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てぃーちゃー あんど てでぃべあ

作者: 津浦あゆ

詳しい設定が気になる方は、別の短編の てぃーちゃー あんど すちゅーでんと をごらんあれw

 

 ……なんだろう、これは。


 茶色い、ふさふさの容姿、二つの大きな耳、丸く黒い目、明るい水色のリボン


 「なにいってんの、テディベァにきまってるじゃんかー」


 「……どうやら意思疎通をはかるのはお互い無理らしいな、別れるか」

 

 「やだーっ!!先生まってごめんなさぃぃい(涙」


 放課後、最後まで図書室に残っていた岩波と、図書室管理の俺は、管理机の下にこの大きなくまを見つけた。


 「だいたいどうしてこんなデカいくまがいるんだ」


 「だからぁ〜、テディベアはおっきくないと可愛くないんですぅ〜」


 「サヨウナラ岩波さん」


 「えっ、やだちょっと先生!」


 謝りながらまとわりついてくるこのバカは俺の彼女だ。子持ち、援交、なんでもOKなこの学校の校長まで公認で、付き合っている(付き合わされている)。だけどいくらなんでも、教師と生徒って…なぁ。


 「こんなの誰がおいてったんだろうねー」


 岩波の言葉に思わず同意。全くだ。


 「デカいし」


 「邪魔だし」


 「めんどいし」


 「ダルいし」

 

 「かわいいし」

 

 「かわいいし!?」


 「だって、別に呪われてるってわけじゃないし」


 ぶぅ、とがらせて反駁してきた唇を逆に奪う。え?いや、一応恋人同士なんで。そんなに合ってなかったか?


 「先生はずるいよ。なんでそんなに背が高いんだよ」


 「寝てるから」

 

 「あっそか」


 はたから見て納得される程俺は寝ているのか、おい。


 「はぁ…落とし物にしとくか」


 ため息をついて施錠にかかろうとすると、岩波がきらきらとした目で呼び止める。


 「先生、まってまって!こういうのってさ、お腹とか背中とか首とか切り裂くと、なかからラブレターとかでてくるんだよ!!」


 いらねぇ、そんなもの。


 「てゆうかあんたさ、誰がここにきたかとか見てなかったの?」


 「だってみんな群がってたし。いつもみたいに」


 管理机は図書室のど真ん中に置いてある、というのもあるんだろうが、先生が出払っているときは自分たちで貸し出し手続きをするというルールがあるので、割とみんなこの机に群がる。


 「ッチ。で?」


 「ほぇ?」

 

 「どうすんの、そのくま。のど元かっ切りたいなら好きにすれば」


 「先生、その表現怖いし。えー、じゃあ遠慮無くv」


 どこから持ってきたのか、裁ちばさみをシャキン、と構える。が、それを使う前に、くまの首が取れた。頭と胴体が綺麗にわかれた。むんずとくまをつかんだ手に、頭部だけがとらえられている。


 「「……」」


 つかの間の沈黙。


 「ギャーーーーーーーーーッ!!!いやだぁぁぁぁぁあッ!ごめんなさいあたしは悪くありません悪霊退散ポマードさんすいませんたべないでべっこう飴ーー!!!!」


 「なんだよお前ワケ分かんねぇよ一回喰われてこいそのくまみたいに!!!!」


 「キャーーーッ!!ぜんぜぇぇ!くまの体のほうに赤い封筒はいってるよぉぉ!!(涙)なんか血で染めたみたいにまだらになってるよぉぉお!!!」


 「やめろ気味悪いこと言ってんじゃねぇ呪われてもしんねぇぞ!てゆうか誰あてだよ!落とし物箱いれてこいっ!!」


 「どうかそれだけはご勘弁おぉぉぉおっ!!先生まだあたし死にたくないよぉ(涙)まだ先生と一線こえてもいないのにぃぃ!!」


 「キショイっ!さぶいぼでるわあほんだらっ!いいからその封筒開けろ!!」


 「やだぁぁー!先生開けてよ、男でしょ?!」


 そう言われてはどうとも言えず、俺はこわごわ呪いの封筒(岩波命名)を手に取る。


 「……開けるぞ」


 「ポマードポマードポマードポマードポマードポマードポマードポマード!!!!!」


 うるせぇ、どこに口裂け女がいるんだよ。


 かるくのり付けされてあった口を、そぅっと破いた。


 「……いいか、読むぞ」


 白い紙に赤いインクで書かれた文字を、俺は一気に読み上げた。


 「呪ってやる PS:嘘だよv」


 …………


 「ギャァァァアーーーーーっ!!先生、先生呪われちゃう!!」


 「いやまて、ここにPS:嘘って書いてあるぞ!!」


 「それ自体が嘘かもしんないじゃん!」

 

 「だったらこの{呪ってやる}も嘘になるだろが!!」


 「いいじゃんか!呪ってやらないPS:ほんとだよ!平和てきじゃん!ハッピーベアじゃん!」


 「意味わかんねぇよ大体どこがハッピーなんだ!頭取れてるじゃねぇか!」


 「じゃあやっぱほんとなんだよ!!!いやだー!先生天国にいかないで!」


 「ふざけんな俺は死んだら地獄にいってお前を引きずり込むんだよっ!」


 「ちょっと先生どんな計画たててんの!二人で末永くらぶらぶ計画っ!!」


 「そして俺はお前を踏み台にして天国に昇るんだ!」


 「やめてそんな酷いし殺生な!」


 なんて話題がテディーベアからそれつつあると、


 ガラララララララララッ


 突然ドアが開いた


 「キャァァーーーーーーーッ!!!」「うわぁぁーーーーーーーっ!!」


 「おや神田先生、お疲れ様です。今日も岩波さんとらぶらぶでしたか?」


 校長だった。しかも入っていきなりデンジャラスでエキサイティングな台詞をぶっかました。


 「…………校長先生、そういう誤解をまねくような発言はやめてください」


 「いいじゃないですか。ところでこんな遅くまでどうしていらっしゃるので?」


 「あ…いや、ちょっと書庫が汚れていたもので、岩波さんに手伝ってもらって……」


 「そうですか。ウン、男女が夜遅くまで学校にのこるとは、いい傾向ですな」


 なにがッ?! 


 岩波と心の声がかぶった気がした。


 「それより、誰かここにきませんでしたかな?」


 「いいえ……施錠をしかけていたところなので」


 「ふむ…。いやぁ、校長室の隙間に手紙がはさまっておりましてね、8時に図書室のカウンターにこい、と。筆でかかれてあったので、なんと風流なかただと思いましてな。これは是非一度あってみたいと」


 それは果たし状というのでは?!


 またしても岩波と心の声がかぶった。意思疎通できてんじゃん。


 「あの…くまが置いてありましたけど…」


 いつのまにもとに戻したのか、テディベア(こんどは胴体をしっかり持って)をおそるおそるさしだす。


 「ふむ、真に面白いお方だ。では私はこれで失礼しよう。どうぞごゆっくり〜v」


 校長は去っていった。


 「……帰るか」


 「…はい」



 チャリ通の俺と夜道をあるきながら、なんとなくテンションは下がっていた。


 「校長先生って、何者なんだろうね」


 「案外元ヤンとかな」


 「組長とかやってそう!!」


 「俺もうこの学校勤めんのやになってきたぁ〜」


 「なっ!!あたしがいるじゃんかっ!!」


 テンションももとに戻る。校長の謎は残る。今日は不思議な日だった。


 「よしよし。じゃあな、おやすみ」


 俺はマンションの下まで岩波を送り届け、軽く唇をついばんでから来た道を戻ってゆく。


 校長ってなにもの何だろう。


 この疑問だけがいつまでも残っていた。



 






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