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幻想夢現遊戯  作者: らんたお
第四章
98/141

13.

 癒し時間の使い魔使役テストも終わり、面談が始まる。先生との一対一で行われる面談は、一人20分ぐらいで行われ、一度に30人ずつのペースで進んでいく。

 教師は数人しかいないのに、どうやって30人も一度に面談できるのかというと、魔法を使って一人の教師が一度に五人の面談を行っているから可能なのだという。

 どういう原理なのかは知らないが、一度に五人を一対一で面談ってどういう状況? 適切に面談できるものなのか?


 話の内容は試験結果や勉学に限らず個人的な相談などもできるので、魔力をコントロールできていない今の現状を相談するには丁度いい。とは言え、毎回のことながら緊張する。属性毎に分かれて行われるので、俺や蒼実やロイドはいつも最後だ。


 順番が来るのを待っていたら、先に終わった皇凛が小躍りしそうな雰囲気で教室に戻ってくる。何なんだ一体?


「ちょっと大介、聞いてくれる?」

「俺に拒否権があるのか? 聞く気がなくても話す気だろ?」


 現に、溜息交じりに言った言葉に対して返答もせずに話し始めた。皇凛曰く、研究室での実験を大幅に拡充させて貰えることになったらしい。

 薬剤調合系の魔法使いを希望している皇凛だが、錬金術にも興味があった。どうやら今回は、錬金術系の方面でも研究できるように取り計らって貰えることになったそうだ。

 恐らく、自由課題の試験での内容を見てそう判断したのだろう。生徒の自主性を重んじているので、とにかく決断が早い。


 そう言えば、そろそろ錬金術専攻科の生徒は学校内に個人個人の研究室が宛がわれる頃だ。元々、錬金術師を志す生徒は自宅に研究室を持っているので学校内で研究室を作って貰っても使うことはあまりないが、休み時間毎に状況を確認しなければならないような繊細な作業がある場合もあるので、一応配分されることになっている。


 シャオファンやロイドも研究室を貰えるはずだけど、どうするんだろう? 皇凛みたいに、自宅の研究室もありながら学校の研究室も活用する強者になったりするんだろうか。

 最近の皇凛は、朝早くは学校の研究室で実験し、放課後は家の研究室を使うようになった。放課後一人研究室にいるのは寂しいから、が理由らしい。


 そう言えば、皇凛が一年生にして異例な形で研究室を貰った理由は何だったか。確か、空き教室で簡単な薬物実験を秘かに行っていて大爆発を起こしたのが切っ掛けだったような気がする……昔から迷惑な奴。

 普通の教室で研究するのは危険だから、ということで学校側が与えたのがあの研究室だ。研究室と銘打つ一室は、基本的に耐久性があるから、ある程度の魔法には耐えられる。むしろ、そうじゃない教室で何やってんだって感じだ。

 それも、何も入学式当日に行わなくてもいいだろうってタイミング。名も知らぬどなたかさんが何かやらかしたらしい、というのが第一印象だったなぁ……まさか、その名も知らぬどなたかさんと友達になるとは思わなかったが。


 続々と面談を終えて戻ってくる同級生は、ホッとしたりウキウキしたり、一応に明るかった。俺の相談事も明るい気持ちで終えられるといいが、どちらにしても個人授業をお願いすることになったら俺の気持ちが明るくなれない。

 魔力のせいで家に帰るのが遅くなるとか、それだけは勘弁なんだが。沈んだ気持ちのまま、面談に行く。






 驚いたことに、俺の面談には同じ闇属性のシュレンセ先生は分かるものの、何故か校長先生やアイガン先生のお姿まであった。あれ? 面談って一対一でしたよね? 三対一って、どういうこと?

 目の前の椅子に座るよう促されて座ったはものの、この状況に疑問符が浮かぶ。今回からこういう面談方式にでもなったのだろうか。


「驚かせて悪いね。先に説明しておくと、今回の君の成績は優秀だったよ。むしろ、優秀過ぎたことがちょっとした困り事なんだがね」


 校長先生の言う、優秀過ぎた、とはなんだろうか。俺、飛行実技の試験はようやっとクリアしたって感じだったが。他も、実技系は思った以上に想像以上の何かになったりして上手くいった気がしなかったんですけど?

 そんな疑問を見透かしたのか、シュレンセ先生は言った。


「君の魔力量が桁外れな状態になっています。それも、トルメリア大樹の一件から急速に」


 あの北の森での出来事から、俺にそんな変化が起きているというのか? 自分自身では分からないけど、そうだったんだ。

 もしかして、オーラみたいなのが見えるようになっていたのはそういうこと? 最近では、もっと微細な色で見れるようになっていたけど。

 ほとんどの人が単一の色ではなく、所々色の違った虹色だ。通常時は属性の色が大部分を占めているが、感情の変化で色が変わる。

 李先輩なんて、皇凛を見つけるとピンク一色になっちゃうし。


「君の身に起きている変化は、今のままの君の実力では耐えられないだろう。しかし、私達に出来ることは限られている。それでも一刻の猶予もないと判断して、シュレンセ先生に直接指導をお願いしたんだよ」


 図らずしも、俺のお願いしたかったことを先に言ってくれた校長先生。どうやらそれほど深刻な状況のようだ。

 俺、マジで大爆発してしまうんですかね? 相変わらず、特撮の爆発シーンしか思い浮かばないけど。


 そういう事情でこの面談だったのかと合点がいったが、じゃあどうしてうちの担任までいるのか。思わずアイガン先生に視線を送ったのは無意識だったが、何故かキランと歯が光る最高のスマイルを送られた……あなたのいる意味何?


 結局、アイガン先生のいる意味は分からなかったが、シュレンセ先生の個人授業を受けることに決まった俺は、他の通常授業をいくつか免除する形で授業時間内にして貰えることになった。

 因みに、最も時間数を減らされたのは神秘学だ。まぁ、予感はしてた。通常授業で免除できそうなのは、生活の知識として必要が限定的な神秘学ぐらいだったし。


 話が纏まりかけた頃、退屈を拗らせたクウィンシーに肩の上や頭の上で暴れられた。暴れたって言うか、くねくね体を擦り付ける猫みたいになっちゃったってだけだけど。

 俺の頭、ぼさぼさだよ。直しても直してもぐちゃぐちゃにされるので、もう放っておくことにする。

 そのままの姿で教室に戻ったら、皆に驚かれ笑われた。クウィンシーはクウィンシーで、何故か満足気。

 お前は一体何がしたかったんだ?

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