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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
3 光の洞穴亭 in 救民街
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成長したからできることです

更新したはずのデータが消えてて、青くなりました


……どうせ、寝ぼけていたわたしのせいなのですが……(T_T)

 学びの場すら飽和気味な日本ではなかなか理解されないけれど、勉強は自分の将来のためにするものだ。

 安定した収入を得るためにはそれなりの職業に就かねばならず、それなりの職業に就くためにはそれに応じた学がいる。学を身につけるためには勉強せねばならず、勉強するには学びのための場と、学びに行っても構わないほどに安定した家庭環境が必要だ。

 昔の日本や途上国は、子どもすら働き手に数えるから、裕福な家庭の子どもしか学校に行けなかった。それを打開するには教育の義務化が必要だけど、さすがにこの世界ではまだ難しい。


 アタシにできるのは、学びの場を少しずつ作っていくことくらい、かね。正直、その点ではあんちゃんという超大物な後ろ盾は心強い。あんちゃんからすれば長過ぎる一生の退屈しのぎなんだろうけど、アタシにとっちゃ時間は有限。早いうちから大々的に動ける立場は貴重だ。


 救民対策。ホントは国家がやるべき事業だし、現状でも一定の効果は上がっている。だからアタシが勝手に首を突っ込むのはおかしいんだろうとわかってる。

 けどさ、日本から来たアタシの知識を併せれば、もっともっと生活水準を向上させられると思うんだよ。自業自得のヒトは置いとくとして、巻き込まれた子どもとか、抜け出せない貧困とか……少しでも、みんなが心から笑える日が増えればイイな、って。

 格差の完全打破なんて無理だってわかってる。アタシのこのやけに強い気持ちが、やっぱり自己満足でしかない、ってことも。たぶん、これは妄執だ。転生したからには何かを為したい。世界を救うとか大袈裟なものじゃなくてイイけど、もう一度生きるからには、意味を持ちたい。自分がここで幸せに満たされているからこそ、大勢の苦難が気になる。


 そしてアタシは……おばちゃんだからね。「自己満足の何が悪い!」って開き直れるくらいにはふてぶてしいんだよ。それが結果として誰かの役に立つなら、自己満足だって立派な社会活動だろ。

 「光の洞穴亭」はミョルニーの好奇心の産物だけど、「ホラアナ亭グループ」はアタシのワガママでできている。うん、断言できる。


 ということで、この数年でアタシはまず、予定通り炊き出しを始めた。救民地や救民住居のヒト達への「ホラアナ亭グループの宣伝」という形をとって。さすがに、この世界に馴染みのない「ボランティア」という概念を浸透させるのは諦めた。

 アタシの魔喫の能力を生かし、炊き出しの煽りを食うだろうヒト達を臨時雇用してルフの懸念を回避。結果、この地元民を巻き込む作戦は、大成功だったといえる。まぁ元々、「ドルゴーン大公の婚約者の御披露目を兼ねている」と告げられた住民達は、こちらが驚くほど協力的だったけどさ。魔族にとって、兄さんとあんちゃんは憧れの的らしい。安定した治世が長年続いているせいか、首脳陣の国民人気は総じて高く、おかげでアタシは順調に貧困対策の案を練られた。

 そして、炊き出しの次に採用したのが奨学金と就職支援金制度。やる気のある者を選別し、ホラアナ亭グループの一員とする名文句で学を与え、学と職場を与える。

 家庭が安定せずともやる気はあるとか、独り身だから大丈夫だとか言うヒトには、アロの配下に家庭訪問させたうえで、採用しても大丈夫かどうかを決めることにした。今はその事業拡大の準備中だ。


「そういえば、建物は確保できたのかい?」


「もちろんですわ。富裕層向けの教室は商業区の肉屋を改装して既に準備万端ですし、救民地は比較的治安部隊の詰め所に近い空き家を改築しました。念のため、イムラの街とオズルドの街でも、救民住宅側の物件を一軒ずつ確保してあります」


「はぁ……さすがアロだねぇ。感心するよ」


「嫌ですわ、ワタクシが有能だなどとそのような当然のことで驚かないでください。そうですわねぇ、もし会長がどうしても感謝の意を示したいとおっしゃるのなら、ワタクシをドルゴーン大公の第二夫人へ推薦してくださいませ。今すぐに、言葉を尽くして」


「……だからそれはアタシが決めることじゃないって言ってんじゃないか……。ホント、へこたれないね」


 優秀で残念なアロが聞き飽きた文句を並び立てるのを軽く流しながら、アタシは執務室へ戻る。魔術具の日時計を見れば、そろそろ夕方だ。


「そろそろ帰んなきゃね。アロはどうする? 残業は宵2までだよ。宵3まで残ってたら出勤禁止にするからね。わかってると思うけど」


 昼はこちらの厨房で、朝晩は家で。可能な限り、あんちゃんや兄さんと一緒にご飯を食べることにしている。

 事業は忙しいが、「ホラアナ亭グループ」の核、「光の洞穴亭王都食堂」も、夜のみ限定7組で営業中だ。


 アタシの1日は単調で、朝ご飯の後に出勤、午前は報告をあれこれ訊きつつ本部の調理場で作り置きを作成する。お昼ご飯の後は雑務を片付けつつ、時間があけばレシピの研究だ。

 炊き出しは12日に一回、休養日に合わせて昼に行うことが定着している。本格的に料理教室が始まれば、午前は調理をしつつ指導する、忙しい生活になると思う。でも、午後には仕事をしなくてはならないから、受講生には各自作った試作品をまかない昼食としてもらい、片付けだけ済ませて早めに解散させる方針だ。


 ちなみに、本部の調理場横の広い貯蔵庫には、「光の洞穴亭」の貯蔵庫に通じるドアがある。アタシ、ミョルニー、ルフ、ミーチャ、あんちゃん、兄さんは行き来は自由で、持ち出し表にチェックすれば利用も可能。

 アタシが王都に来て以来、加工済み食品や調理済み料理の貯蓄が減る一方だという問題があったが、ミーチャを助手として教育することで事なきを得た。


 全て、アタシが魔喫ますいだとわかって、他人に任せられる箇所が増えたたおかげだ。成長に合わせて魔喫の力も強くなり、今では下拵えはミーチャ任せで大丈夫。

 例えばポトフなら、食材を採ってきて洗うのはルフの仕事。皮を剥き、切りそろえるのはミーチャとミョルニー。おかげでアタシがやるのは、煮て味を整え、一食分ずつ小分けして行くことだけ、だ。

 しっかり密封できる器を使っているから、貯蔵庫に運び込むのは手の空いているヒトみんなでできる。便利便利。


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