第63話 side 美川彩②
それではお楽しみください(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
私は総合受付へ急いで向かった。
夜遅いこともあり総合受付は閉まっており、椅子に数人座っている程度だった。その中に早乙女さんと長友さんがいた。
『あ、美川さん……』
『こんばんは、早乙女さんと長友さん。康太君は今どうなってるの?』
『今は治療中だそうです。ただ救急車で搬送されている時にはそこまで酷い病気では無さそうで命には別状は無いみたいです。』
『良かった…… ありがとうございます2人とも……』
『いえ、当然の事です。それと治療が終わった後3人で話したい事がありますのでお時間頂けますか?』
早乙女さんは真っ直ぐ私を見つめてそう言ってきた。多分偽装結婚のことだろう。真摯に答えなければならない。
『ええ、大丈夫ですよ。とりあえず治療が終わるのを待ちましょうか。』
それから30分ほどで治療が終わったみたいだった。看護師の方が来て伝えてくれた。ここ1〜2週間仕事が忙しかった事による過労らしい。私がちゃんと見ていればよかった……
そして暫くは入院が必要らしい。まあ意識が無くなったわけだから当然だろう……
『入院の部屋は1人部屋に入れてください。それともう会う事は出来ますか?』
『わかりました、1人部屋へ移動させますね。それと会う事自体は可能ですが、まだ意識はないです。』
『ありがとうございます。』
看護師にお礼を伝え、私達は本題を話す為に康太君がいる部屋へ移動した。
康太君は点滴が繋がれていて、少し痛々しい姿ではあったが命があるだけ本当によかった。そして治療は終わったみたいだけど、まだ暫くは寝ているみたいだ。
『それで話って言うのは何かしら?』
『話は偽装結婚についてです。もう児島君からお話しされているとは思いますが。』
『ええ、1ヶ月前に康太君から説明されたわよ。この事を他の人に話さないでくれてありがとう……』
『いえ、そんな……。児島君を悲しませたくないですし。』
『長友さんにもお礼を言うわ、本当にありがとう……』
『私も同じ気持ちなので……』
『それで言いたい事は私達2人とも児島君の事が好きなんです。これを児島君が許可すればですが付き合える事を認めて欲しくて……』
『え……どう言う事かしら?』
『私達は児島君の事がお互い好きです。この事は知ってると思いますが、今はアプローチするだけとなっています。』
『ええ、それはそうね……』
『でも、偽装結婚している美川さんの許可さえとれればですが2人とも児島君と付き合いたいと思ってます。そしてよければ偽装結婚の後に結婚したいって。』
『……』
『もちろん偽装結婚しているのでマスコミにはバレないようにはします。なので許可してくれませんか……?』
私は言葉が出なかった。早乙女さんと長友さんが康太君の事が好きなのは知っていた。それでそれぞれアプローチしている事も。
でも付き合うってなるとそれは認められない…… 何で何だろう。私が雄大さんが本当に好きなら別に認めても良いと思う、でも認められない。
ああ、私は康太君の事がいつの間にか好きになってたんだ…… 他の人のものになって欲しくないんだ……
今日の自分の行動や気持ちにも納得がいった。雄大さんと話していても楽しくないのは、好きじゃないからだ。
康太君が倒れて雄大さんとの食事を切り上げて急いで向かったのも、康太君が好きだからだ。
何でこの気持ちに今まで気がつかなかったんだろう……全部愛や美玲の言う通りになってるわね……
私は意を決して2人に本当の事を話した。
『申し訳ないけれど認められないわ。だって私も康太君の事好きだから……』
『『えっ……』』
『偽装結婚ではあるけれど、その生活の間に私は康太君の事を好きになってしまったのよ。』
『それは……本当ですか?』
『嘘なんかつかないわよ…… 現に今急いでここに向かったわけじゃない……』
『そうですよね……』
『ただ、偽装結婚の立場にも甘えているのは良くないとは思う。それに私は偽装結婚を頼んだ立場だから、自分の気持ちを康太君に伝えるのはおこがましいと思う。康太君の事だから私を優先してしまうと思う。だからこの気持ちを伝えるのは偽装結婚が終わった後にしたい…… だから偽装結婚が終わってから3人でフェアな勝負をするって訳じゃダメかしら……?』
早乙女さんと長友さんは無言でお互いを見つめあっていた。そして意を決したような顔で長友さんが話始めた。
『わかりました…… 私はそれを飲みたいと思います。今まで3年間待ってて1年待てないわけではないですから。それに今は児島さんの隣で仕事が出来て、また時々飲みにもいけているわけですから前よりも進歩しています。
また今美川さんに気持ちを伝えられると勝てるとも思いませんので…… なのでこの残り9ヶ月程度で私を選んでもらえるように頑張ります。』
早乙女さんもそれを理解したような様子で話し始めた。
『私もそれで構いません。私も同棲している中で気持ちを伝えられるのは不利だと思います。だから来年の4月から3人フェアで勝負しましょう。
それじゃあそろそろ児島君も目を覚ますと思いますので私達は家に帰ります。美川さんが今は妻なので後はよろしくお願いします。』
『お気遣いありがとう……』
そうして2人は部屋を出て行った。私と康太君の2人だけの空間となった。
とりあえず暫くは入院する康太君の面倒を見たいので、事務所に連絡して1週間の休暇を急遽貰うことになった。
撮影もそれなりに終わっている為問題は無いみたいだ。ただ休暇明けからは少しスケジュールがキツくなるだろうし、共演者にも謝りにいかなければならない。
そんな大変な事よりも私は康太君の側にいる方が大事だ。
『ごめんね、康太君。こんなわがままな私で。暫くはこの結婚生活を楽しませてね。』
私はそう言って泣きながら康太君の手を取り握った。
すると何故かタイミング良く康太君が目が覚めた。そこからの出来事は正直余り覚えていない。だって初めて私は康太君の事が好きと自覚して、2人で話したのだから……
この回が物語の1つの大きな転機です。でもまだまだ物語は続いていきます。是非これからもご愛読ください。
また新作も是非お読みください!
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