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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
1 光の洞穴亭 in 原生林区
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「光の洞穴亭」の人間模様

「…………服着ないの変じゃない………? フィーリ、ホントにそう思う……?」


「あぁホントだよ。アンタはもっと、自分に自信を持ってイイ。誰よりもキレイ……いや、かっこいいよ。

 変なこと訊いて悪かった。すまないね」


「え!? ぅ……ぅええ!? 別にフィーリが謝ることじゃないよ!? ちょっ……頭上げて よ」


 慌てたルフにバシャリとお湯が跳ねた。気にすんなとでも言うかのように右前足を器用に振る。


「ね、ホント、オレ、まったく気にしてないし! 頭上げてよ」


「……そうかい?」


 いい加減跳ねるお湯でずぶ濡れになった頃、アタシは90度のお辞儀をやめた。


 この世界では、心から謝罪する時、腰を直角に折って首筋を相手の前に晒す。それは、「許せないと思えば処刑してくれて構いません」という意味。命がけの謝罪だ。


 ……まぁ、狼狽えるルフの気持ちもわかる。こっちとしては気が済むけれど、そんな謝罪をされた方は重たくて仕方ないだろうからさ。


「じゃあ、ルフへのお詫びは魔石付きのオルニでどうだい? 捌いた分の魔石は貯蔵庫に回したが、少し、取ってあるんだよ」


 パチリとウィンクをしてみせれば、ぺたんと倒れていたルフの耳がふるふると震えてパッと立った。尻尾も同時にピンと立って、それからフサフサ揺れ始める。

 ホント可愛い狼だ。


「さて。そろそろ仕上げしようかねぇ。ムコカは……」


「オレやるっ! ここっ、ここにザバッと入れてよ! オレがムコカ洗うからっ」


「イイのかい? アタシは助かるけど……」


「うんっ! 爪引っ込めてやるから大丈夫っ」


「じゃあありがたくお願いしようかねぇ。その間にアタシとミョルニーで配膳しちまうよ」


「任せてっ! オレ、フィーリの兄ちゃんだからさっ」


 盥風呂はルフの毛で汚れている。けれど、ムコカの泥を落とすには十分だろう。後でザルにあけて仕上げ洗いをすればイイ。


「ふふっ、任せたよ」


 最後にルフの頭を撫で、アタシは粗布で手足を拭ってから表に向かった。

 カウンターと扉を隔てた向こう、ミョルニーが整えてくれた食堂は、下町の食堂のように明るく可愛らしい。洞窟の中だとは到底信じられない立派さだ。

 テーブルの上のクロスは淡い黄色のリネン。カトラリーが並べられ、真ん中には花が活けられている。

 5個しかないテーブルの上の花瓶は、全部同じ形の色違い。ミョルニーが土魔法で作った小振りな花瓶で、飾られてる花もそれに合わせた色になっていた。


 普段大雑把な癖に、彼女はインテリアに関して妙に細かい。

 料理を盛る器も、メニューによって使い分けるよう、丁寧に指示されている。


「ミョルニー、並べるの手伝ってもらえるかい?」


 ちょうど貯蔵庫からお酒のビンを抱えて戻って来たミョルニーに声をかけると、


「ああ、イイ匂いだなや」

 

 手早く皿を選んで出し、席にどんどん運んでくれる。


 妖精小人ドヴェルクは働き者だ、とミョルニーは言うけれど、きっとその中でもミョルニーは飛び抜けて働き者なんじゃないかと思う。辺境とはいえ、一人で宿屋なんて始めたのがその証拠だ。

 しかも人嫌いで偏屈なドヴェルクにあって、異例の人好き。面倒見が良くてお喋り好きだ。ホント、アタシ、ミョルニーに拾ってもらえて良かったよ。やっぱり早く成長して、家族を支えてやりたいもんだ。

 アタシはどうせ早く死ぬから──種族的な寿命はどうしようもない──たくさん親孝行、しなくちゃね。

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