フィーリとあんちゃん
「はいよ」
ルシオラさんと、なぜか厨房の中まで一緒に付いて来たあんちゃんに、イスを勧める。さっきまでミョルニーとルフが座って朝食をとっていた席だ。食堂で話を……と思ったのに、あんちゃんに「内緒話らしいですよ」と厨房に押し戻された。
3人分の冷たいお茶を出し、アタシも自分のイスに座る。厨房の隅、四角い机の一辺を壁にくっつけた、簡素な作業台兼食卓だ。アタシとルシオラさんが向かい合い、間にあんちゃんが座っている。
カウンターから覗けば丸見えだけど、よほど大声を出さなければ表には聞こえない、そんな距離。
「そういや2人ともちゃんと朝ご飯食べたかい?」
「えぇもちろん。今日もフィーリのご飯はとても美味しかったです。フィーリは世界一の魔法使いですよ」
魔力を持たないアタシに「魔法使い」とか……またあんちゃんの褒め殺し暴走が始まったよ……。
「ルシオラさんは? なんだか顔色が良くないが……まさか…………もらって来た、とかじゃないだろうね……? もしかして……バールさんの故郷、行ったのかい?」
何をもらったかは敢えて言わない。でも、アタシがチラリと気にしたあんちゃんは既にルシオラさんから話を聞いているのか、不思議とにこやかに頷いている。
「あ、ちがうんす…………」
言い淀むルシオラさんはあんちゃんをチラッと見たあと、ブルリと体を震わせた。
なんなんだい……?
疑問ばかり増えていって気持ちが悪い。
「フィーリ……顔が怖いですよ?」
気持ちが顔に出ていたのか、あんちゃんが苦笑してアタシの眉間に手を伸ばす。ぐりぐりと寄ったシワを解かれながら、アタシはそのあんちゃんの右手をガシッと掴んだ。
「ガヴのあんちゃん、何企んでんだい?」
「企んで……? なんのことですか? こうして情熱的に手を握って貰えるのは嬉しいですが……」
外見は炎属性の龍人だけあって、直情的そうな、脳筋そうな感じなのに、あんちゃんは一癖も二癖もある喰えない性格をしている。いくらアタシがトータルで約50年生きてようと、あんちゃんは比べようもないほどに長生きで老獪。本人が数えるのを止め、忘れるほどの年齢だ。ちょっとやそっとじゃ、太刀打ちできない。
「あんちゃんがルシオラさんを連れて来るなんて妙じゃないか。あんちゃんはアタシらには協力的だけど、基本的に他人に深入りしないだろ? 人当たりが良くて差別もしないが、よほど仲良くならない限り、気にもとめないのがあんちゃんだ。なのにさぁ……」
「感動ですフィーリ! ボクのこと、良く見てくれているんですね……っ! まさかそこまでボクを理解してくれているなんてっ!!」
「そんな驚くことじゃないよ。あんちゃんは『光の洞穴亭』の家族みたいなもんだからね」
「フィーリ……っ!!」
感極まったのか伸びて来た両手をサッと避けた。その勢いでハグされたらたまらない。比喩とかじゃなく骨折れちまうよ。
「ね、あんちゃん。アタシが知りたいこと、話してくれるよね?」
ジッとあんちゃんを見つめれば、凛々しいパーツを柔和に緩めて、
「もちろんです」
アタシの手を大切そうに握り直した。
日中、布団圧縮袋を……と気合いを入れたのに。
ダイ○ンは布団圧縮袋、使えないんですね。
ノズルパーツを探して右往左往しましたが、電気屋さんで200円で買えました!
……そんなこんなで、更新時間が遅くなり、すみません<(_ _)>
今日中にもう1話行きたいです!




