり俺はそう尋ねられる。
「まあ一応な、だから参考までに聞いておこうって……」
俺が最後まで言い切る前に、高村はなにかの紙を差し出す。見るとチケットのような物で、五枚ほど手に持っていた。
「来月の俺たちがやるライブチケットだ。 ライブを見れば、どういうものかわかるだろう」
チケットには、高村たちのバンド名と日付、時間が書かれている。
「ワンマンライブだよ、この日は俺たちにとって久しぶりだからな」
「おおお……ワンマンか」
バンドマンなら一度は憧れる、ワンマンライブ。一人組のみがやるライブで、それこそ実力と人気がなければ簡単にはできないイベントだ。
「目的はどうあれ、違うバンドのライブを見るのも勉強になるぞ」
「なるほど……それは、たしかにそうだな」
自分たちのバンド以外にライブを見たことがあるのは、かなでたちのみだ。
高村の中堅バンドがどれほどのものか、気になっていただけにいい機会かも知れない。
「よし! シゲたちを誘って、見に行ってやるぜ!」
高村の家から出て、俺はまだチケットを握りしめていた。
ただ練習するだけや、オリジナルソングを作るだけがバンドの成長ではない。
誰かのライブを見ることも、時には大切なことだと高村は言っていた。
「いいライブができたからって、それを自慢しているようじゃあ、まだまだな」
今日の自分の行動に、俺は苦笑いをする。
「すげえライブか……どんなライブなんだろうな」
そう口にして、チケットをポケットに入れる。
ーー高村のライブが待ち遠しい。
そんな気持ちになりながら、俺は自宅へと帰っていった。




