フィーリ、買い出しに行く
さぁ頑張るぞ!!
……と思ったものの、今のままでは原生林区の宿と王都の店、両方を支えられるほどの食料がない。
原生林区は時期的に来訪者のピークを過ぎて、落ち着きを取り戻している。いくら王都より南とはいえ、湿潤期も終わりに近づきかなり寒くなってきた今日この頃だ。もう少し経てば更に減り、しばらくは開店休業状態となるだろう。
しかし、こっちの王都店の方がよくわからない。
あんちゃんとジークマグナスさんだけならなんとかなるけど、もしあんちゃんのお屋敷のヒト全員分を作らなきゃならないなら数日でギブアップ間違いナシ。王都は乾季だからといってヒトが減ったりしないし、むしろ、地方の査察に行けない分人口自体は増えるだろうから、一般開放しようと思えば尚更ピンチだ。
うーん……。地道に採集して加工する時間すら惜しいよね。さて困った。
……と相談した結果。今日、アタシはあんちゃん案内のもと、王都のバザールに買い出しに来ていた。
王都は王城の麓に広がっている。王城はあんちゃんのお屋敷と一緒で、平べったい。アタシがパッと思い浮かべる城は塔やら天守閣やらがある縦長タイプだけど、この世界の城はどうも、ヴェルサイユ宮殿タイプらしい。あんちゃんのお屋敷の拡大版という感じだ。
しかし、一段高い大地に作られている王城は、何が攻めてくるわけでもないだろうに、背後に急峻な崖と大河を従えている。空から見るとそこだけ、山城っぽくて面白い。
南向きに建つ王城の正面は斜度の高い法面で、背丈の低い植物が植えられている。その真ん中を、唯一の通路である長い階段が貫いていた。
街の中で城に近い場所には役人達、魔王配下の魔族達の屋敷がある。あんちゃんのお屋敷はその区画の中央にあり、特に広い敷地面積を誇っていた。
ちなみに、「光の洞穴亭王都支店」を含む高級住宅街は、商業区とお屋敷街の間にある。お屋敷勤めの魔族のうちの、出世した一部の者が住む辺りなのだそうだ。
王都支店兼アタシの新居は、前の住人が一家で地方赴任に引っ越したため、空き家になっていた貸家らしい。信じがたいが、元々の間取りはただの民家。レストラン仕様に、とあんちゃんとジークマグナスさんが二人がかりで勝手にいじって今の間取りと設備になった。……会ったことはないが、大家さん、いるんだよね? こんな劇的大改造してイイんだろうか。…………ま、アタシの気にすることじゃないと割り切ろう。悩んだってもう遅いもん。
「そういや、あんちゃんて自分で買い物したことあるのかい?」
ケンタウロスの引く馬車を降り、小さな店の並ぶアーケードのような一角を歩きながら、アタシはふと湧いた疑問を口にした。
未だにあんちゃんの立位置がよくわからないが、偉いことは間違いない。そんなヒトが街を歩いたり、普通に買い物したりするんだろうか。全部使用人さん任せかな?
うーん……二人で迷子、は困るよね……。
「買い物ですか? ありますよ。当然じゃないですか」
「……ソレってまさか、お屋敷にお店のヒト呼びつけて、とかじゃないよね? ここで買ったことあんのかい?」
「………………はぃ?」
うん、ないみたいだね。今の間はダメだ。語尾、上がってるとか……まったくこれだからお金持ち様は!!




