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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
1 光の洞穴亭 in 原生林区
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フィーリとお風呂2

 地底湖へ至る道も、宿の中と同じく魔術具の灯りで照らされている。長い坂道に行灯のような灯りが等間隔で置かれる様子は目に優しくて、懐かしい温泉旅館のようだった。


 徐々に湿度があがり、巨大な空洞に着く頃にはほんわりとした湯気に包まれる。この湯気もまた、喉に良いと密かな人気で、実際アタシはこの体になってから喉風邪なんてひいたこと、一度もない。


「んんんーっ」


 地底湖の周りに置かれた脱衣籠の一つに衣服を脱ぐと、思いっきり体を伸ばした。

 今日もよく働いたから、この広い空間で一人のびのびできることがすごく嬉しい。ヒトと喋るのは楽しいけれど、一人でのんびりお風呂に入るのもまた、格別。


 木製の手桶で地底湖のお湯をくみとり、ザパアッ! と体にかけた。ふぅ。気持ちいい。

 細い彫り込みが排水溝となって、お湯はさざ波のように更なる地下へと流れて行った。


 天然の岩窟温泉。通路に近い壁沿いと、広い水面みなものところどころに灯りが浮かぶ。ひっそりと青く輝くお湯は体感温度38度。お風呂にしてはちょっと温いが、ゆったり長く浸かれる温度だ。


 チャプンと小さな波紋を立てて、手前の浅い段に腰をおろした。アタシの肩が出る、ちょうどの深さ。


「はぁぁぁぁぁ」


 ほんわかするお湯の熱に、つい、深い息が零れた。極楽極楽。

 子どもの体は四十路おかんと比べれば、疲れ知らず。それでも、一日中立ち働いていればやっぱり疲れる。


 お湯の中で足の裏を揉んでいると、地底湖に住む唯一の小魚達が寄ってきた。アタシの足の小指くらいの小さな魚が数十匹。


 名前は……えっと……あー……とりあえずアタシはドクターフィッシュと呼んでいる。スーパー銭湯の一角に有料で置かれていた外来種と同じように、角質を食べてくれる、黒っぽい小魚だ。

 異世界のドクターフィッシュというだけあって、コイツらは古い魔力も食べるらしい。アタシにはよくわからないけど、角質同様、体表の古い魔力も食べてくれるから、尚更お肌がプリプリ、体調が万全になるんだそうだ。


 小さな口であちこちをついばまれる感覚は、くすぐったくて面白い。

 マッサージみたいでアタシは結構好きなんだけど、残念ながらツルスベの子どもの肌じゃ、大して食べるところがないようで、すぐに小魚達は解散して行く。


 ミョルニーと一緒に入ると、やっぱり100年分の何かがあるのか、小魚達は大興奮。ちょっと羨ましいが、まぁ、あと20年もすれば、アタシもドクターフィッシュのアイドルになれると思う。


 お肌の曲がり角は、突然やってくるからね。今からケアを欠かさないのが大事だよ。ま、いくらケアにお金つぎこんだとこで、時間に勝てるものはないんだけどさ。



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