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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
3 光の洞穴亭 in 救民街
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その後のマシリ②

 まずはパショモナッテサイドの情報から。


 クロウはそう前置きをして話し出した。

 仕事になった途端、さっきまでのオドオドした様子が消える。さすが出来る男だ。


「まず、ミッダ・パショモナッテ様は会長とマウライン・ダジオ様の接触を図ろうとしています」


 …………ん?


「会長はマウライン様と面識があるんですよね?」


 ミッダ……? って誰だっけ。でも話の流れ的には……ミスターかな?


「マウライン……てより、隠れ救民のウリとは仲良しだね」


 改めて考えてみれば、マウライン坊ちゃまとしては対面してない。

 ……つーかさ? なんか思ってた情報と違うんだけど。え、コレ、政治的な話?


「そこが肝心なんです。マウライン様は長らく隠れ救民として奔放にお育ちでした。なので、パショモナッテ様の思うようには動いてくれないんです」


「あー……わりと野生児寄りだもんね?」


「あ、やっぱり会長はわかってますね。だからこそ、登城の際、会長に付き添ってもらおうと画策してるようで」


「画策って。別にウリの相手くらいいくらでもするけど」


 可愛いし。マシリじゃ最後、消化不良だったくらいだからね。


「で、関門となるのがアロさんです」


 はい?


 ここからはこちらサイドの話ですが……、と急に歯切れ悪くクロウが続ける。


「どこまで話してイイのかよくわからないので……自分から聞いたこと、会長の胸に収めといてもらえますか?」


「なぁんか不穏だね。まぁ、隠されるよりはイイか……わかったよ」


「ありがとうございます。……えーと……大前提として、アロさんは会長とマウライン様の面会に大反対です。理由はないそうですが……」


 ……んん??? 何そのまさかの感情論。あれ? マシリに何しに残ってるんだっけ???


「まぁ、『理由を言いたくない』ということなんでしょう。なので、これは自分の推測ですが……マウライン様の種族のせいではないか、と」


「なんだっけね」


 みびちゃんはグラムで、みびちゃんのパパが人間なのは覚えてる。……あれ? 前にマウラインの養父がどうのこうの、って言ってたような。


「インキュバスです」


「って、何?」


 素直な疑問だったのに、クロウは「あー……そういうことかぁ……」と宙を仰いだ。なんか……悪いね。


「うーん……会長って、何歳でしたっけ?」


「なんだい急に。一応14だけど」


 今生はね。


「うー……14かぁ……んー……じゃあ、まぁ……」


 急な流れに首を傾げる。年齢次第で教えるのを躊躇う種族って何だ?


「とりあえず、ダジオ家ってのは男型は『インキュバス』女型は『サキュバス』と呼ばれる、人間に似た姿の種族です。大枠では悪魔系に入ります」


「へー」


 あんなに可愛いウリが悪魔か。やっぱり魔族って難しい。


「でもって、彼らは見た目がイイです。魅力的です。そういう種族なんで。なんというか……人間を惑わす? 人間の精気……命……力、かな……を奪う、みたいな」


「ふーん?」


「とにかく、ちょっと特殊な種族なんですよ」


「えーっと……それは人間限定なのかい?」


 年齢確認やらクロウのバツの悪そうな表情やら選び選びの言葉やら……。鈍いアタシでも察しはついた。たぶん、牡丹灯籠みたいな感じだ。


「基本的にはそうですね」


 何やらホッとした様子のクロウは


「だからこそ心配なんでしょう」


 気を取り直して続ける。


「でもさ、悪魔系? って全体的に人間狙いだよね? ウリに限ったことじゃないだろ」


「でも会長、マシリでマウライン様以外の悪魔系種族とは距離置いてましたよね? 子どもだから、ってやけに可愛がってたのがアロさんは心配なんだと思います」


 うーん。そう言われると確かにそうかも? 種族云々ってより、単にアタシがウリをめちゃくちゃ気に入った、ってだけのような気もするけど。


「まぁイイや。ミスターは兄さんトコにウリを連れてくにあたってアタシを同伴したい。アロはアタシが人間だから反対してる、ってことだね。まぁ……ちょっと様子見かな、うん。

 んで、あとは?」


「あ、さすがです。えっと、あとは報告がいくつか」


 パッと顔を明るくしたクロウも可愛い。ははは、犬ってこんなに感情ダダ漏れなんだねぇ。クロウは有能だけど、コボルトって種族は営業マンとか向いてないかも。

 うーん、そう考えると種族ってヤツは意外と影響して来る。魔力中毒意外、あんまり深く考えたことなかったな。


「マシリの隠れ救民支援についてです」


 クロウは初め、元イムラの救民に泣きつかれるままアロやアタシに救援要請を出した。けれど今回実態を調べてみたところ、食糧支援は予想量より少なく済みそうだとわかったらしい。というのも、森の恵みや湖の恵みが見込めるからだ。

 麦粉など採集では得られない食材と日用品を運ぶ業者は、ミスターの庇護の元、既に密かに活動している。金銭を持たない者もいるが、森や湖で得た恵みをホラアナ商会が買い上げることで、問題なく生活できているらしい。ミセス、早くも大活躍。


「あ、これ、近々アロさんから問い合わせ来ると思いますが……」


「え、早くない?」


 なんと、カロメ加工工場に就職希望者が殺到している……のだそうだ。

 まだ工場用地の確保すらしてないにも関わらず。


「生粋の隠れ救民はさて置き、元別荘勤めのヒト達は働く場所を探してますから。チラッと噂を流したら、とんでもないことになったみたいです」


「……どうせ流したのはアロなんだろ? じゃあ『とんでもない』どころか計算済みだよ」


「あー……そうかもしれませんね。パショモナッテご夫妻は、マシリの森を大々的に切り開くことを快く思っていません。別荘の新規分譲もしたくないのに、工場なんて無骨な施設、作りたくないってのが本心でしょう。ただ……最近は隠れ救民達が早期建設要望を結構上げてるらしくて。もはや無視できない状態だと思いますよ」


「うん。やる。アロならそれくらい平気でる」


「…………今後もアロさんには逆らわないように気をつけます」


 段取りの良さというか、根回しの入念さというか。クロウが明後日な感想を漏らすのも仕方ない。


「ま、順調そうで良かったよ。あ、糸ボボの件はどうなったかわかるかい?」


「収納場所が足りなくなりそうです」


「ん? 話が飛んだね」


 カロメ加工工場は実現できれば救民雇用の面でも、アタシ達の嗜好品増強面でもありがたい。ただその前に、それこそ早期実現可能な糸ボボの購入計画を立てていたはずだ。


「あれ? さっき言いませんでした? ホラアナ商会で買い取ってるって」


「森の恵みと湖の恵みってヤツ?」


「そうです。具体的に言うと、森の恵みは魔獣肉と糸ボボで、湖の恵みは打ち上げられるアカグサです。アカグサは、救民達から話を聞いたアロさんが、会長なら使えるだろうと仰って……」


 クロウさん? アタシゃエスパーじゃないんだってば。項目はちゃんと教えてくれなきゃわかるわけなかろうに。


「んあー……そういうことか。糸ボボはどんどんこっちに回しとくれよ。予算は本部から出すからさ。あと、アカグサ? ってヤツも。魔獣肉も貰ってもイイけど、イムラで使うだろ?」


「そうですね……じゃあ、全体的に1割をイムラで、残りを本部にお願いします。糸ボボとアカグサも念のため在庫少し欲しいんで」


「了解。ついでに料理できるの何人か連れといでよ、教えるからさ」


「ありがたいです! ……んー、とりあえず連絡事項も以上ですね」


 王都への輸送計画は別途詰める。そういうことで今日のところはお開きだ。クロウには、気に入ったらしい卵ボーロを包んで持たせた。


 それにしても糸ボボとアカグサか。楽しみだねぇ。

 …………って、あー、でもまずはウリだ。そっちが先。うーん……アロがねぇ……あのアロが、だよ? だだの感情論のがまだ納得がいく。


 ミスターからの要請はいつ来るかわからない。早ければ今日中だってあり得るだろう。

 んー、仕方ない……。早いとこ、あんちゃんに探り入れてみようかな。


 だって、アロの陰にあんちゃん有り。


 直接的な指示を受けてる場合じゃなくても、アロは大抵、勝手にあんちゃんに忖度してる。アタシの秘書だけど、それ以上に自称「未来のドルゴーン大公第二夫人」だからね。


 ハァ。面倒なことにならないとイイな……。


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