成金屋敷
久々に2日連続投稿できました(*^_^*)
竜車を止めるにはやや狭い、けれど一般的に考えるなら十分広いディミヌエ邸の前庭に降り立つと、屋敷の方から慌てて数人の出迎えが駆けてきた。
「ようこそお越しくださいました!」
先頭に立って挨拶したのは、執事のおじさん。たぶん、おじさん。うん、たぶん。
アタシもこの国に住んで長いから、いろんな種族のヒトと会ってきた。けど、魔族の年齢ってやっぱ、いまいち推し量れないんだよね……。まぁこのヒトの場合、性別からすでにアヤシイ。
この執事さん、服装と立ち居振る舞いがおじさんぽい。だからおじさん。人型だけど緑色の肌で、百目鬼よろしく目がたくさんある。てか、目しかない。……え、口どこ? どこで喋った???
アタシ達は、案内されるまま、庭に敷かれた銀色の道を進んでいく。たくさんある謎のオブジェも、花壇の間の小径も、全部アルジェの鱗が貼り付けてあるらしい。小石を踏むような感覚で、はっきり言って歩きにくいが、きっと富の象徴、マシリ統括のプライドとして、大切なモノなのだろう。
「恐れ入りますが、こちらでお待ちください」
ピカピカと目潰しのような道を歩いてようやく入った室内は、意外と普通。調度品は高級そうだが、意表を突くもののない、一般的な応接室だ。
当主を呼びに行ったのだろう執事の背中に、アロが小さく不満をこぼす。一人掛けのソファーに座ったのはアタシとあんちゃんだけ。アロとバラクさんは従者としてそれぞれの後ろに控えている。
「連絡は入れてあるのです。ドルゴーン様をお待たせするのではなく、ディミヌエのご当主が前もって控えているべきでしょうに……」
入ってきた無表情な家人が、アロの文句など聞こえないかのようにお茶の用意を並べ始めた。小言を聞き流すことに慣れているようにも、耳が遠いようにも見える。
普通、客人の前に出る仕事はお仕着せに身を包んだメイドか見習い執事が行う。高位の客人が相手なら、尚更だ。なのに、今あんちゃんの前のカップにハーブティーを注いでいるのは、質素な普段着を着た男性だった。ガチャガチャと食器を鳴らす男性に、驚きを隠しきれない。
人里離れた原生林区にある「光の洞穴亭」だって、客にこんな不作法したことないのに……。
「この屋敷に女のヒトは……」
いないのかい? と続けようとして、ハタと気付いた。あんちゃんの婚約者を装って訪れた以上、アタシもそれなりの振る舞いをしないといけないのではなかろうか……。
今日のあんちゃんはラフな格好で、非公式の訪問であることがわかるようにしてくれている。アタシはアロが用意してくれた淑女の服だ。シンプルだけど上品なワンピースで、マキシロング丈のスカートが自分で働くことのない貴婦人だということを表している。
ちなみに、いつものアタシはマキシまではいかない脛丈のロングスカートの愛用者だ。アロも同じ脛丈で、その丈は働く上流階級女性を表すものだと教えられた。そういう格式、めんどくさい。
アタシは動きやすければ何でもイイんだけどねぇ。「会長」という立場にある以上貴婦人であるべきで、未成年であることを加味しても脛丈がギリギリの許容範囲、なのだそうだ。アロ曰わく。
どんな場面でも第一印象は大切だから、労働者階級に多い膝丈スカートやダボダボズボンは絶対にはかないように言われている。
「……女のヒトはいらっしゃらないんですか?」
うん、これならマシかな?
滅多に使わない丁寧な言葉に、舌がもつれそうになる。後ろから、アロが驚いて息を呑む音が聞こえてきた。……ていうか、さすがに失礼だよ? アタシだって頑張れば敬語、使えるんだからね?
日本人の魂に叩き込まれた上下関係、ナめんじゃないよ。まぁ、国のトップツーと知らずに出会っちゃったせいで、お偉いさん相手もなし崩し的にタメ口のまま来ちゃったけど。……大丈夫、アタシ、やればできる子!
「…………申し訳ございません」
けれど、無表情の男のヒトは無表情なまま、ぼそりとそう言うだけだった。アタシの口調になんか、まったく興味がなさそう。それに、そんな返事じゃ質問の答えにもなっていない。
頑張り損? と内心がっかりしていると、扉が開き、百目鬼執事さんが戻ってきた。
アルジェは食用ではありません
体が大きく魔力が強いため、しばらく放置しなくては食べれず、放置するとさっさと身が腐る……
工芸品の原材料となることが多い魔魚です




