お姉さんショタと行く
「なんでですか?」
「え?なんでって?」
ボクがお姉さんに問いかけると、お姉さんはあっけにとられた様子でおうむ返しに問い返してきた。
「だってお姉さん知らない人だし。お店開いてるし。ボクに付き合う理由ないじゃないですか」
「え、それは君が可愛いし……ぶっちゃけこのお店も外部アプリで暇つぶしするついでに開いてたみたいなものだから店じまいしても問題ないし……ついていっちゃだめ?」
ダメ?っていいながら小首をかしげるお姉さんに見詰められる。
うーん。
ダメじゃないけどいいのかなあ。
「本当に暇なんですか?」
「暇暇ー。このゲームもサービス開始してから長いから一日にそんな新人さんがいるわけじゃないし」
「そういうことなら……いいですよ」
「やった。じゃあパーティー組もう」
「お姉さんにリーダーお願いしても良いですか?」
嬉しそうに笑うお姉さんにパーティーを作るお願いをしたら、ちっちっちっと指を振って「お断りしまーす」と言われちゃった。
もしかしてやっぱりパーティー組むの止めちゃうのかな、って思ったけど。
「私からパーティー飛ばしてもいいけど、君初心者でしょ。チュートリアルで習った通りにパーティーを組んでみなよ」
露店のシートを畳むお姉さんにそんな風にいわれて、自分でパーティーを組んでみる練習なんだって気づいた。
「はい。じゃあやってみますね。ええとー」
メニューを開いてパーティーの所をタッチ。
思考で対象を選択して……編成!
「お、ちゃんと組めたみたいね。私はアンナマリー。よろしくね」
「よかったー。よろしくお願いしますアンナマリーさん。ボクはトライアです」
ちゃんとパーティーを組めて、自己紹介して安心した。
そしたら立ち上がったお姉さんに手を取られた。
「じゃあいこっか」
「はい」
「うーん、硬いよトライア君。もっと口調崩していいよー」
「んー、うん。いこっか、アンナお姉ちゃん」
「──!!ん゛ん゛!」
「どうしたの?」
「なんでもない。なんでもないから」
ボクの手を握ったままでくしゃっとした顔で何かに耐えるように背を丸めるアンナお姉ちゃん(背を丸めても僕よりずっと背が高い)の背中を撫でる。
「ふっほ!」
「アンナお姉ちゃん大丈夫?」
いきなり背中を大きく揺らすアンナお姉ちゃんの顔を覗き込む。
……?
なんか口元がゆるゆるになってる気がする。
「ダイジョウブ、ダイジョウブダヨ」
「ほんとに?調子悪くない?」
ボクが問いかけるとアンナお姉ちゃんは背筋を伸ばしてつーんと顔を逸らした。
なんか女王様、みたい。
他のゲームでこういう女の人のNPCがそんな感じだった。
「大丈夫。プレイに支障があるレベルの変調が有ったら強制ログアウトだし。私がここにいることが無事な証だよトライア君」
「そっかー、よかったー」
ほっとした。
そういえばそうだよね。
バイタルに何かあれば即!強制ログアウトさせられるのがVRゲームだもんね。
「心配かけちゃったね。じゃああらためていこっか」
「うん!」
一安心したところで改めてアンナお姉ちゃんに手を引かれて街中を歩く。
マップで方角を見ると南の方に向かってるみたい。
思考操作でマップの表示範囲を弄ると、街の門の方に向かってるのが解った。
「トライア君、このゲームの敵の強さがどうなってるかは分かってるよね」
「うん。この始まりの街が中心で、南北東西どっちに向かってもこの街から離れるほど敵が強くなるんだよね」
「そう。だからどっちに向かってもいいんだけど、なんで今私が南に向かってるか分かるかな?」
「んー……なんでだろ。分かんないや」
ちょっと考えたけど、分からないことを素直にいうと、ボクに歩幅を合わせて隣に並んでたアンナお姉ちゃんは歩く速度そのままに。
「デフォルトだとオフになってるんだけど、マップにプレイヤーのいる場所を教えてくれる機能があるんだ。ソレを見てトライア君を他の人が少ない狩場に案内しているの」
そういって、アンナお姉ちゃんはボクにその機能のオンオフの仕方を教えてくれた。
「まあ普段からオンにしてるとマップが見づらくなるからデフォルトはオフなんだけどね」
露店してたからオンにしてたんだ、といってウィンクしながら。
「アンナお姉ちゃん物知りだね。そういえばアンナお姉ちゃんはどんなプレイをしてる人ですか?」
「お、気になるかね」
「うん。露店で装備売ってたってことは生産系の騎士?」
生産系の騎士is何?って感じだけど。
Knight Night Onlineの職業は全部騎士が付くんだよね。
キャッチコピーが騎士になりたいあなたへ、だし。
たしか製造系の騎士は鍛冶騎士とか、医薬騎士とかがあったかな?
「私は鍛冶騎士でまったりプレイ派かなー。製造騎士だけどステータスは半製造って感じでそこそこ自力でも材料集められる感じ」
「ふうん。じゃあ製造するのも露店するのも楽しいから?」
「そういこと。それに初心者向けの露店だしてると君みたいな子にも会える確率上がるしね」
「ボクみたいな子って?」
会話の中の僕の質問にさらっと答えようとして。
「え、それはほら、かわい……ンン!右も左もわからない若葉マーク君よ」
って具合に何故か咳払いしたアンナお姉ちゃんだけど、そっちより僕は若葉マークっていうのが気になった。
「わかばまーく?」
「あ、知らない?車の免許を取ったばっかりの人が車に着けるマーク」
「そんなのあるんだ!」
「あるのよー。下向きの矢羽根みたいなマークで左側が黄色くて……」
それからボクに免許持ってる?って聞いてきたから。
ボクまだ小学生だからもってないよっていったら、リアルショタキター!とかいってちょっとアンナお姉ちゃんのテンションが変な事になっちゃった。
なんで?




