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第八章

「世界を変えちゃおうぜ」


ゼンがしゃべり出した。

「今の世の中は腐ってる。俺は村を出て、いくつもの街へ行った。そこでは俺が村からの人間ってだけで軽蔑されたんだ。何もかもの権利があそこでは俺から奪い取られたんだ。それでいい気になってる貴族達がいるんだ。お前は許せるか?そんな奴らが頂点に立っているのが許せるか?身分だけで人間が決まるワケじゃないだろう。そんなこと誰だって分かってんだよ。けどあいつらに逆らうと何をされるか分かんねぇ。殺されるかもしれねぇ。あいつらは俺よりもずっと強いレジェンドを雇ってんだからな。でも俺が世界の頂点に立てば、今の世界を変えられる。俺達に有利な世界を創れるんだ。分かるよな?」

「・・・・・分からねぇよ」


僕の中からゼンに対する恐怖心が消えた。


「そんなの頂点が入れ替わるだけじゃねぇか。結局お前だって支配欲に捕らわれているだけじゃねぇか。そしたら僕らの変わりに不幸になる人々が出てきちゃうじゃないか!」

「その不幸になる奴らは今の調子に乗ってる貴族達なんだよ!!」

「もっと違うやり方で世界を変えられるはずだよ!」

「それが出来ないから言ってんだろ!何で分かんないんだっ。俺達を村へ追いやったのも、自分たちだけ幸せな生活をしているのも、この世界の法律や常識を作ってるのもあいつらなんだよ!」

「僕は村の生活が不幸だなんて思ったことは無いよっ!」


僕の言葉にゼンの眉がピクッと動いた。


「ミナト、てめぇはドコまで腰抜けなんだよ!ドコまで野良犬根性が染みこんでんだよ」


哀れ、そんな目でゼンは僕の方を見ていた。ゼンは目をつぶって顔を左右に振った。


「残念だ。親友なら俺の考えを分かってくれると思ったのによ」

「分かるよ。でもお前は間違っ・・・」

「甘いんだよっ!お前は」


僕が見たことのないゼンがそこにはいた。


「俺は野良犬から頂点になってやる。その手始めはもうしておいた」

「は?」

「俺には同じ志を持った仲間が何人かいるんだ。どいつもこいつも腕がいいレジェンドだよ」

「?」

「まだ分かんねぇのか?」


ゼンの口元がかすかに動いた。


僕には笑っている様に見えた。


「お前が俺の申し出を断ったとき、俺はそいつらにだけ分かる蒸気を送ったよ。そしてその意味は・・・」


強いレジェンド、僕が断ること、ここまで僕を連れてきた意味。僕の中で今全てがつながった。


「村を襲うことだよ」


このピラミッドの通路にゼンの笑い声が響いていた。


「ちくしょうっ!」


僕はいらだっている気持ちを抑えながら冷静にここまでの通路を思い出し、出口へ向かった。

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