表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
1. 宇宙(ソラ)の扉
5/153

#5 嫌な記憶にはにおいも残る

挿絵(By みてみん)


 防衛局司令の任命式。


 ルクフェネは蒼穹軍(ケール)の階級でいえば最下級の雀鷹士(グルレーシュ)だ。なにしろ入隊したのかほんの数日前のことだから。


 防衛局司令は職位であって職位と階級は連動しないから、雀鷹士(グルレーシュ)が司令を務めてもいいし、制度上もなんら問題ない。ただ実際にあり得るのかとなれば、話は別だ。そもそも16歳で入隊することが異例中の異例、前代未聞、そしてたぶん今後もありえない。


 けれども、特例でも例外でもなく正当に実力で得たもの——なのだが、それをそのままに受け取ってもらえるとは限らない。任命式に渦巻く感情は、ルクフェネの存在を肯定していなかった。嫌な記憶には臭気(におい)も残る——。


 計測終了を知らせる音が聞こえて、ルクフェネはもの思いから呼び覚まされた。


「来たまえ」


「はい」


 圭は計測器を外してデスクの前に立った。ルクフェネも立ち上がる。


「判定結果は問題なし。すでに試験にも合格していることから、セーグフレード領シモウサ総督府、防衛局司令ルクフェネ・ティッセの名において、貴君すなわち相馬圭を本防衛局補佐として任用する。職務開始は即日。ただし三か月間は試用期間となることに留意されたい。貴君が本防衛局において、いかんなくその能力を発揮することを期待する。以上だ」


「ありがとうございます! ティッセ司令のお役に立てるように精進します!」


「——ああ、それなんだけど」ルクフェネは急に言葉を崩した。「もうルクフェネでいいし敬語で話す必要もないから。こっちも普通に話すし」


 ()()()口調には「なめられまい」という理由しかなく、もう面倒になっていた。


「はあ、でも……」


「その代わり! 小さな防衛局で、しかも司令が年下だからって不安にならないように!」


「そんなことは——」


 と、ルクフェネの手首に装着された通信機から警告音が鳴り響いた。無感動な声が続く。


「侵入者ヲ検知! 侵入者ヲ検知! タダチニ行動ヲ開始セヨ! 繰リ返ス——」


 ルクフェネは表情を引き締めた。デスクの引き出しから何かを取り出して圭に投げる。


「さっそくだけど残業、ついてきて! それスペアの通信機! 新しいのが届くまで貸してあげる!」


「はい!」


 ルクフェネは階段を駆け降りていく。圭もあとを追う。


 通信機はゴーグル型だった。スペアというか、おそらく本来はルクフェネが手首に装着していたものと組み合わせて使用するものなのだろう。装着すれば勝手に変形して顔の形になじむ。そしてさらに変形して右耳を覆えば、ルクフェネの声が聞こえた。


「聞こえる!?」


「聞こえます!」


「よかった! あとは画面に情報出るから……ああっ!」


「ど、どうしましたっ!?」


「ご、ごめん、それ、まだローカライズしてない!」


「あ、セーグフレード語ってことですよね!? 大丈夫ですよ、()()()()()()()()!」


 ゴーグルにはルクフェネ視点の映像とともに、位置情報や数値データがセーグフレードの文字で表示されている。圭はそれを平然と読み上げた。


(原セヴァ語が読めるのならそうだろうけど……。いったい何者なの!?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ