フィーリと朝ご飯
いつも通りの目覚め、とは言い難かった。
昨夜遅くまでバールさんと話していたことと、その内容が、幼い体には思った以上に負担だったらしい。
アタシは重たい体を引きずるようにしてベッドから降りると、鈍い動きで厨房に立った。前もって献立決めといてホント良かった。
睡眠時間約4時間。寝不足のせいか、びっくりするほど頭が働かない。やっぱ、成長期の睡眠は大事だわ。
「おはよさん」
サラダ用の根菜を茹で終わり、ビータのポタージュに程よいとろみがついた頃、のっそりとミョルニーが起きてきた。
ゆうべはしこたま呑んだだろうに、こちらはいつもとまったく変わりない。アタシとほぼ同じ高さにある化粧っ気のない顔は、むくみもなく血色ばっちり。いくら妖精小人が酒に強い種族とはいえ、よく毎日短時間睡眠で過ごせるものだ。
……ミョルニーはバールさんの話、どう思ったんだろ…………。
ふと訊いてみたくなった。しかし、迂闊に口に出して良いことだとは思えなくて、結局アタシは口をつぐむ。
「お、今朝は『すりある』け?」
「そうだよ。カスタードをのせてね。二日酔いのヤツらもシリアルだけでも食べとけば、今日1日働けるだろ?」
「ヨソにない味は別腹で食えっかんな」
カスタードクリームみたいなもったり重たいモノでも、魔族にかかれば流動食。これまでなかった食感と味に驚いて、二日酔いを忘れるらしい。なんだいソレ、しゃっくりじゃあるまいし……驚いたくらいで二日酔いが治るんだったら、日本人成人の1/4は魔族になりたいと願うだろうよ。
「ふわあぁぁぅん……おはよー、フィーリ、ミョルニー」
アタシがパンを薄切りにして焼き、ミョルニーが貯蔵庫のジャムの瓶を各テーブルに並べ始めた頃、大あくびと共にルフが起きてきた。朝寝坊常習犯だ。「夜に強く朝に弱い。人狼族はみんなそうなんだよ?」と言われると、無理に起こすわけにもいかない気がする。宿屋のスタッフとしてはどうなのかと思うけれどね……。
「おはよ。顔洗っといで」
ルフの朝一の日課は、洗顔がてら温泉に行き異常がないか点検すること。アタシの足だとそれなりに距離があるが、ルフならあっという間だ。朝食が出揃う前に、ホカホカと全身から湯気を上げ、ついでに浴場の使用済みタオルの山をズタ袋で背負った銀狼が戻って来た。
「ルシオラさんが入ってたよ~」
「おや、早起きだね」
夕飯と同じようにランチョンマットを並べ、料理を載せた。
夕飯はみんなでワイワイ食べるけれど、朝食は起きた時間や予定次第でバラバラだから、朝二の鐘が鳴ったら各自好きに食べれるように出しておくのだ。宿泊客の人数分、あんちゃんが作ってくれた保存魔法の布をかけて。




