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竜使い  作者: 凡骨竜
3/3

(3)「冬の国」

「さて、そろそろ国境に近づく頃だな。」


少し身震いしつつ、ようやく見えてきた国境の警備員に手を振る。

向こうもこちらに気づいたようで、一礼をされた。


「ようこそ、冬の国へ。旅人だな、入国審査の受付はこっちだ。」

「竜使いと竜だ、よろしく頼む。」


そう言うと、まもなく審査官がやって来て入国審査が終わる。

ちょびは少し吹雪いてる風が寒いらしく、俺にぴったりくっ付いて離れない。


「ちょび、街に入るぞ。」


軽く声を掛けると、ちょびは俺のバッグへと潜りこむ。

それを確認してから、街へと入る。


どうやらこの冬の国では、白竜は『雪の使い』として崇められ、恐れられている。

仔竜となればそうでも無いのだろうが、『竜使い』としての職業の認知が進んでない国になる。

揉め事にならないように、ちょびには頭の両脇にある角を隠すために帽子を被せて、

バッグの中に居て貰っている。傍目から観れば『白い仔犬』に見えるかもしれない。

鳴き声は変えられないので、十分に注意をする必要があるのは変わらない。


「キュ~。」


ちょびは小さく鳴いてバッグから顔だけを出し、雪が降る空を見つめている。


「ちょび、寒いからほどほどにしろよ。」


俺が言うと、もぞもぞとバッグの中に潜って上半分だけ顔を出す。


「明日は、大きなお祭りがあるらしいから、観に行ってみるか?」


バッグに声を掛けて軽く叩くと、嬉しそうな返事が帰ってきた。

やはり、お祭りは竜だろうが獣だろうが種族問わず好きなようだ。


俺は早々に宿屋に記帳を済ませ、ちょびを連れて買出しへと向かう。

宿で出る食事はあるが、ちょびは『ペット』扱いになってる為、満足な食事は無い。

『白竜』なんて説明したら、崇められそうだ。俺は、逆に捕まりそうだしな。


ちょび用の食事を買い整えて、帰り道。

ちょびは通り過ぎる時の食品店や衣料品店が気になるらしく、

何度もバッグの中からキョロキョロしていた。

たまに俺に『これ欲しい』と軽くバッグの中から叩く事があったので、

少しだけ買ってやりながら、街を散策して用事を済ませる。


「疲れた……。流石に買いすぎたかな。」


結構な量のちょび用の食料を部屋に置き、俺はベッドに寝そべる。

ちょびもすぐにバッグから出て、俺の隣に来て丸くなる。

ほどよいちょびの体温に暖まりながら、俺はうとうとし始めた。


しばらくそうしていたら、ちょびが起きあがって周りを見回した後に俺をつつく。

寝ぼけ眼でちょびを見ると警戒態勢になっていたので、俺も枕元の剣に手を伸ばす。


(物騒じゃない国って聞いたんだがなぁ……。)


俺は細身の剣を持ち聞き耳を立てて、物音の犯人を待つ。


(……何人だ?)


声を聞く限り、3~4人という所か。ちょびも警戒したまま俺から離れない。


「ここか? 竜使いは。」


呟いた直後に窓から2人、部屋のドアから2人入ってくる。

俺はドアから来た2人を鞘から抜かずに剣で峰打ちして気絶させる。

ちょびは窓から来た方に向かって行ったので、俺は急いで唱える。


「開錠。」


俺が呟くと、ちょびは翼を広げる。

すると、身体から白い透明な『ちょび』が出てきて、窓から来た2人を抑えつける。


「ちっ……。」

「何しに来たんだ? お前ら。」

「言うと思うか?」

「まぁ、そうだろうな。」


ちょびに放すように言って、気絶させたドアの二人も投げつける。


「相手が悪かったな。竜使いを狙うのは止めた方がいいぞ。

 みんな、俺よりかは強いからな。」

「くそっ、引き上げるぞ!」


逃げていくのを見逃しながら、後で宿の店主に教えておくことにした。

どうせ、夜盗だろうし警戒しておいた方が良い。

こうやって改めて自分で遭遇すると、やっぱり狙われる対象なんだなという事を

嫌というほど理解させられてくる。

ちょびが顔をのぞき込んできたから、撫でながら考えていた。


基本的に竜使いと竜で、小さめの国の軍隊並の力はある。

それ以上は竜使いの技量と竜の相性次第だが……。

だからこそ、竜使いと竜を手に入れたいという輩も居るのだろう。

なので、俺は早々に用事を済ませる事にする。元々、長居する予定ではなかったし。


次の日。

俺は国王に謁見して親書を渡す。竜使い組合から頼まれたものだ。

内容は知らないが、国王の親書を読む様子からして悪い知らせでは無いのだろう。


「旅華。そして竜よ。」

「はい。」

「友を探してるらしいな。蒼黒種の竜使いを。」

「はい。何かご存じでしたら教えて頂けると助かります。」


どうやら、俺の事も書いてあったらしい。


「我が国では、そのような竜は見たことが無い。

 残念だが、協力出来そうなのは資金くらいになりそうだ。すまんな。」

「いえ、十分です。ありがとうございます。」


礼をして、俺はちょびと一緒に下がる。

ちょびはまだよく分かってないようで、俺の肩で首を傾げている。

残念ながら、冬の国では収穫無しのようだ。

正直、資金や物資の補給が出来るだけでも、

十分にありがたいので高望みしても仕方がない。


俺は出国の支度を整えた。ほどなく、出国手続きをして冬の国を出発した。

本当は、ちょびに乗れればもう少し旅も楽なのだが、まだまだ先の話だ。


「次は、春の国に行ってみるか。ちょび、行くよ。」

「キュ♪」


荷物を抱え直し、俺はちょびと旅を続ける。

旅華りょか [♂]

ちょびの竜使い。

得意な武器は長剣。


れい [♂]

見習いの頃からの友人。

得意な武器は、短剣。

旅華より先に竜使いになり、各地を巡る。


・ちょび [?]

旅華の竜。白く薄い、トンボのような羽と、

純白の肌を持つ、「銀白種ぎんぱくしゅ」の竜。


・ヒョウガ [?]

玲の竜。コウモリ状の翼と、蒼い肌を持つ、「蒼黒種」の竜。


・冬の国の王 [♂]

気さくな王様。

広い領土を持つ冬の国を統べる力の持ち主。

昔は英雄の一人と言われていたほど。

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