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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
1 光の洞穴亭 in 原生林区
13/136

フィーリの満室ご飯

調理開始!

「さて。今日は満室だから恒例の『ボアのポトフ』と『グラタン』だね」


 将来的にはたくさんのメニューの中からお客が選んだものを提供する食堂のような形にしたい。けれど、今の身長と体力じゃそれは無謀。お品書きは「フィーリのきまぐれご飯・異世界宿屋バージョン」しか置いていない。……いや、「異世界」とか明言したことは一度もないから、みんなから見たら「フィーリのきまぐれご飯・人間風」ってとこか。


 そんなちびっ子のアタシだから、満室の日には簡単大量に作れる「ボアと根菜のポトフ・マンドレイク入り」と「タウロ乳とチーズのとろけるグラタン」を定番化している。あ、こっちは明言してる料理名ね。


 今日は淡麗辛口と噂のキト酒が入ったから、つまみに「川蟹の卵の贅沢味噌和え」と「ヤンヤの葉の爽やか酢の物」も作るとしようか。

 今日の宿泊客は呑んべえばかりだ。代表格が女将ってのはどうかと思うが……ま、アタシも酒は嫌いじゃなかったから、大人になったら呑んべえになるかもしれない。けど……この体のアルコール分解能力はどうだろうね? 今のとこ、アルコール臭はかなり苦手だ。


 厨房に入るとまず、ボアのブロック肉を貯蔵庫から取り出して筋切りしながら細かくした。一口サイズの山ができたら削った岩塩と少しの酒で揉んでおく。ボアは臭みが出やすいから、この上からジンジの葉でくるんで寝かす必要がある。この一手間が味の分かれ目。どうせなら旨い方がイイ。

 それから根菜類を切っていく。ザクザクゴロゴロの乱切りがアタシの好み。ホクホクしたウィリに緑黄色野菜のセンとシト、それから、マンドレイクの葉と根っこ。全部食感がイイんだよね。


 ちなみにマンドレイクはそこらへんに腐るほど生えているのに誰も採らない、迷惑極まりない山菜だ。抜こうとするとギャーギャーうるさいし、驚いたことに魔族はその声を聞くとかなりの確率で失神する。魔力が吸い取られるのが原因らしいから、魔力とは無縁のアタシにしかマンドレイクは駆除できない。ホント、迷惑。

 でも二股の根はごろんと大きくて食べがいがあるし、ゴボウみたいに歯ごたえが強くて、フルーツ玉葱並みに甘い。それに気付いてからは散歩途中とかも積極的に採るようにしてる。高確率で同行していて、高確率で失神するルフにはかなり恨みがましい目をされるけど。


 マンドレイクはシャキシャキのキンピラにしても美味しい。アタシの好物。なのに、お客さんにはポトフで柔らかくした方がウケる。なんだっけ……えっと……体内の動脈瘤どうみゃくりゅうならぬ魔脈瘤まみゃくりゅう? を溶かして、若返りと体質改善を促す? んだっけか??

 マンドレイクのポトフがスーパーフードとして常連さんの間で密かに流行っていると耳にした時は、真面目に耳を疑った。


「さ、気合い入れるか」


 まだ夕飯までには時間がある。とはいえ、量が量だ。この体でやるには猶予をかなりみる必要がある。

 お客が増えるとアタシは基本、ずっと、ずっっっと、厨房の中だ。


 水を張った鍋にダシ代わりの小貝ボレの身を少々。マンドレイクと根菜も浸して弱火にかけた。

 アタシ用のバスタブになっちまいそうなサイズの大きな土鍋。竈に据え置いて水やら具材やらを投入して使うのだけど、沸騰するまでがとにかく長い。土魔法でこの鍋を作ってもらった時も、たまたまガヴのあんちゃんが居合わせたから無事厨房まで運んでこれたようなもの。

 龍人てのは伊達じゃないね。筋肉質な見た目以上のバカ力だったよ。素晴らしい。


 灰汁取りの準備をしながら、アタシは次にグラタンの下拵えをしていった。

 シチュー料理はこの世界にもいろいろあるけど、グラタンみたいなものはないんだそうだ。常連さんは心待ちにしてくれているし、ご新規さんは一口食べて舞い上がる。グラタンはマンドレイク料理と並んで「光の洞穴亭」の代名詞みたいなモンだ。


 洞窟の壁を堀抜いて作った石窯オーブンに薪を入れて、埋み火をおこす。それから、乾季に作っておいたバナの乾燥ニョッキを寸胴で茹でて柔く戻した。

 バナはカボチャに似た味で、厳冬の乾季に育つ珍しい根菜だ。栄養価が高いうえ腹保ちもイイから、健啖家の多い「光の洞穴亭」ではバナの加工品を常備している。


 モチモチになって湯気を上げるニョッキを笊にあけ、一つ摘まんでお味見タイム。うん、芯はないし塩気もイイ。ほんのり素材の甘味があって、これは間違いなく今日も、ウチのザ・お子ちゃま舌ルフが喜ぶ。

 桶の水で手を洗ってから、今度は寸胴にタウロのミルクから作ったバターと小麦粉を入れて静かに炒めた。ドロドロに混ざったら、焦げる前にタウロ乳を入れて伸ばし、さらに加えて煮詰めていく。塩で味を整えつつとろみが出れば、シンプルなホワイトソースのできあがり。


「ふぅ……重労働だ。こりゃアタシももうすぐムキムキになっちまうかもねぇ……ゥフフ」


 目指せ体脂肪率夢の二十台!


 今のアタシが持てるギリギリサイズのうつわ数個に分けてニョッキとホワイトソースを重ね入れる。その上にすりおろしたタウロ乳のチーズと生パン粉をのせれば、あとは焼くだけ。

 グラタンて、大人になっても夏場でも、たまぁに食べたくなるよね。いずれ、穴あきマカロニの研究して、ジュワッ! トロッ! を目指してみたいもんだ。んで、みんなで仲良く「あっつ!!」って叫ぶんだよ。



まだまだお料理します

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