表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
1 光の洞穴亭 in 原生林区
26/136

フィーリと疫病①

「症状は……………って、え!? えぇっ!? そんなっ、恋人だなんて……そんなっ」


 動揺しきり。可哀想なほど狼狽え始めた隠し事下手のバールさん。その真っ赤な頬を見ながら、


「大切なヒトなんだろ?」


 と訊けば、恥ずかし気な肯きが返ってきた。


 やっぱり……。アタシの勘もまだまだ捨てたもんじゃない。

 お姫様育ちのバールさんが今こうして魔王領ここにいるのは、情熱的で一途な恋心のせいだった。愛しい相手が、不治の病床にあるせいなのだ。


「最初は……感冒かぜかと思っていました。倦怠感がひどい、と本人も」


 しかし、それから足が異様にむくみ始め、痺れるようになった。悪化の一途で、終いには立てなくなり、寝込んでしまったのだそうだ。全身のだるさに節々の痛み。食欲が皆無に等しくなってきて、そのヒトは今現在、どんどん衰弱しているらしい。


「同じ症状で既に何百人と亡くなりました。病床に伏している臣民も多く、近いうちに数千人規模の大惨事となるでしょう……」


「どのくらい前から流行り始めたかわかるかい?」


「さぁ……昔からポツポツとは出ていたようですが、目立ち始めたのはここ数年というところで……」


「風土病かね? ……バールさん、その病は染つるんだよね? どういう時に染つるんだい?」


「え? さぁ……そんなこと、考えてもみませんでした」


「……疫病なんだよね? 例えば、くしゃみしたヒトの近くにいたヒトが次に発症しただとか、ただ近くにいただけで染つっただとか……あとは……ある場所に行くと発症するとか……。何か、その病気にかかったヒト達に共通点はないのかい?」


「共通点、ですか。そうですね…………報告されているものはなかったと思います」


「うーん……職場が一定区域内だとか、家の造りが似てるとか、同じ動物を飼っているとか、同じ食べ物がすごく好きだとか……」


 疫病と言うからには、感染源が必ずある。風邪だろうがインフルエンザだろうが水虫だろうが、ウィルスの感染には経路がある。日本人的に当然のその発想はしかし、バールさんにとっては一般的ではないようだ。もしかしたらこの世界では医学の根本が違うのかもしれない。


「あの、それを知ると何か………? 病が治るのでしょうか……?」


「治りはしないよ。けど、これ以上広げないようにはできるかもしれない。帝国を救いたいってなら、大切なことだろ?

 ……まぁ、あんたが恋人以外どうなってもイイってんなら関係ないがね。あー……つまり、治療法が一番で他は後回しでイイなら、ってことなんだけど……」


 アタシに医療の知識はないから、診断も治療もできない。でも現代日本人だった知識を使えば、基本的な感染症予防や対策は思いつく。

 とはいえ、口をついたキツい言葉に自分でも驚いた。いくら驚いたからって言い過ぎだよ。慌てて歯切れ悪く言い足しても残る罪悪感。ハァ。ズケズケ喋れるのがおばちゃんの強みとはいえ、デリカシーをなくしたらただの老害じゃないか。反省しなきゃ。言い方ってもんがあるよ。


「…………そう、ですね……。一番は、治してもらうことだと思っています。彼のための探しているとはいえ、もしお薬が見つかれば結果的に他の民も助けられるでしょうから。ただ……将来的に国を救うためには、フィーリさんのおっしゃることが大切なのも理解できます」


「ま、確かにね。救えるもんなら救いたいって気持ちはわかる。たださ、忘れちゃいけないのは正があれば負があり、どんなことにも良い面と、悪い面とが紙一重だってことだ。利益だけを得られることはまずない。治療しようと思えば高価な対価や、とんでもない代償があるかもしれない。予防しようとする結果、特定の生き物を隔離しなきゃならなかったり、ある階層のヒトが非難される可能性もある」


 回りくどいが、訊きたいのは「本当に覚悟があるのか」。バールさんはただの帝国民ではなく恐らく為政者側だ。貴族のご令嬢か何かだろう。


 魔王領に特権階級はいないが、人間の国には貴族がいると聞いた。そんなお嬢様が従者もなく、商人に連れられて旅しているのだから、帝国内部の混乱は相当なものだと察せられる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ