表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
1. 宇宙(ソラ)の扉
1/153

#1 物語のはじまり

挿絵(By みてみん)


1. ()()の扉


「ま、こんなものね」


 ルクフェネ・ティッセは防衛局のオフィスを見渡した。


 防衛局とはいっても所属するのはいまのところ彼女一人で、がらんとした室内にはデスクと椅子、そして来客用のソファとローテーブルがあるだけだった。それでもそんな小さなオフィスにルクフェネは満足していた。


(ようやくここまで来れた……)


 彼女はいつでも微笑んでいるような、それでいて何かにずっと怒っているような不思議な印象を与える少女だ。


 いつでも微笑んでいるように感じるのは柔らかな(くち)(もと)と優しい(とき)()色の瞳がそうさせるからで、ずっと怒っているように見えるのは考えごとをするとつい眉を(しか)める癖があるからだろう。


 少し癖のある淡い桃色の髪は肩の辺りまで伸びていた。眉間の(しわ)を隠したいのか前髪は厚めだ。


(新しい〝()()の扉〟はまだ安定していない。ここは辺境だから侵入者はそう多くないだろうし、一人勤務でもやっていける)


 セーグフレード。


 それはもともと交易の種族セヴァが(おこ)した小国家、というより同業者組合に過ぎず、そのころはいくつかの星系間を移動しながら(あきな)うくらいだった。ところが、あるとき偶然発見した空間転移をともなう航法によって勢力を爆発的に拡大し、いまや数多(あまた)の銀河系をまたぐ巨大国家になっている。


 正式には、

  「花咲く国、風薫る故郷(ふるさと)

   セグレンデの忘れ形見、

   セグレンデの高く(ほこ)らかな(ふた)(みみ)に触れる息吹、

   (みや)びやかであり、(つつ)ましやかで、

   紡いだ(こと)()をあまねく()()へ広げる、

   セグレンデが水の神コアナに仰せつけ、お創りになった国、

   セーグフレード」という。


 そのセーグフレードに新たな領土が加わった。彼女は誕生日を迎えたばかりの16歳だったが、その防衛局の司令に任命されて赴任してきたのだ。新領土の名前は〝シモウサ〟という。それは一帯の古名だ。


(一人のほうがずっと動きやすい。誰かに足を引っ張られることもないし、できないことはあってもそれは自分のせいなんだから納得できる。あとはわたし自身の力で乗り越えていけばいいだけ。いままでもそうやってきたし、これからも同じこと)


 制服は雪色の縁取りがある深い夜の色のツーピースに、鮮やかではあるものの、ごく暗いワインレッドのケープを合わせたものだ。スカートには動きやすいように小さくスリットが入っている。


 ルクフェネはデスクの上の帽子を手に取った。制服と同じように深い夜の色の帽子だ。両側には大きな羽飾りが付いている。


 ——と、ドアをノックする音が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ