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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
3 光の洞穴亭 in 救民街
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フィーリと過保護な保護者達

改行忘れが目立つため、いっそのこと!!で改行後の一マス下げをやめてみます!

「あ、虹だ。ほら、ここ……そっちにも出てるね。連なってキレイだねぇ。届くかな?」


 アタシに抱き上げられたままジタバタと落ち着きのなかった子どもが、ふと虹の一つに気付いて止まった。じっと見つめながら手を伸ばそうとする姿は年相応で可愛らしい。……っていうか、持ち上げられて自由がきかない体勢なのに、それにも気付かないで手を伸ばしているあたり、ちびっ子ってホント、可愛いと思う。良くも悪くも純粋だからね。


「んあ……っ!」


 アタシごと体の位置を変えてやって、何度目か。ようやく虹を手で触れた……と、小さく声が上がった瞬間、辺りに充満していた細かな水滴が一気に消えた。


 キョトンとした様子はあどけない。目がくりくりとした、可愛い子だ。


「風さ、もうちょいぬるくなるかい? ……あ、イイね。助かるよホント。

 ほぉら、気持ちイイねぇ? ガヴのあんちゃんがすぐに乾かしてくれるからねぇ」


 驚いたのか、また固まってしまった幼子に、アタシはできるだけ優しく声をかけた。温水シャワーのあとのドライヤー。至れり尽くせりだ。あんちゃんにはホント、感謝。


「……で、フィーリ。どうして急にこんなことを?」


 さらりと乾いたところで風が止んだ。服ごと全身洗われ、さっぱりすっきり。


「ん? こんな、って?」


「気をつけるよう言いましたよね」


「でも、ただの子どもだよ?」


「『ただの』ではございませんわっ!! なぜ会長はそうしてムチャばかりなさいますのっ!?」


 あんちゃんの笑顔がなんだかひんやりしているような……と、ちょっと警戒したところで、横からキンキンした高音に刺された。見れば、アロが顔を真っ赤にしてアタシを睨んでいる。視界の隅ではバラクさんも眉間にシワを寄せていて、残念ながら援護は期待できないようだ。


「えっと…………悪かったね?」


「それは謝罪の言葉ではございませんっ!!」


「あー……ごめん?」


「何が悪いかわかったうえで謝ってらっしゃいますか!?」


「え…………あ、相談もしないで動いちゃったから、かねぇ?」


「違います!!」


 マズい。非常によろしくない。でもさぁ、ここまで怒られることかい? ただ迷子を保護しただけだろ?


 ブチ切れ状態のアロはうっすらと涙まで浮かべている。鬼が本気で怒ると……恐ろしいことこの上ないね……。昔話の絵本で見た山姥の方がまだ可愛いかも。表情カオがどうこうって言うより、威圧感が半端じゃない。

助けを求めるようにあんちゃんを仰ぐけど、にっこり笑顔で睨まれた。こっちも怖い。


 ハァ。仕方ない。とりあえずは、できることから。

 何だかよくわからない皆の怒りはおいておいて、アタシは抱えていた子どもをしっかりと抱き直す。


「あなたという方は……っ!!」


「……フィーリ? まずその子を下ろしましょうか。こっちに寄越しなさい」


「へ? なんだい急に」


 怒りの限界なのか呆れなのか、アロが口をハクハクさせる中、あんちゃんが有無を言わせぬ雰囲気で子どもをアタシの腕から奪い取った。

 渡す気なんてなかったけれど、腕力も速さも身長も、アタシじゃ何一つ敵わない。あれよあれよと言う間に、あんちゃんはその子をバラクさんへ渡してしまう。

 そして、バラクさんの両手の先にぶら下げられながら、なんだかんだで未だに「みびー……みびー……っ」と断続的に鳴き続けるグラムと隠れ救民の幼児の、感動の再会が繰り広げられることとあいなった。


 あー……、グラム、まだ鳴いてたのか。すっかり忘れてた。育児の修羅場を越えてくるとさ、耳にノイズキャンセラー機能がつくんだよね。正直、聞こえてはいたけど、聞いてなかった。


「ミビちゃんっ!!」


 もじゃもじゃの毛を刈られてしまった結果誕生した、奇妙なウサ耳ハムスターが、ジタバタと暴れ、幼児の胸に飛び込んだ。そのタイミングでバラクさんが手を放したもんだから、当然支えきれない小さな体は後ろに見事に吹っ飛んだ。いくら魔族とはいえ……大丈夫じゃないだろ!?

 でも、慌てたのはアタシだけ。周りも本人達も、そんなことはまったく気にならないようで、二人──1人と一匹?──は笑い合っている。


「なかなか……そのままの名前だったねぇ……」


 いつでもまた捕まえられるように隙なく構えたバラクさんのすぐそば、無邪気にじゃれあう二人を見ているうちに笑みがこぼれた。こんな森の奥で、小動物と子どもなんていう鉄板の癒やし系コンビに出会うとはねぇ。

 まぁ……癒されてるのはアタシだけかもしれないが。周りのカオ、見ちゃうとさ……ははははは。


 何をそんなに警戒することがあるのやら。

 アタシは小さく溜め息をつくと、パラソルの下に戻った。湿潤期独特の強い日差しに、湖面の照り返しもある。日焼けすると赤く腫れやすい質だと知っているせいか、今度はアタシが勝手に動くことを咎めるヒトはいなかった。


 うん、ヤンヤのスフレは温め直した方がイイね。へにょんとしちゃってるよ。ポップビーンズは……うん、大丈夫。お茶も……いや、お茶じゃない方がいいか?

 未だに難しい顔をしているアロ達を無視して、アタシはテーブルの上に新しくクッキーとキャラメル、ミルクを取り出した。ミルクティー用のミルクだけど、そのままでも十分美味しい。


「さ、おやつはどうだい?」


 感動の再会の熱が収まり、集まる鋭い視線をグラムが気にし始めたところで、アタシは声をかけた。「会長!!」と咎める強い口調で呼ばれたけれど、既にテーブルの用意はできている。残念アロ、止めたいならもっと前に止めとくれ。


誤字脱字報告、ありがとうございます

本当に助かります!!

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