フィーリ、高台から見渡す
すみません、昨日、忙しさと睡魔に勝てず…
このページは、昨日の分の更新だと思っていただけましたら幸いです(^-^;
イムラに溢れる呉服屋の一つ。庶民な店構えのそこで、アタシは2種類の反物を手に入れた。
好奇心半分、兄さんに選んでもらったんだけど、結果は上々。めっちゃホクホク。
水色の布地に紺、緑、白、ピンクの小花柄が染め抜かれた布は、アタシの琴線を直撃したし、もう一つも、紫にカラフルな鳥の羽が描かれた生地と悩んだあげく、兄さんオススメのオレンジ色のグラデーションを買うことにした。イムラは反物の街だけあって、王都よりずっと、布地のバリエーションが多くて、価格もお手頃。これは定期的に来たくなる。ふっふっふ……イイねイイね。
それにしてもジークの兄さんは見直した。相変わらず謎キャラだしぶっきらぼうだけど、美的センスはばっちりらしい。今なら、無口な兄さんとのお出かけも苦じゃないと思える。
……そういえば、今日は一回も兄さんの存在を見失わない。いつもはあんなに空気なのに。不思議だけど……まぁ、空気じゃ護衛になんないからね。ま、いっか。
「そろそろ帰るか?」
「え? 何言ってんだい。お弁当持って来たんだ、どっかで食べてからまた回ろうよ」
「…………ハァ。子どものくせに……」
「何か言ったかい?」
「いや……」
「キレイなモノが好きな気持ちに歳は関係ないだろ? つべこべ言わない!」
相変わらず憮然として見える兄さんの手を引いて、今度はお弁当を食べるのにイイ場所を探す。
ピクニックなんて贅沢は言わないが……あ、あの階段いいかも。
ちょっと高台になった広場に続く広い石段。時間的なものか往来はほとんどなくて、見晴らしもイイ。
「ほら早く。ここ、乾いてるし敷物とかなくても良さそうだよ」
アタシは早速石段の中腹に腰掛け、肩にかけていたバックからお弁当を取り出した。
このバックも、あんちゃんの保存の魔法がかかっている。内容量は変わらないけど、バックの中は時間の経過がなくて、ついでに、どういうわけか、入れると重量が軽くなるのだ。
あー、ありがたやありがたや。多少の差でも、非力な子どもにはホント、軽いってありがたい。内容物と反比例で軽くなるなんて、またしちめんどくさい高度な魔法がかかってるんだろうね。あんちゃん神様仏様!
「サンドイッチと串焼き、デザートも持って来たよ。えっと、ティーオさんだっけ、そのヒトの分もあるから、呼んどくれよ」
一段上に陣取った兄さんにオルニハムと葉野菜のサンドイッチを渡しつつ、アタシは辺りを見回した。兄さんは今日、アタシの護衛件保護者だけど、そんな兄さんの護衛もいる。お偉いさんだからね。竜車の御者も必要だったし。どこか、離れて警戒にあたっているらしいティーオさんとは、朝に挨拶したきりだ。
見た目に特徴がないうえに凄腕って……忍者か!? って感じだよ。
兄さんが軽く名前を呼ぶと、地味な茶色の服をまとった男性がどこからともなく姿を現す。音のない動きに、アタシは内心で「さすが忍び!」と拍手を送った。いや、この世界に忍者はいないから、ティーオさんは洋風に「スパイ」とか「諜報員」とか……「SP」ってとこなんだろうけど。なんな、お庭番臭がすごいんだよ。
「はいよ。腹が減っては戦はできん、てね」
ラップ代わりの薄い布でくるんだサンドイッチを、ティーオさんは押し問答の末に受け取って、口に運ぶ。
少し上の段に立ち、周囲に気を配りなが素早く食べる護衛の鑑に苦笑しながら、アタシも眼下の街並みに目をやった。
魔王領でも五指に入る大きさの街だと聞いた通り、イムラの街はこうして改めて見ると、前世のちょっとした地方都市レベルで栄えている。アタシ達の背後、高台の広場の先には、竜車を置いた行政地と、役人の住む高級住宅街。眼下には王都と同様、商業地から一般住宅地へと広がっている。




