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ギャグ、ギャグで行きたい、頼むから暴走しないようにね!見守ってるからね!!明るく生きて!!!約束よ!!!!
長いことセットしてないのだろう、地面につくほど長い髪をした少女がゆらゆらとこちらへ近づいてくる。髪の隙間から覗くその口はひたすら「いいなぁ」と囁いていて不気味でしかない。
ひたひたと傷だらけになった足をひきずるように、しかし真っ直ぐこちらへと向かってくる。
私にしっかりとしがみつく息子が震える声で叫んだ。
「だ、誰だよおまええええ母ちゃんに近づくなぁあああああ」
もう完全に息子は怖がって泣いていた。少女はそんな息子に構うことなく息子の前に立つ。そこまで行くと、息子は声が出なくなっていた。プルプル震えて私から離れようとしない。というより腰が抜けていた。
そんな息子の涙と鼻水でべちゃべちゃな顔を覗き込む少女。もうずっと洗っていないのか異様な臭いがした。
「いいなぁ、いいなぁ。おかあさん、いいなぁ」
「…あんた、お母さんいないの?」
囁くように問うと少女が初めて私に顔を向けた。
「…うん、おかあさん、いない、さみしい」
よくよく見ると、髪の隙間から時々覗く瞳は泣き腫らしたのか真っ赤に充血していて更によく見てみると、泥やら血の跡やらでおどろおどろしく見えた服は元は花やら蝶で彩られた可愛らしいワンピースであることが見て取れた。
「えっと、お嬢ちゃん、名前は?てゆうか、歳は?」
少女が困ったように首を傾げる。
「なまえは、わすれた…でもとしはね、おかあさんが5歳だって、ずっとまえ、いってた」
明らかに10歳くらいに見えるその少女は小さなかすれた声でそう言った。
「ヒトがきたら、たすけをよびなさいっておかあさんがねんねするまえに、いわれた。でも、たすけてっていったらたくさん、いたいの、なげられた」
驚いて、すっかり硬くなった髪をよける。片目はなにかぶつかって出来た傷によって潰れてしまっていた。
まさか、数年間、独りで?
ふと息子に目を向けると恐怖から帰ってこれないようでまだ私にしがみついてブツブツ言いながら泣いている。何も聞いちゃいない。
「どうやって…」5歳の子どもが自力でここまで生きていられるのか。泣いて震える息子を抱き上げ、立ち上がり少女が歩いてきた方向に目を向ける。
そこはゴミ捨て場と化していた。
ところどころ封が開いているのは少女が食材を探していたからだろう。
思わず、眉をしかめる。気づけばボロボロの少女を抱き上げていた。突然少女が至近距離に来たので息子は恐怖のあまりか気を失った。
少女は不思議そうに私を見ている。
「とりあえず、風呂にはいろう」