ユウ、初めて人前に出る
僕は、父上に手を引かれて、
馬車を降りた。
やはり、大きな大会だからなのか、空気がどこか、変わった気がする。
そんなことを考えていると、たくさんの観客から、ざわめきがはしっていた。
その時、観客達は、こんな会話をしていたのだ。
♤ ♡ ♧ ♢
「あれって国王様だよね」
「じゃあそばにいるのは王女様?」
「凄いかわいいよね」
「でも国王様に娘さんはいなかったような…」
「「「じゃああの子は誰?」」」
誰もがそう疑問に思った…。
その時、
「みな、静かにしてくれ」
鶴の一声が響いた。
国王様の声だ。
「今日、私がここに来たのは、四年に一度の大会を見守るためだ」
「それ以外に、もう一つ、理由がある」
「きっと、みなが気にしているだろう、この者を紹介するためだ」
その時、どっと、観客がざわめいた。
「この者は私の息子、」
「ユウ・バティスチアだ」
「今は二才だ。どうだかわいいだろう」
父上はそう言って、
顔を真っ赤にしている僕を持ち上げた。
「ち、父上、やめてください!」
「まぁまぁいいじゃないかユウ」
「充分かわいいぞ」
笑顔で父上はそう言ってきた。
今日は災難が続くようだ。
「これは父上がむりやり!」
···そんな会話を聞いていた観客達は、
誰もがこう思っただろう。
「「「えっ、男の子なの⁉」」」
「「「なのに、ちょー可愛いじゃん」」」と…。
この者達が、かの有名な、
ユウ様ファンクラブの人達になるのは、
またべつの話…。
このような、『ちょっとした?』騒ぎがあったが、
無事、大会の始まりを報せるファンファーレがなった…。